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亜麻色のヒロインが現れた!
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☆今回一部、お食事中には適さない表現があります。
ご了承下さい。
―――――――――――――――――
殿下が王立学園中等部に進級され、月に二度だったお茶会が月に一度になりました。
『中等部に入ればいろいろと、勉強や新しいご友人方との付き合いでお忙しくなるから仕方ありませんよね。』
と、思っていたのですが進級から半年も経たないうちに、アントニー殿下とのお茶会が中止になる事が、また度々起こり始めました。
ア・ヤ・シ・イ
そんな時、お友達の伯爵令嬢から殿下に対する苦情のお手紙をもらってしまったのです。
《最近、アントニー殿下が学園で従姉に付きまとっていてたいへん迷惑しております。
従姉は『婚約者の居る方とのお付き合いは、できません。』と断っているのにしつこく言い寄られていて、このままでは従姉の将来が心配です。
アントニー殿下をなんとかしていただけないでしょうか?》
えっ?何やってるの殿下!?
お手紙を送って来られたのは、エリンギット伯爵令嬢サファリア様。
殿下に付きまとわれて、迷惑されているのはその従姉のオーベンドルフ伯爵家の令嬢オリーブ様。
学園に通う為に遠方の領地から出ていらして、サファリア様のお屋敷から学園に通われています。
オリーブ様は亜麻色の髪に健康的な小麦色の肌をされた、背の高いスレンダー美人です。
さっそく詳しい事情を聴く為に、お二人をお茶会にご招待致しました。
「こんにちは。サファリア様、オリーブ様。」
「「こんにちは。イザベル様、本日はお招きく下さりありがとうございます。」」
「こちらこそ、おいでいただきありがとうございます。」
「本日は以前、我が家にいらした時に美味しいと仰っていた、オーベンドルフ伯爵領で採れた柑橘類を使ったマーマレード、それと新作のオリーブオイルをお土産に持って参りました。」
「まぁ、いつもありがとうございます!本日はそれを期待して、お茶会のお茶菓子はスコーンにしましたのよ。」
「まぁ、そうですの!?」
お世辞ではなく、オーベンドルフ伯爵領で作られたジャムは本当に美味しい。
特にマーマレードは、オレンジだけでなくいろいろな柑橘類を混ぜて作られているので、味わいがそのつど微妙に違って面白い。
そのまま出荷出来ない、余った果実をこうしてジャムにするのはオーベンドルフ伯爵領の習慣なのだそうです。
以前、サファリア様のお屋敷に遊びに行った時に出されたジャムがたいへん美味しくて、以来オーベンドルフ伯爵家からお取り寄せしているのです。
それにしても、新作のオリーブオイルはどのような物なのでしょう?
とても楽しみですわね。
庭のガゼボに用意されたティーセットで三人で紅茶を飲みながら、スコーンにジャムを付けて食べ女子トーク。
「オリーブオイルは『ダイエットに良し、髪に付けて良し』と、とても身体に良いのです。
今度、我が家の経営する商会で売り出す事になりましたの……
イザベル様にも是非使っていただきたくて、お持ちしましたのよ。」
「まぁ、ダイエットに!?」
その後いろいろな使い道のお話をしたりして、楽しい時間が続きましたがそろそろ肝心なお話をしなければいけませんね。
もちろん、最近の殿下の事についてのお話です。
夏季休暇に入る2週間程前、私達が学園のサロンでオーベンドルフ領に遊びに行く計画の話しをしていると、それを聞きつけた殿下が『自分も行く。』と言い出したのです。
「アントニー殿下には、ご無理だと思いますわよ。」
「何故だ!?」
何故って?だって殿下は……
「アントニー殿下…オーベンドルフ領は王都からかなり距離があり、馬車での移動ではないのですよ。
それにかの地が何処にあるか、ご存知ですか?」
「はぁ?馬車以外に何で行くというのだ?馬か?
オーベンドルフ伯爵領は、果物がたくさん採れると聞いているから、山の方だろう?」
殿下は、地理の勉強が苦手ですからオーベンドルフ伯爵領が、何処にあるかご存知ない無いようです。
「答えは船でございますアントニー殿下。
それと我がオーベンドルフ伯爵領はたくさんの島からなっております。
この時期ちょうど大型輸送船が領地からの積荷を運んで来るので、その帰りの便で一緒に行こうという話をいたところですの。」
とオリーブ様がお答えになりました。
「なっ!?船だと?まさか…オーベンドルフ伯爵領は海沿いの領地なのか?」
「ええ、さっきオリーブ様がそうおっしゃいましでしょう。」
「もしかしてオーベンドルフ領の結婚の条件は、水や海、船に関する事か?」
と恐る恐るお尋ねになりました。
「先程もご説明した通り、オーベンドルフ伯爵領は領地の大半が島ですから当然です。」
それを聞いたアントニー殿下は真青な顔になり、諦めてどこかに行ってしまいました。
慌てて側近の方達も、私達に一礼して跡を追って行かれました。
足元がかなりおぼつかなかったようですが、乳兄弟の方もご一緒ですから私がついて行かなくても大丈夫でしょう。
「まぁ?アントニー殿下は、急にどうなされましたの??」
とオリーブ様とサファリア様は心配そうにアントニー殿下が去って行った方を、心配そうに見つめておられます。
サロンに居た他の方々も、心配そうにしておられます。
私達は、もちろん演技ですけどね……
《家が認めた婚約者(政略結婚)以外の相手が婚姻を申し込むにあたって、よほどの事がない限り一度は相手方のタウンハウスと領地(法衣貴族の場合は実家のみで可)に行き、その家の出した条件をクリアして婚姻を許して貰わなければならない。》
という昔からの風習が、我が国にはあるのです。
将来身内になるにあたって、お相手の家や領地についてよく知る為には大事な事ですし、それだけの覚悟を持っていると示さなければならない。
という事ですね。
その条件は各家や領地によって様々。
もちろんお相手が、男性か女性かでも違います。(稀に同じ条件の事も有り。)
当然、命に関わるような条件はダメですわよ。
ある辺境伯家は【辺境騎士団武術大会優勝】が昔からの結婚条件。
女性の場合は別の条件があるそうです。
私達の場合は、完全に政略結婚ですからコレに該当しません。
ある文官系貴族家では様々な試験問題を出し、満点を取るのが結婚条件。
『王城の文官登用試験よりも難しい』という噂です。
ある大貴族は領地の広大な屋敷(ほとんどお城)の中で【宝探しゲーム】をし、期限までに指定の物を見つける事が結婚条件。
ヒントは3回までだそうです。
中にはどうしても娘を嫁に出したくなくて【娘に関する100問クイズ】を作り、娘から『気持ち悪い。』と言われて無条件で泣く泣く嫁に出す事になった法衣貴族の方がいたとか……
で、肝心のオーベンドルフ伯爵家の結婚の条件ですが【領内の無人島で3日間の単独サバイバルの後、対岸の島まで自力脱出に成功する事】です。
それでどうしてアントニー殿下が諦めたかと言うと……
実は殿下、船酔いが酷く、更にまったく泳げないのです。
以前、王城の庭園にある手漕ぎボートに乗せて頂いた時は、最悪でしたわ。
漕ぎ出して5分も経たないうちに、この日の為に新調した水色のサマードレスが殿下のゲ◯で台無し。
二度と着れなくなってしまいした。
その事がトラウマになり、殿下は船関係NGに……
私もその時の事を思い出してしまうのでそれ以来、水色のサマードレスを着る事はありませんわ。
当然【船酔い】はオーベンドルフ領に行けないよほどの理由にはなりません。
ですから殿下はオリーブ様を諦めるしかなかったのです。
ご了承下さい。
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殿下が王立学園中等部に進級され、月に二度だったお茶会が月に一度になりました。
『中等部に入ればいろいろと、勉強や新しいご友人方との付き合いでお忙しくなるから仕方ありませんよね。』
と、思っていたのですが進級から半年も経たないうちに、アントニー殿下とのお茶会が中止になる事が、また度々起こり始めました。
ア・ヤ・シ・イ
そんな時、お友達の伯爵令嬢から殿下に対する苦情のお手紙をもらってしまったのです。
《最近、アントニー殿下が学園で従姉に付きまとっていてたいへん迷惑しております。
従姉は『婚約者の居る方とのお付き合いは、できません。』と断っているのにしつこく言い寄られていて、このままでは従姉の将来が心配です。
アントニー殿下をなんとかしていただけないでしょうか?》
えっ?何やってるの殿下!?
お手紙を送って来られたのは、エリンギット伯爵令嬢サファリア様。
殿下に付きまとわれて、迷惑されているのはその従姉のオーベンドルフ伯爵家の令嬢オリーブ様。
学園に通う為に遠方の領地から出ていらして、サファリア様のお屋敷から学園に通われています。
オリーブ様は亜麻色の髪に健康的な小麦色の肌をされた、背の高いスレンダー美人です。
さっそく詳しい事情を聴く為に、お二人をお茶会にご招待致しました。
「こんにちは。サファリア様、オリーブ様。」
「「こんにちは。イザベル様、本日はお招きく下さりありがとうございます。」」
「こちらこそ、おいでいただきありがとうございます。」
「本日は以前、我が家にいらした時に美味しいと仰っていた、オーベンドルフ伯爵領で採れた柑橘類を使ったマーマレード、それと新作のオリーブオイルをお土産に持って参りました。」
「まぁ、いつもありがとうございます!本日はそれを期待して、お茶会のお茶菓子はスコーンにしましたのよ。」
「まぁ、そうですの!?」
お世辞ではなく、オーベンドルフ伯爵領で作られたジャムは本当に美味しい。
特にマーマレードは、オレンジだけでなくいろいろな柑橘類を混ぜて作られているので、味わいがそのつど微妙に違って面白い。
そのまま出荷出来ない、余った果実をこうしてジャムにするのはオーベンドルフ伯爵領の習慣なのだそうです。
以前、サファリア様のお屋敷に遊びに行った時に出されたジャムがたいへん美味しくて、以来オーベンドルフ伯爵家からお取り寄せしているのです。
それにしても、新作のオリーブオイルはどのような物なのでしょう?
とても楽しみですわね。
庭のガゼボに用意されたティーセットで三人で紅茶を飲みながら、スコーンにジャムを付けて食べ女子トーク。
「オリーブオイルは『ダイエットに良し、髪に付けて良し』と、とても身体に良いのです。
今度、我が家の経営する商会で売り出す事になりましたの……
イザベル様にも是非使っていただきたくて、お持ちしましたのよ。」
「まぁ、ダイエットに!?」
その後いろいろな使い道のお話をしたりして、楽しい時間が続きましたがそろそろ肝心なお話をしなければいけませんね。
もちろん、最近の殿下の事についてのお話です。
夏季休暇に入る2週間程前、私達が学園のサロンでオーベンドルフ領に遊びに行く計画の話しをしていると、それを聞きつけた殿下が『自分も行く。』と言い出したのです。
「アントニー殿下には、ご無理だと思いますわよ。」
「何故だ!?」
何故って?だって殿下は……
「アントニー殿下…オーベンドルフ領は王都からかなり距離があり、馬車での移動ではないのですよ。
それにかの地が何処にあるか、ご存知ですか?」
「はぁ?馬車以外に何で行くというのだ?馬か?
オーベンドルフ伯爵領は、果物がたくさん採れると聞いているから、山の方だろう?」
殿下は、地理の勉強が苦手ですからオーベンドルフ伯爵領が、何処にあるかご存知ない無いようです。
「答えは船でございますアントニー殿下。
それと我がオーベンドルフ伯爵領はたくさんの島からなっております。
この時期ちょうど大型輸送船が領地からの積荷を運んで来るので、その帰りの便で一緒に行こうという話をいたところですの。」
とオリーブ様がお答えになりました。
「なっ!?船だと?まさか…オーベンドルフ伯爵領は海沿いの領地なのか?」
「ええ、さっきオリーブ様がそうおっしゃいましでしょう。」
「もしかしてオーベンドルフ領の結婚の条件は、水や海、船に関する事か?」
と恐る恐るお尋ねになりました。
「先程もご説明した通り、オーベンドルフ伯爵領は領地の大半が島ですから当然です。」
それを聞いたアントニー殿下は真青な顔になり、諦めてどこかに行ってしまいました。
慌てて側近の方達も、私達に一礼して跡を追って行かれました。
足元がかなりおぼつかなかったようですが、乳兄弟の方もご一緒ですから私がついて行かなくても大丈夫でしょう。
「まぁ?アントニー殿下は、急にどうなされましたの??」
とオリーブ様とサファリア様は心配そうにアントニー殿下が去って行った方を、心配そうに見つめておられます。
サロンに居た他の方々も、心配そうにしておられます。
私達は、もちろん演技ですけどね……
《家が認めた婚約者(政略結婚)以外の相手が婚姻を申し込むにあたって、よほどの事がない限り一度は相手方のタウンハウスと領地(法衣貴族の場合は実家のみで可)に行き、その家の出した条件をクリアして婚姻を許して貰わなければならない。》
という昔からの風習が、我が国にはあるのです。
将来身内になるにあたって、お相手の家や領地についてよく知る為には大事な事ですし、それだけの覚悟を持っていると示さなければならない。
という事ですね。
その条件は各家や領地によって様々。
もちろんお相手が、男性か女性かでも違います。(稀に同じ条件の事も有り。)
当然、命に関わるような条件はダメですわよ。
ある辺境伯家は【辺境騎士団武術大会優勝】が昔からの結婚条件。
女性の場合は別の条件があるそうです。
私達の場合は、完全に政略結婚ですからコレに該当しません。
ある文官系貴族家では様々な試験問題を出し、満点を取るのが結婚条件。
『王城の文官登用試験よりも難しい』という噂です。
ある大貴族は領地の広大な屋敷(ほとんどお城)の中で【宝探しゲーム】をし、期限までに指定の物を見つける事が結婚条件。
ヒントは3回までだそうです。
中にはどうしても娘を嫁に出したくなくて【娘に関する100問クイズ】を作り、娘から『気持ち悪い。』と言われて無条件で泣く泣く嫁に出す事になった法衣貴族の方がいたとか……
で、肝心のオーベンドルフ伯爵家の結婚の条件ですが【領内の無人島で3日間の単独サバイバルの後、対岸の島まで自力脱出に成功する事】です。
それでどうしてアントニー殿下が諦めたかと言うと……
実は殿下、船酔いが酷く、更にまったく泳げないのです。
以前、王城の庭園にある手漕ぎボートに乗せて頂いた時は、最悪でしたわ。
漕ぎ出して5分も経たないうちに、この日の為に新調した水色のサマードレスが殿下のゲ◯で台無し。
二度と着れなくなってしまいした。
その事がトラウマになり、殿下は船関係NGに……
私もその時の事を思い出してしまうのでそれ以来、水色のサマードレスを着る事はありませんわ。
当然【船酔い】はオーベンドルフ領に行けないよほどの理由にはなりません。
ですから殿下はオリーブ様を諦めるしかなかったのです。
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