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第4章 狐畏憚
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☆時系列的に《噂の真相》5で皆んなが東京に行く前のお話です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
季節は六月……
まさに【六月の満月】の店名に相応しい季節。
新婚旅行代わりなのか、若いお客様達で家のペンションも賑わっています。
喫茶店の方も好調で、徳さんと満月、秋山さんだけじゃ人手が足りなくなったから臨時でバイトを募集したら、やって来たのは妖狐が三人(匹?)。
徳さんや満月を見習って、『現金を稼ぐ事にした。』そうなの。
今までどうやって、稼いでたのかちょっと不安……
「ああ…今までは街にある姐さんの店で、黒服をしてたんだけど最近客が少なくてね。出稼ぎ中なんです。」
「へぇー。そうなんだ…… 」
どうやらアチラもたいへんみたいね。
因みに姐さんというのは、昔から街にいて近隣の妖狐を束ねているおさん狐の事です。
妖狐達の生活費を稼ぐ為に、モデル事務所や飲食店を経営している実業家なんだけど、何匹もいるから仕事先が足りなくてストロベリームーンを頼って来たの……
「特に俺達みたいな非力な雄は、仕事先が少なくて…… 」
「力のある奴は、力仕事やヒモで食べていけるんですけど。」
「「「………… 。」」」
ヒモも仕事に入るんだ……
「と、とりあえず真面目に働いてもらえればストロベリームーンは大丈夫だから、お客さんとトラブルだけは起こさないでね。」
「「「宜しくお願いします!」」」
それから三人(匹?)は毎日、真面目に仕事をしてくれた。接客に関しては流石は元黒服だけあって、徳さんより凄い。
でも何となくテレビで見た執事喫茶っぽい雰囲気が、そこはかとなく漂っている。もちろん『おかえりなさいませお嬢様。』とは言ってないけどね。
そんなある日曜日、坂野君がお土産を持って喫茶店にやって来た。
かなり上機嫌だ。
「ほい、コレお土産のもみじ饅頭!」
「あ、ありがとう。宮島さんに行って来たの?」
「いや、江波にあるスッゲェ高級ホテル。昨日、従姉の姉ちゃんの結婚式があったんだ。」
「ああ、あのホテルねー。ずいぶん機嫌が良さそうだけど、何かあったの?」
「実はその結婚式のブーケトスで、従姉の投げたブーケを俺がキャッチしちまってさ。」
「えぇっ!?」
「けっこう後ろに下がってたんだけどな。」
ブーケトスでブーケを男の…しかも高校生の坂野君が受け取ってどうするのよ?
「それ、大丈夫だったの?」
「あんまり大丈夫じゃ無かったぞ。ブーケトスに参加してた肉食獣達と追いかけっこになった!
だって、従姉に返す訳にもいかねーだろ?」
「確かに…… 」
もし返したら、『直ぐ離婚して、再婚するつもり。』みたいな雰囲気になりそう。
「で、そのブーケ結局どうしたの?」
「トイレに逃げこんだ時に、中に隠れてた駆け落ちカップルのウェディングドレス着た姉ちゃんにあげた。」
「はぁ~?何やってんの?」
「喜んでたぞ♪」
そういう問題じゃない……
「ところで何で駆け落ちカップルだってわかったの?」
「だって男子トイレにウェディングドレス着た花嫁と、私服の兄ちゃんが隠れてたんだぜ?一応事情くらい聞くだろ?」
「それで、その二人の言い分は?」
と徳さんが質問する。
「なんか今時珍しい政略結婚で、『本当は花嫁さんの義妹が結婚するはずだったのが朝起きたら居なくて、ピンチヒッターで無理矢理結婚させられるところだったから、彼氏の兄ちゃんと駆け落ちするところ。』だって言ってた。」
えっ!?何?その何処かの携帯小説サイトに五万とありそうな話は???
姉妹に逃げられた新郎が可哀想過ぎるんですけど!!
「それが本当だったら凄いな…… 」
と、今度は満月。
「で…その駆け落ちカップルどうしたの?」
「それがさぁ、何故かホテルの周りでウェディングドレスの撮影会やってて、それに紛れて船で上手い事逃げてった。」
何か凄く自慢気な上手い事やりました!って感じの表情……
「坂野君も、なんかやったでしょ?」
「ああ、駆け落ちカップル探してた人に『この辺でウェディングドレス着た人見なかったか?』って聞かれたから従姉の居場所を教えてやった。別に嘘は言ってない。」
確かに嘘は言ってない……
ホテルの結婚式場で、そんな聞き方した人にも問題あるかもしれないけどね。
「そんじゃ、俺帰るわ!」
そう言って坂野君はコーヒーを飲み終わると、『母ちゃんに頼まれたから。』と言って《酒粕マカロン》を買って帰って行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
坂野君が帰った後、お客さんが途切れたので妖狐達と交代して徳さんと満月と一緒に、裏庭でお土産のもみじ饅頭を食べながら休憩する事にした。
「ねぇ、さっきの坂野君の話どう思う?」
「姉妹二人から逃げられた新郎か?
よほど魅力が無いんじゃろ。
そんな事より、そっちのクリームチーズもみじをよこさんか!」
「イヤよ!私もコレ好きなんだから!!て、そっちじゃなくて駆け落ちカップルに手を貸したらしいウェディングドレスの撮影会してた人達の事よ!」
どうやら満月はクリームチーズもみじが好きらしい。
ゴソゴソ
私が満月とクリームチーズもみじの取り合いをしている間に、徳さんはちゃっかりチョコもみじをキープしていた。
「あっ!徳さんズルい!」
「こういうのは、早い者勝ちじゃ!まぁ、たぶん妖狐の仕業じゃろうな。あの辺はアヤツの縄張りじゃからのぅ……
後で妖狐達に聞いて見ればええじゃろ。」
中身じじぃのクセに、ウチの豆狸は洋風のもみじ饅頭がお気に入りなのね。
休憩時間が終わり、妖狐達と交代して直ぐにお客さんが入って来た。
カランカラン♪♪
「「「いらっしゃいませ!」」」
ドアベルが鳴った途端、条件反射で笑顔で接客……
「あ…あの…すみません。ここペンションだって聞いて来たんですが、今晩泊まれますか?」
そう言いながらドアを開けて入って来たのは、狐目の若い男と帽子を目深に被った若い女性の怪しいカップルだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※1
【秋山さん】
第一章に出て来た、喫茶店【ストロベリームーン】のパートさん。
※2
【おさん狐】
☆妖怪紹介コーナー 6参照
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季節は六月……
まさに【六月の満月】の店名に相応しい季節。
新婚旅行代わりなのか、若いお客様達で家のペンションも賑わっています。
喫茶店の方も好調で、徳さんと満月、秋山さんだけじゃ人手が足りなくなったから臨時でバイトを募集したら、やって来たのは妖狐が三人(匹?)。
徳さんや満月を見習って、『現金を稼ぐ事にした。』そうなの。
今までどうやって、稼いでたのかちょっと不安……
「ああ…今までは街にある姐さんの店で、黒服をしてたんだけど最近客が少なくてね。出稼ぎ中なんです。」
「へぇー。そうなんだ…… 」
どうやらアチラもたいへんみたいね。
因みに姐さんというのは、昔から街にいて近隣の妖狐を束ねているおさん狐の事です。
妖狐達の生活費を稼ぐ為に、モデル事務所や飲食店を経営している実業家なんだけど、何匹もいるから仕事先が足りなくてストロベリームーンを頼って来たの……
「特に俺達みたいな非力な雄は、仕事先が少なくて…… 」
「力のある奴は、力仕事やヒモで食べていけるんですけど。」
「「「………… 。」」」
ヒモも仕事に入るんだ……
「と、とりあえず真面目に働いてもらえればストロベリームーンは大丈夫だから、お客さんとトラブルだけは起こさないでね。」
「「「宜しくお願いします!」」」
それから三人(匹?)は毎日、真面目に仕事をしてくれた。接客に関しては流石は元黒服だけあって、徳さんより凄い。
でも何となくテレビで見た執事喫茶っぽい雰囲気が、そこはかとなく漂っている。もちろん『おかえりなさいませお嬢様。』とは言ってないけどね。
そんなある日曜日、坂野君がお土産を持って喫茶店にやって来た。
かなり上機嫌だ。
「ほい、コレお土産のもみじ饅頭!」
「あ、ありがとう。宮島さんに行って来たの?」
「いや、江波にあるスッゲェ高級ホテル。昨日、従姉の姉ちゃんの結婚式があったんだ。」
「ああ、あのホテルねー。ずいぶん機嫌が良さそうだけど、何かあったの?」
「実はその結婚式のブーケトスで、従姉の投げたブーケを俺がキャッチしちまってさ。」
「えぇっ!?」
「けっこう後ろに下がってたんだけどな。」
ブーケトスでブーケを男の…しかも高校生の坂野君が受け取ってどうするのよ?
「それ、大丈夫だったの?」
「あんまり大丈夫じゃ無かったぞ。ブーケトスに参加してた肉食獣達と追いかけっこになった!
だって、従姉に返す訳にもいかねーだろ?」
「確かに…… 」
もし返したら、『直ぐ離婚して、再婚するつもり。』みたいな雰囲気になりそう。
「で、そのブーケ結局どうしたの?」
「トイレに逃げこんだ時に、中に隠れてた駆け落ちカップルのウェディングドレス着た姉ちゃんにあげた。」
「はぁ~?何やってんの?」
「喜んでたぞ♪」
そういう問題じゃない……
「ところで何で駆け落ちカップルだってわかったの?」
「だって男子トイレにウェディングドレス着た花嫁と、私服の兄ちゃんが隠れてたんだぜ?一応事情くらい聞くだろ?」
「それで、その二人の言い分は?」
と徳さんが質問する。
「なんか今時珍しい政略結婚で、『本当は花嫁さんの義妹が結婚するはずだったのが朝起きたら居なくて、ピンチヒッターで無理矢理結婚させられるところだったから、彼氏の兄ちゃんと駆け落ちするところ。』だって言ってた。」
えっ!?何?その何処かの携帯小説サイトに五万とありそうな話は???
姉妹に逃げられた新郎が可哀想過ぎるんですけど!!
「それが本当だったら凄いな…… 」
と、今度は満月。
「で…その駆け落ちカップルどうしたの?」
「それがさぁ、何故かホテルの周りでウェディングドレスの撮影会やってて、それに紛れて船で上手い事逃げてった。」
何か凄く自慢気な上手い事やりました!って感じの表情……
「坂野君も、なんかやったでしょ?」
「ああ、駆け落ちカップル探してた人に『この辺でウェディングドレス着た人見なかったか?』って聞かれたから従姉の居場所を教えてやった。別に嘘は言ってない。」
確かに嘘は言ってない……
ホテルの結婚式場で、そんな聞き方した人にも問題あるかもしれないけどね。
「そんじゃ、俺帰るわ!」
そう言って坂野君はコーヒーを飲み終わると、『母ちゃんに頼まれたから。』と言って《酒粕マカロン》を買って帰って行った。
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坂野君が帰った後、お客さんが途切れたので妖狐達と交代して徳さんと満月と一緒に、裏庭でお土産のもみじ饅頭を食べながら休憩する事にした。
「ねぇ、さっきの坂野君の話どう思う?」
「姉妹二人から逃げられた新郎か?
よほど魅力が無いんじゃろ。
そんな事より、そっちのクリームチーズもみじをよこさんか!」
「イヤよ!私もコレ好きなんだから!!て、そっちじゃなくて駆け落ちカップルに手を貸したらしいウェディングドレスの撮影会してた人達の事よ!」
どうやら満月はクリームチーズもみじが好きらしい。
ゴソゴソ
私が満月とクリームチーズもみじの取り合いをしている間に、徳さんはちゃっかりチョコもみじをキープしていた。
「あっ!徳さんズルい!」
「こういうのは、早い者勝ちじゃ!まぁ、たぶん妖狐の仕業じゃろうな。あの辺はアヤツの縄張りじゃからのぅ……
後で妖狐達に聞いて見ればええじゃろ。」
中身じじぃのクセに、ウチの豆狸は洋風のもみじ饅頭がお気に入りなのね。
休憩時間が終わり、妖狐達と交代して直ぐにお客さんが入って来た。
カランカラン♪♪
「「「いらっしゃいませ!」」」
ドアベルが鳴った途端、条件反射で笑顔で接客……
「あ…あの…すみません。ここペンションだって聞いて来たんですが、今晩泊まれますか?」
そう言いながらドアを開けて入って来たのは、狐目の若い男と帽子を目深に被った若い女性の怪しいカップルだった。
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※1
【秋山さん】
第一章に出て来た、喫茶店【ストロベリームーン】のパートさん。
※2
【おさん狐】
☆妖怪紹介コーナー 6参照
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