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21話 それぞれの思い
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前書き
ナルキスとクリスの気持ちと
ロピアー公爵の言い訳
******************
【貴族院会議室】
(ナルキス視点)
『その方が金になるからに決まってるじゃないか!』
その言葉を聞いた時、俺の中で何かが壊れた。
カーテンを開いた先にあった、透明な壁の向こう側で今まで乳母だと思っていた人のセリフが俺の心を壊していく……
あの人の言葉は全部嘘だった。
『俺がやっている事は、全て正しい』と、言っていたのも自分が操りやすくする為だったのだ。
今まで自分の両親だと思っていた人達が、本当は伯父と伯母で…
子供の頃、気に入らなくて公爵家から追い出したクリスの方が本物の公爵家の子供だった……
今思えば、無意識のうちに自分の居場所を取られると思っていたのかもしれないな……
俺は公爵家の子供では無く、犯罪者の子供だった。
これからどうすれば良いんだ?
偽物の公爵子息だとわかったからには、もう家にも学園にも居られない。
(クリス視点)
数日前の【鑑定の魔道具】による、鑑定結果で自分が本当の公爵子息だと解っていたのでナルキスと比べれば私のショックはそれほど酷くは無かった。
しかし、最近まで自分の母親だと思っていた人が、あんなに醜い心根の持主だったというのは複雑だ。
もし、叔父にあたるデュークが生きていたらあの人もまた違う人生を歩んでいたのだろうか?
(ロピアー公爵ニコラス視点)
ずっと違和感があった……
私と妻の間に生まれたはずの息子なのに、愛情を持てなかった。
妻はナルキスに対して、出来る限り愛情を注いでいたと思う。
しかし私達夫婦は公爵家として、公務が忙しく他国へ赴く事も多かった為、あの乳母に任せきりにしていたのが良くなかった。
数ヶ月単位での他国との交渉や公務から帰って来る度に、ナルキスは乳母への依存度を高めており、ついには私達夫婦の言う事を無視するようになっていった。
私は父に、『あの乳母を追い出すように!』と何度も言ったが何故か聞いてくれなかった。
何年か経ちナルキスが学園の初等部へ入学する年齢になれば『あの乳母と引き離せる。』、と思っていた。
が、しかし事態は私達夫婦が考えていたより深刻だった。
今まで勉強だけは優秀だと思っていたのだが、全て嘘だった。
優秀だったのは、あの乳母の息子の方だったのだ。
しかも、その優秀な彼は乳兄弟として育てられもせずに放置され、見兼ねた執事長のハンソンが庭師に預けたというではないか!
更にその彼はナルキスと婚約しているボルネオール侯爵家の孫娘、エリー嬢に気に入られ従者見習いとして既に引き取られていたのだ。
何故、父は私達夫婦に何の相談もせずにこんな不可解な事をするのだろうか?
私は父に怒りを覚えていた。
更に数年後、ナルキスは学園高等部の入学式で騒ぎを起こし、殿下方に目を付けられてしまった。
最悪だ!
王家より外交を任されているロピアー公爵家の嫡男が、殿下方の不興を買う等、以ての外である!
そして、私達夫婦は苦渋の決断をした。
父が何と言ってもナルキスを廃嫡し、他家から養子を迎えて跡を継がせる。
その頃にはもう父は病床にあり、以前の様な権力は無くなっていた。
私達夫婦の決断を告げると、父はとんでもない告白をした。
私には、腹違いの弟が居たというのだ!
弟は既に亡くなっており、あの乳母はその妻になる予定だったというのだ。
ボルネオール侯爵家に引き取られた乳母の息子は、その弟の子供だったのだ。
何故、もっと早くに教えてくれなかったのか!?
知っていれば、彼を手元で育てる事が出来たのに!
今からでもボルネオール侯爵家と交渉し、弟の息子クリス君とエリー嬢を両養子に迎えてロピアー公爵家の後継者になってもらうしかない。
私は、すぐにボルネオール侯爵家と交渉に入った。
その結果、どうやらこの話は向こうも渡りに船だったというのだ。
ナルキスとエリー嬢の仲は最悪で、婚約破棄も時間の問題だったのだという。
いっそのこと我が公爵家との婚約を破棄して、侯爵家が持っている別の爵位を与えてクリス君とエリー嬢を結婚させようかとまで思われていたのだ。
何という事だ!
『穴があったら入りたい!』というのはこういう気持ちなのだろう……
ボルネオール侯爵と一年以上交渉を続け、半年前にやっと本人と会う許可を得た。
当然、この事は貴族院に届けは出してある。
偶然にも彼は妻の姉が産んだ、第四王子シオン殿下の秘書をしていた。
シオン殿下に協力して頂き、何とか偶然を装って、私は彼と接触を図る事に成功した。
会ってみて驚いた。
彼の嗜好や癖などは、あまりにも私とそっくりなのだ。
シオン殿下にも『伯父と甥というより、親子にしか見えない。』、と言われた。
それから半年間、何かと理由をつけてシオン殿下の執務室に通い続けていた。
ある日、王城から『すぐに登城するように!』と使いが来た。
何事か、と急いで登城するとエミール殿下とサイド家が新開発した【鑑定の魔道具】という魔道具で、【鑑定】をおこなった結果、何と今まで甥だと思っていたクリス君が私達夫婦の子供だという事が解ったのだ!
そして先程、全ての事実が判明した。
後は【入れ替わりの指輪】の解呪だけである。
私達夫婦の元に本当の息子クリスが戻って来る事の喜びもあるがもう1人の息子であるナルキスの事を思うと複雑だ。
ナルキスとクリスの気持ちと
ロピアー公爵の言い訳
******************
【貴族院会議室】
(ナルキス視点)
『その方が金になるからに決まってるじゃないか!』
その言葉を聞いた時、俺の中で何かが壊れた。
カーテンを開いた先にあった、透明な壁の向こう側で今まで乳母だと思っていた人のセリフが俺の心を壊していく……
あの人の言葉は全部嘘だった。
『俺がやっている事は、全て正しい』と、言っていたのも自分が操りやすくする為だったのだ。
今まで自分の両親だと思っていた人達が、本当は伯父と伯母で…
子供の頃、気に入らなくて公爵家から追い出したクリスの方が本物の公爵家の子供だった……
今思えば、無意識のうちに自分の居場所を取られると思っていたのかもしれないな……
俺は公爵家の子供では無く、犯罪者の子供だった。
これからどうすれば良いんだ?
偽物の公爵子息だとわかったからには、もう家にも学園にも居られない。
(クリス視点)
数日前の【鑑定の魔道具】による、鑑定結果で自分が本当の公爵子息だと解っていたのでナルキスと比べれば私のショックはそれほど酷くは無かった。
しかし、最近まで自分の母親だと思っていた人が、あんなに醜い心根の持主だったというのは複雑だ。
もし、叔父にあたるデュークが生きていたらあの人もまた違う人生を歩んでいたのだろうか?
(ロピアー公爵ニコラス視点)
ずっと違和感があった……
私と妻の間に生まれたはずの息子なのに、愛情を持てなかった。
妻はナルキスに対して、出来る限り愛情を注いでいたと思う。
しかし私達夫婦は公爵家として、公務が忙しく他国へ赴く事も多かった為、あの乳母に任せきりにしていたのが良くなかった。
数ヶ月単位での他国との交渉や公務から帰って来る度に、ナルキスは乳母への依存度を高めており、ついには私達夫婦の言う事を無視するようになっていった。
私は父に、『あの乳母を追い出すように!』と何度も言ったが何故か聞いてくれなかった。
何年か経ちナルキスが学園の初等部へ入学する年齢になれば『あの乳母と引き離せる。』、と思っていた。
が、しかし事態は私達夫婦が考えていたより深刻だった。
今まで勉強だけは優秀だと思っていたのだが、全て嘘だった。
優秀だったのは、あの乳母の息子の方だったのだ。
しかも、その優秀な彼は乳兄弟として育てられもせずに放置され、見兼ねた執事長のハンソンが庭師に預けたというではないか!
更にその彼はナルキスと婚約しているボルネオール侯爵家の孫娘、エリー嬢に気に入られ従者見習いとして既に引き取られていたのだ。
何故、父は私達夫婦に何の相談もせずにこんな不可解な事をするのだろうか?
私は父に怒りを覚えていた。
更に数年後、ナルキスは学園高等部の入学式で騒ぎを起こし、殿下方に目を付けられてしまった。
最悪だ!
王家より外交を任されているロピアー公爵家の嫡男が、殿下方の不興を買う等、以ての外である!
そして、私達夫婦は苦渋の決断をした。
父が何と言ってもナルキスを廃嫡し、他家から養子を迎えて跡を継がせる。
その頃にはもう父は病床にあり、以前の様な権力は無くなっていた。
私達夫婦の決断を告げると、父はとんでもない告白をした。
私には、腹違いの弟が居たというのだ!
弟は既に亡くなっており、あの乳母はその妻になる予定だったというのだ。
ボルネオール侯爵家に引き取られた乳母の息子は、その弟の子供だったのだ。
何故、もっと早くに教えてくれなかったのか!?
知っていれば、彼を手元で育てる事が出来たのに!
今からでもボルネオール侯爵家と交渉し、弟の息子クリス君とエリー嬢を両養子に迎えてロピアー公爵家の後継者になってもらうしかない。
私は、すぐにボルネオール侯爵家と交渉に入った。
その結果、どうやらこの話は向こうも渡りに船だったというのだ。
ナルキスとエリー嬢の仲は最悪で、婚約破棄も時間の問題だったのだという。
いっそのこと我が公爵家との婚約を破棄して、侯爵家が持っている別の爵位を与えてクリス君とエリー嬢を結婚させようかとまで思われていたのだ。
何という事だ!
『穴があったら入りたい!』というのはこういう気持ちなのだろう……
ボルネオール侯爵と一年以上交渉を続け、半年前にやっと本人と会う許可を得た。
当然、この事は貴族院に届けは出してある。
偶然にも彼は妻の姉が産んだ、第四王子シオン殿下の秘書をしていた。
シオン殿下に協力して頂き、何とか偶然を装って、私は彼と接触を図る事に成功した。
会ってみて驚いた。
彼の嗜好や癖などは、あまりにも私とそっくりなのだ。
シオン殿下にも『伯父と甥というより、親子にしか見えない。』、と言われた。
それから半年間、何かと理由をつけてシオン殿下の執務室に通い続けていた。
ある日、王城から『すぐに登城するように!』と使いが来た。
何事か、と急いで登城するとエミール殿下とサイド家が新開発した【鑑定の魔道具】という魔道具で、【鑑定】をおこなった結果、何と今まで甥だと思っていたクリス君が私達夫婦の子供だという事が解ったのだ!
そして先程、全ての事実が判明した。
後は【入れ替わりの指輪】の解呪だけである。
私達夫婦の元に本当の息子クリスが戻って来る事の喜びもあるがもう1人の息子であるナルキスの事を思うと複雑だ。
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