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第一章 リラクゼーションの男
別のカタチで2
しおりを挟むその夜、僕はベッドに横になりながら考えていた。
"でも、石原さんは今、強引にあいつの手を引っぱろうとしている。
もう1度チャンスをください。は僕に言う言葉じゃありません。
少なくとも今のあなたよりは、僕のほうがあいつを幸せにできる自信があります。"
あの日のことは考えないようにしていた。
しかし、僕も変わらなければいけない。
もう、目を背けてはいけない。と思った。
そして、石原さんと再び会う当日を迎えた。
石原さんとは、僕らの最寄駅で待ち合わせをしていた。
僕らが着くと、まだ石原さんは来ていないようだった。
「とりあえず、石原さんの話を聞いて、全部吐き出してもらおう。そうしたら少しはスッキリしてくれるんじゃないかな?」
僕がそう言うと、彼女は釈然としない様子だった。
「うん。何言われるんだろう。」
それから、5分後くらいに駅のほうから石原さんが歩いてくるのが見えた。
表情は固く、あまり元気はなさそうだった。
「すみません。最寄駅まで来てもらっちゃって。」
僕がそう言うと、石原さんは表情を変えずに答えた。
「いえ、大丈夫です。こちらこそ時間を作ってもらって、ありがとうございます。」
彼女は黙ったまま、何も言わなかった。
「いえ。すぐそこのカフェで良いですか?」
僕は石原さんの顔色を伺いながら言った。
しかし、石原さんは彼女のほうを見て悲しそうな顔をしていた。
それから、3人でカフェに入った。
ドリンクを購入して席についてから、しばらく沈黙が続いた。
その空気に耐えかねて、僕は口を開いた。
「あの日、中途半端になってしまったような気がして、もう1回話したほうが良いと思いました。石原さんはどうですか?」
僕が顔色を伺いながら言うと、石原さんはゆっくりと話し始めた。
「正直なところ諦めきれない。僕が悪いのはわかっている。もう1度チャンスがほしい。とあの日言った通り、やり直すチャンスがほしい。」
彼女は俯いたまま、何も言わなかった。
僕は彼女に聞いた。
「お前は?今、何を思ってる?」
僕がそう言うと、彼女はバツが悪そうに顔を顰め、ゆっくり話し始めた。
「私は、正直どうしたらいいのかわからない。2人とも私のことなんか振ってくれればいいのに。どっちを選ぶとかできない。」
僕は耳を疑った。
"何を言ってるんだコイツは。正気か。"
ふと石原さんの方を見ると、
石原さんも少し動揺しているようだった。
僕は、アイスコーヒーで喉を潤し、自分の気持ちを話した。
「僕は、彼女とやり直せて嬉しかったし、楽しかった。ただ、彼女にその気がないなら、僕は諦めるしかない。運命ならまた会えると思う。」
僕がそう言うと、彼女が立ち上がった。
"ごめん。トイレ行ってくる。"
そう言って、彼女はトイレへと向かった。
石原さんと2人きりになり、"気まずいなー。"と僕が思っていると、石原さんが話し始めた。
「君は、僕よりも全然大人だね。もっと違うカタチで出会えていたら良かった。それこそ、職場の後輩だったら2人仲良くなれたかもしれない。きっと、君のほうがあの子のことを幸せにできる。だから僕は諦めるよ。今日は時間を作ってくれてありがとう。」
そう言って、石原さんは頭を下げた。
「いや、そんな。石原さんのほうが大人に決まってるじゃないですか。」
僕がそう言うと、石原さんは笑っていた。
すると、彼女が神妙な面持ちでトイレから戻ってきた。
「僕はもう諦めることにしたから。もう、2人を困らせたりしない。会社で顔を合わせるかもしれないけど、心配しないで。」
石原さんがそう言うと、彼女は驚いた様子だった。
それから、3人でカフェを出た。
「ありがとうございました。」
僕がそう言うと、石原さんは頭を下げて駅へと歩き出した。
その背中は寂しそうだった。
これで良かったはずだ。
彼女もまた寂しそうな顔をしていた。
僕は彼女の手を握って言った。
「すぐに忘れなくていい。いや、忘れちゃいけないよ。」
彼女は、"うん。"と一言頷いた。
それ以来、彼女の元に石原さんから連絡が来ることはなくなった。
数日後、彼女は会社を辞めることにした。
"石原さんと職場で顔を合わせることが耐えられなかった。"と言っていた。
それから、1ヶ月が過ぎた頃、彼女から相談を受けた。
「あのさ。私、実家出ようと思って。その為にお金貯めたいんだよね。キャバクラやりたいんだけどいいかな?」
僕はすぐに反対した。
彼女が他の男にいやらしい目で見られるのなんて耐えられないと思った。
しかし、彼女はどうしてもやりたい。と引かなかった。
僕は渋々承諾した。
彼女には彼女の人生があると思ったからだ。
「わかった。その代わりいくつか約束してほしい。」
それから、僕らは3つの約束をした。
・仕事が終わったら必ずメールする。
・僕といる時はお客さんと電話、メールをしない。
・店の外でお客さんと会わない。
しかし、この時、新たな悲劇が僕のすぐ側まで迫っていたのである。
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