【第4章】🦝ウチで雇ってるバイトがタヌキって言ったら、誰か信じる❓🦝

砂月ちゃん

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第4章 狐畏憚

田口狐の話

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時々ストロベリームーンに来る稲荷狐の田口。
声真似上手でちょっといいかげんな、明るいヤツ。
というのが理子の第一印象。


今回は、そんな田口狐のお話しです。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

むかしむかし、ある村の稲荷神社に一匹の狐が住んでおりました。


狐は人の声真似が得意で、よく人を化かして喜んでおりました。
ある時、村に住む女の子が狐の住む神社にやって来ました。


「狐さん、狐さん!お願いじゃ、ワシにおとうとおかあの声を聴かせちゃあくれんかのぅ?」


『ああ…この子は、確かこの前の流行病はやりやまいで亡くなった夫婦の娘の…確かお花とかいったな。

前はよう親子で神社に来とったのぅ。
歳の頃は数えで六つくらいか、気の毒な事だ。』


そう思って狐は女の子の頼みを、聞く事にしました。


「『その代わり、たまにでええから神社の掃除をしておくれ。』」

「良いよ。」


女の子は、とても嬉しそうに答えてにっこりと笑い、その笑顔に狐も嬉しくなりました。


狐は女の子が来る度に、約束通りとうとおかあの声で、いろいろな事を話して聞かせました。


「〔柿が豊作の年は、米も豊作になる。柿が不作の年は、米も不作になる。じゃから日頃から日持ちする食べ物を貯めておけ。〕」

「〔四つ向こうの山に、雲がかかったら、雨が降る。川に近づいちゃならん。〕」

「〔カマキリの卵が低い所にある年は、雪が少ない。次の年は夏まで水が少ない。〕」

「〔山の奥に、昔ワシが植えといた栗の木がある。村の者は誰も知らんから、取り放題じゃ。誰にも内緒じゃぞ!〕」


と、狐は女の子をとても可愛がっておりました。時には山や川から、食べ物を採って来てやる事も……


やがて月日が経ち、幼かった女の子も歳頃の娘になり、いつからか狐はおとうやおかあの声ではなく、時々自分の声で話しかけるようになりました。


「お花はいくつになった?」

「もうすぐ数えで十六になる。」

「そうか…もう、そがぁな歳か。」

「それで…いつも雨雲のかかる山のふもとにある村のもんから、嫁に欲しいと言われとるんじゃ…… 」

「そ…そうか…嫁に行くのか…… 
この村からでは、ちぃと遠いのぅ。」


残念そうに狐が言うと娘は……


「嫁入り先に行っても、『おとうやおかあの墓参りじゃ。』言うて、たまに帰って来れるように頼んでみるけぇね。」


そう言って寂しそうに帰って行きました。


『大きな池のある川上の村に嫁に行くなら、水不足で困る事はなかろう。』


数年前、長いこと雨が降らず狐の住むこの辺りも水不足で困った事があったのですが、それだけでも安心です。


『お花と離れるのは辛いが、狐と人がこれ以上一緒にいる訳にはいかん!

それにわざわざ遠い村から望まれて嫁に行くのだから、きっと大事にしてくれるはず、それでお花が幸せになるなら…… 』


そう思って狐は、泣く泣くお花が嫁に行くのを見送ったのでした。


暫く経った頃、この地方を大嵐が襲いました。
それから数日して神社の様子を見に来た村人が、妙な噂話しをしているのを狐は聴いたのです。


「そういえばここだけの話しじゃが、四つ向こうの山のふもとの村で【人柱】を立てるそうだぞ。」

「そういやこの前の日照りで、おうじょう※1したけぇ新しい池をこさえ※2とったのぅ…… 」

「へぇで誰が【人柱】になったんじゃ?
何処の家も出したがらんじゃろう。」

他所よその村から嫁に来た身寄りの無い娘を【人柱】にするらしい…… 」

「〔そりゃあ、まさかお花の事じゃないじゃろうな?〕」

「そのまさからしいぞ。」

「『そんな…まさか、その為に嫁じゃと言うて連れて行ったのか!?』」


!?


「「だ、誰じゃ今の声は!?」」


慌てる村人を無視して、狐は走りました。
村人の話しが本当なら、幸せを願って泣く泣く手放したお花が【人柱】にされると言うのです!


狐は一生懸命に走りました。野を越え山を越えお花のいる村に向かって一晩中……


しかし狐がやっとの想いで辿り着いた時には、お花は新しい池のつつみに【人柱】として埋められた後だったのです。


「『あぁ…お花…間に合わんかったのか…… 
ワシの…ワシの大事なお花がぁーー!!』」


『ケーン!!』


狐の怒りと悲しみを込めた鳴き声が村に木霊し、今まで晴れていた空が一転にわかにかき曇り、大きな黒い雲と濃い霧がふもとの村を覆いました。


狐の神通力で作られた濃い霧の所為で、村人は村から出る事が出来なくなってしまいました。


新しい池には滝の様な雨が降り、あっという間に新しい池はいっぱいになってしまったのです。


「なんて事だ!?せっかく身寄りの無い娘を【人柱】にしたのに、まさか番持ち※3だったとは!」

「黒い雲と霧が出る前に『の鳴き声を聞いた。』と言うとるもんも居る。」

じゃと!?よりに寄ってじゃったというのか!?」

「この雨じゃ時期じきに水が池のつつみを越える。」

「庄屋さんどうすべ?あの霧の所為で村から一歩も出れねぇから、逃げる事も出来んぞ…… 」


庄屋さんは考えました。なんとか狐の怒りを解かないと、この村は全滅してしまいます。


「そ、そうじゃ!寺の和尚に頼んで狐の怒りを解いてもらえば!!」


しかし、それを聞いた村人達は、あきれました。


「何言ってるだ庄屋さん!【人柱】の数が足りんいうて、反対しとった和尚を【人柱】にしたんはあんたじゃないか!!」


そう、この村の庄屋はあろう事か【人柱】を立てる事に反対していた寺の和尚まで【人柱】にしてしまったのです。


村を覆う黒い雲と濃い霧は、狐の怒りだけではなく、仏様の罰でもありました。


その日の夜、ついに新しい池のつつみが切れ、村は住んでいた村人ごと水底に沈んでしまったのでした。


こうして出来たのが、今の水源地なのです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「へぇ~!あの水源地にそんな昔話があったなんて知らなかったなぁ~。
田口さんって物知りなんだね。」

「いやぁ瑞稀みずき君の役に立って良かったよ。」

「宿題で『この辺りの昔話を調べてくる様に』って言われて困ってたんだ。
【豆狸の宿】や【菖蒲あやめまえ伝説】は皆んな書くだろうしね。」


どうやら田口さんがさっきしていた【昔話】は、瑞稀に強請ねだられてした話しだったらしい……


もちろん、水源地にそんな【昔話】は無い。
田口さんのねつ造だ!


「これで皆んなに自慢出来る!」


あ、ちょっとマズイわね。ありもしない【昔話】を学校で発表なんかしたら瑞稀が恥をかいちゃうわ。


「ちょっと待ちなさい瑞稀!!
さっきのは、田口さんの作り話よ!
あの水源地には、キチンとした言われがあるってこの前説明したじゃないの!!」

「あっそういえば、この前そんな話しを……
田口さんてば声色こわいろまで使って話すから本気にしちゃったよ。」

「あははは♪なんだ残念ww
理子ちゃん水源地の事、知ってたのかぁ♪」


私だって小学校の時の担任から、水源地の事を習ってなかったら田口さんに騙されてるところだったわ。


それだけ彼の話は、真に迫っていた。


「さっきの話、地形的にも無理がありましたよ。水源地があるの盆地の端じゃないですか!」

「騙せると思ったんだけどなぁ♪流石は【オカルト研究同好会】だねw」

「もう!ふざけないで下さいよ!!」

「あははは♪ゴメンね瑞稀君。」

「けっこう興味ある話しだったから、残念だなぁ。」

「本当ゴメン!今度何か面白い話を仕入れとくからね。」


瑞稀がかなりガッカリしているので、
私は前に関わった事のある【スクモ様】の話を教えてあげる事にした。


「【スクモ遺跡】かぁ……
そんな遺跡がすぐ近くにあるの知らなかったな。」

かおるちゃんがまとめてくれた資料があるから、私の部屋に行こう。」

「ありがとう姉ちゃん♪」


たまたま私が居たから良かったけど、危うく瑞稀が学校で恥をかくところだった。


それにしても徳さんと満月、一緒に居たのに何で田口さんの事止めなかったのかしら?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(満月視点)


理子と瑞稀が奥に戻った後、ワシらは田口に話しを聞く事にした。


「田口よ…さっきの全部が作り話しじゃ無かろう?」

「確かお前さんは、300年くらい前にここに越して来たと親父おやじから聞いた事がある。」

「なんの事かな?さっきのはだよ♪」


田口はいつものようこにニコニコしながら喋っているが、目は笑っていなかった。


「「!!」」


その目はどこか寂しそうで、いつもの田口と違っとった。


「さて、理子ちゃんが戻って来る前に退散するとしますか♪」


そう言って田口は帰って行った。


「あ…アイツ、コーヒー代払わずに帰ってしもうたぞ!」

「仕方ない…今日はワシが出しとく。
次に来た時に返してもらえばええし…… 」


ところが田口はその後、新幹線駅で理子と会った※4のを最後に、暫く姿を見せんかった。


まさか、この前の事で町を出て行ったんじゃ無かろうな?


そう思ってワシと徳は心配しとった。


ところが数ヶ月経った秋の終わりに、田口はいつものようにニコニコしながら、旅行の土産を持って店に来よったんじゃ。


「皆んな久しぶり♪元気にしてた?」

「「「「「田口(さん)!?今まで何処に居た(の)?」」」」」

「えっ!?どうしたの皆んな?」


皆んなの剣幕に、ビックリしている田口から聞いた結果…暫く来なかったのは、新幹線駅で理子に話した通り、嫁やと一緒にに行っていたからだった。


帰りが遅かったのは、その国が気に入って暫く滞在していたからだと……


因みに田口からもらった土産は、その国で買った焼菓子の詰め合わせ。
《満月とイチゴ柄》の立派な缶に入っていて『店のインテリアに使えそうだ♪』と奥さん(理子の母)は、かなり喜んどる。


「コレ何語?全然読めないんだけど?」


理子は缶に刻印されている文字?に興味があるらしい。


とりあえず、田口の機嫌は凄く良さそうじゃ。一時はどうなる事かと心配しとったが、これで一安心じゃな。


それはそれとして……


「田口よ…この前コーヒー代払わずに帰ったろう。立て替えておいたから返してくれるか?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(瑞稀視点)

田口さんのを聞いたのは夏休みに入って直ぐだった。


『この辺りの昔話を調べてくる』というのは、夏休みの宿題。
先生のいうこの辺りって言うのは、県内なら別に何処でも良かったみたい。


この町よりずっと奥にある町に住む、お爺ちゃんの家に行ってたクラスメイトが聞いて来た【龍神湖伝説】が何故か田口さんから聞いたとちょっと似ていたんだよね。


この話には、狐は出てこなくてお花さんを助けようとしたのは、村の若者だった。


『【人柱】にされた娘と若者の魂が【龍神】を呼び、池の水をいっぱいにして天に還って行った。』


って言うラストは、僕的にはちょっと違和感がある。


先生の話しによると、こういう【昔話】は全国にあるんだって。
だいたいが綺麗な話しに、すり替えられたりしてるらしい。


たぶん田口さんがしてくれたの方が、事実に近いんじゃないかとなんとなく僕は思った。


今度会ったら、お礼に美味しい稲荷寿司をご馳走しよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※1   【おうじょう】

大変。困った。

※2   【こさえとった】

作っていた。


※3 【番持つがいもち】

まれにいる人外の者に好かれている人の事。

大事にすればその人外の加護を受けられるが、大事にしないと逆に災禍をもたらす。

このお話しに出てくる田口狐は、【神使しんし】なので怨まれるとタチが悪い。

☆【番持ち】の設定は独自の物です。

※4

第3章参照



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