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第一章
残りの命の使い道
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廃病院の地下室、何十年も人が立ち入らなかったその場所は今、十人程の作業員でごった返している。
作業員達は頭を吹き飛ばされた害獣の死体や被害状況のデータを手慣れた手付きで計測、調査している。
それを少し離れた所から見つめる二人の男女。
一人は長い黒髪に切れ長の目付き、修道女のような服装、そして特徴的な四本の腕。
彼女の名前は藤堂 真理亜、その多腕で忙しそうに書類への書き込みやメモの確認を行いながら隣の男に問いかける。
「で、間違いないですか?、宇津川局長?」
宇津川と呼ばれたスーツ姿の男は袖越しからでも解る逞しい腕を組み、その太い眉を潜め問いに答える。
「あぁ、間違いない、B998だ、まさかこんな所に潜んでいたとはな」
「二年前……でしたよね、こいつを取り逃がしたのは」
「あぁ、改造者九人がかりでなんとか瀕死の所まで追い込んだが……まんまと逃げられた」
「で、その後は消息がどうしても掴めず、我々、労働衛生管理局はB998を討伐したものとして処理してしまった……」
「刺の有る言い方だな、藤堂君」
クスリと笑いながら藤堂は返す。
「そんなつもりはございません、指令府と労働衛生管理局の関係を鑑みれば、私もその方が良かったと思っていますわ、局長」
宇津川は眉を更に潜ませる。
「下手に災害指定にされると管轄があのやる気のない指令府に渡される、それならいっそ、倒したと思ってたら生きてましたととぼけた方が都合が良かったのさ」
「ふふっ、だからわかっていますって」
小生意気な部下をやれやれといった様子で眺めながら宇津川は話題を代える。
「それにしても凄まじい力だな、一対一で武器も無しに過去には災害指定にされかけた害獣を倒すとは」
「どっちが化物か、解りませんよね」
「ぜひ、我々労管の指揮下に加わって貰いたいものだな」
藤堂は宇津川にその切れ長の眼の視線を向ける。
「おっしゃる通り、彼の持つ戦力は絶対に今後の労管に必要です、ですが今彼には……」
「戸籍登録がないんだろ? 問題ない、そんなものすぐにでも私が用意してやる、ジェラルドにも頼まれていたしな、それまで指令府の連中に青鬼の事はしっかり隠しておいてくれ」
「……承知しました」
真理亜は書類に目を向けながら宇津川には聞こえないようにそっと呟く。
「ふふっ、また、色々仕事が増えそうね……」
目を覚ますと見覚えのある灰色の天井、ちらつく蛍光灯、カーテンに囲まれたベッドの上、包帯でぐるぐる巻きにされた自身の体、自分はどこにいるのだろう?
ハナサキ クザンは混濁した記憶から現状を導き出すためぼやけた頭を必死で回転させていた。
「一体ここは……」
家族の死、未来の世界、異形の化け物、命懸けの死闘、何処までが夢だったのか、はたまた全部が夢だったのか、考えあぐねているその最中に右隣から声が聞こえてきた。
「おう! 起きたかっ! クザン」
その声の主が荒々しくカーテンを開ける。
「ジェラルド……」
「どうだ!? 体の調子は!」
クザンは自身の腹をまさぐる。
確かに槍で腹に風穴を空けられた筈だが、その傷は塞がっているようだ。
クザンは自身がもう普通の人間ではないことを強く自覚しながら返事をする。
「ああ……問題ない」
ジェラルドはヒュウと口笛を吹く。
「ぶははは! すげぇなっ! 大したもんだぜ! うちの部下にも見習って貰いたいもんだな! なっ! 猛」
そう言いながらクザンの左隣のカーテンを勢いよく開ける。
「ちっ! うるせぇよ! オッサン!」
そこにはクザン以上に包帯だらけでまるでミイラ男の様になった猛がいた。
枕元で桜が林檎を剥いている。
「猛、それ……大丈夫……なのか?」
「ギリギリ命に別状はねぇとよ、あんたのお陰だ、ありがとうな」
「あの後、一体どうなったんだ?」
「あんたが害獣の頭を吹っ飛ばした後、あんたも一緒にぶっ倒れて、その後多分、15分位か、救援がやって来て全員そのまま救助されたよ、あの場にいた奴は全員無事だ」
「よかった……」
「兄さん……一つ教えてくれねぇかい?」
「なんだ?」
「あんたが害獣と闘う前に行った……道標云々ってのはどう言うことだい?」
「行った通りだ……君が最初に逃がした二人が俺を急がせて、次に逃がした一人が俺を案内してくれたのさ……君がコストを無視して命懸けで逃がした、彼らのお陰で俺はギリギリで君の命を救えたんだ」
「へっ! こないだの当て付けのつもりかい? それは結果論さ、俺は撤退のタイミングを間違えたバカ野郎ってだけだ」
枕にばふっと頭を打ち付け猛はクザンから目を逸らす。
そんな猛をみて桜がクスクスと笑う。
「またまたー拗ねちゃってー、良いことしてんだから素直になりなさい?」
「いや、違ぇよっ!!」
「まぁそうよねぇ、私にあんなことほざいた数時間後に自分は一般人逃がすのに必死でこの様になりましたぁなんて口が裂けても言えないわよねぇ?」
「うるせモガァッ!?」
桜は反論しようとする猛の口に大きめに切った林檎を突っ込み黙らせる。
「クザン、ありがとうね、私だけでなくて兄の命まで救ってくれたこと、本当に感謝してる」
「とんでもない、自分の出来ることをしただけだ……ん?」
クザンはここでやっと時間の流れがおかしいことに気がつく。
「桜? 怪我はどうしたんだ?」
「今更? あなたね、自分が何日寝てたか解ってる? 一週間よ、一週間」
「一週間!? そんなにか! いや、それにしたって一週間であの怪我が治ったのか!?」
桜は呆れ顔で返す。
「あなた自分の事棚に上げてよくそんなこと言えるわね、私だって改造人間なんだから、そのぐらいで治るわよ?」
「そうなのか……本当によかった、それにしても、一週間も経ってしまったか……」
「ふふっ、なに? デートの予定でも有ったの?」
冗談めかして聞く桜、対してクザンは眉間にシワを寄せ額に手を当て極めて深刻そうな顔だ。
「あのぉ……どしたの? 大丈夫?」
「…………」
「もしも~し?」
クザンは重そうな口を開く。
「ここの入院費用、どうしたものか……どうにかして金を稼がねば……」
クザン以外の三人が顔を見合わせ、そして笑い出す。
「ぶはははっ、青鬼でも入院費用の心配とかするんだなッ!」
馬鹿笑いするジェラルドにクザンは食って掛かる。
「いやいやっ! 俺に入院費用を踏み倒せと? そんなのは絶対に許さん、そうだっ! 院長室はどこだ! 土下座してせめて皿洗いでもさせて貰って……」
「まてまてまて!」
ベッドから飛び起きようとしたクザンをジェラルドが押さえつける。
「落ち着け……深呼吸しろ、クザン熱くなるな、いいか、ちょっと俺に話をさせろ」
「あ……あぁ」
「いいか、害獣を討伐すると俺たちハンターは報償金がもらえるんだ、んで、前回の風の害獣の報償金だが、おまえに戸籍がなかったから俺と桜が倒したことにして代わりにもらっておいた、それをお前にやる」
そういってジェラルドは二枚の紙を渡す。
そこには討伐者の名前として緑野 桜、ジェラルド ペレスとそれぞれ記入され、報償金が30万と書き込まれている。
「これで金の心配はしなくて良いな、そしてもう一つ、一週間前に倒した雷の害獣の報奨金だ」
もう一枚の紙を渡されたクザンはその内容に驚く、報償金が80万であることではなく討伐者の名前に花咲 九山と記入されていることにだ。
「ジェラルド……これは……」
「そうだっ! 俺が特別なコネを使って戸籍をつくってもらったんだ! もうお前は金も戸籍もある立派な龍の錫杖の住人だ、腕輪も今俺が預かってる、だからもうしばらくおとなしく寝てろ、つーか俺が無理矢理入院させたんだから入院代位俺が立て替えてやるからよ」
「……すまない……なんと礼を言って良いか……良い言葉が見つからん」
クザンは、絞り出すような声で言う。
「ぶっはははは、気にするな、部下二人を救ってもらったんだからな、それに俺もボランティアでやった訳じゃねぇ、色々面倒見た代わりといってはなんだがな、一つ俺の頼みを聞いてほしい」
「何でもしよう」
「お? 言ったな、まぁ単刀直入に言おう、お前俺の部下になってくれないか?」
言葉の意味が解らず、クザンは聞き返す。
「……というと?」
「俺の率いる害獣討伐部隊第十三班でお前のその青鬼の力を発揮してほしい……と言えば解るか?」
「…………」
「まぁ、嫌なら別にやんなくても良い、あんな化物の相手なんて誰だって嫌だからな、断ったからって戸籍と金はそのままお前の物、時間はある、ゆっくり考えて返事をしてくれ」
だが、間髪入れずに直ぐにクザンは返事を返す。
「……いや、是非やらせてほしい」
ジェラルドはニヤリと笑う。
「良いのか、安請け合いして、残った余生を静かに暮らすってのも十分にアリなんだぜ?」
「……この命、俺は何よりも大切な家族の為に使おうと思っていた、だが家族は先に逝き、使い道の無い命だけが残ってしまった」
クザンは拳を強く握りしめる。
「この使い道のない命で自分と同じ目に会いそうな人達を一人でも減らせるなら、喜んで俺は化物とでもなんとでも……戦おうと思う」
顎をさすりながらジェラルドは言う。
「真面目だねぇ、だがなんであんたが青鬼に成ったのか、少し解った気がするぜ、まぁこれで取引成立だ、宜しくな、花咲 九山」
「あぁ、宜しく頼む」
二人は硬い握手を交わす。
この握手を皮切りにクザンはこの一三班の仲間達と共に想像を絶する、熾烈な闘いに身を投じて行く事になるのであった。
作業員達は頭を吹き飛ばされた害獣の死体や被害状況のデータを手慣れた手付きで計測、調査している。
それを少し離れた所から見つめる二人の男女。
一人は長い黒髪に切れ長の目付き、修道女のような服装、そして特徴的な四本の腕。
彼女の名前は藤堂 真理亜、その多腕で忙しそうに書類への書き込みやメモの確認を行いながら隣の男に問いかける。
「で、間違いないですか?、宇津川局長?」
宇津川と呼ばれたスーツ姿の男は袖越しからでも解る逞しい腕を組み、その太い眉を潜め問いに答える。
「あぁ、間違いない、B998だ、まさかこんな所に潜んでいたとはな」
「二年前……でしたよね、こいつを取り逃がしたのは」
「あぁ、改造者九人がかりでなんとか瀕死の所まで追い込んだが……まんまと逃げられた」
「で、その後は消息がどうしても掴めず、我々、労働衛生管理局はB998を討伐したものとして処理してしまった……」
「刺の有る言い方だな、藤堂君」
クスリと笑いながら藤堂は返す。
「そんなつもりはございません、指令府と労働衛生管理局の関係を鑑みれば、私もその方が良かったと思っていますわ、局長」
宇津川は眉を更に潜ませる。
「下手に災害指定にされると管轄があのやる気のない指令府に渡される、それならいっそ、倒したと思ってたら生きてましたととぼけた方が都合が良かったのさ」
「ふふっ、だからわかっていますって」
小生意気な部下をやれやれといった様子で眺めながら宇津川は話題を代える。
「それにしても凄まじい力だな、一対一で武器も無しに過去には災害指定にされかけた害獣を倒すとは」
「どっちが化物か、解りませんよね」
「ぜひ、我々労管の指揮下に加わって貰いたいものだな」
藤堂は宇津川にその切れ長の眼の視線を向ける。
「おっしゃる通り、彼の持つ戦力は絶対に今後の労管に必要です、ですが今彼には……」
「戸籍登録がないんだろ? 問題ない、そんなものすぐにでも私が用意してやる、ジェラルドにも頼まれていたしな、それまで指令府の連中に青鬼の事はしっかり隠しておいてくれ」
「……承知しました」
真理亜は書類に目を向けながら宇津川には聞こえないようにそっと呟く。
「ふふっ、また、色々仕事が増えそうね……」
目を覚ますと見覚えのある灰色の天井、ちらつく蛍光灯、カーテンに囲まれたベッドの上、包帯でぐるぐる巻きにされた自身の体、自分はどこにいるのだろう?
ハナサキ クザンは混濁した記憶から現状を導き出すためぼやけた頭を必死で回転させていた。
「一体ここは……」
家族の死、未来の世界、異形の化け物、命懸けの死闘、何処までが夢だったのか、はたまた全部が夢だったのか、考えあぐねているその最中に右隣から声が聞こえてきた。
「おう! 起きたかっ! クザン」
その声の主が荒々しくカーテンを開ける。
「ジェラルド……」
「どうだ!? 体の調子は!」
クザンは自身の腹をまさぐる。
確かに槍で腹に風穴を空けられた筈だが、その傷は塞がっているようだ。
クザンは自身がもう普通の人間ではないことを強く自覚しながら返事をする。
「ああ……問題ない」
ジェラルドはヒュウと口笛を吹く。
「ぶははは! すげぇなっ! 大したもんだぜ! うちの部下にも見習って貰いたいもんだな! なっ! 猛」
そう言いながらクザンの左隣のカーテンを勢いよく開ける。
「ちっ! うるせぇよ! オッサン!」
そこにはクザン以上に包帯だらけでまるでミイラ男の様になった猛がいた。
枕元で桜が林檎を剥いている。
「猛、それ……大丈夫……なのか?」
「ギリギリ命に別状はねぇとよ、あんたのお陰だ、ありがとうな」
「あの後、一体どうなったんだ?」
「あんたが害獣の頭を吹っ飛ばした後、あんたも一緒にぶっ倒れて、その後多分、15分位か、救援がやって来て全員そのまま救助されたよ、あの場にいた奴は全員無事だ」
「よかった……」
「兄さん……一つ教えてくれねぇかい?」
「なんだ?」
「あんたが害獣と闘う前に行った……道標云々ってのはどう言うことだい?」
「行った通りだ……君が最初に逃がした二人が俺を急がせて、次に逃がした一人が俺を案内してくれたのさ……君がコストを無視して命懸けで逃がした、彼らのお陰で俺はギリギリで君の命を救えたんだ」
「へっ! こないだの当て付けのつもりかい? それは結果論さ、俺は撤退のタイミングを間違えたバカ野郎ってだけだ」
枕にばふっと頭を打ち付け猛はクザンから目を逸らす。
そんな猛をみて桜がクスクスと笑う。
「またまたー拗ねちゃってー、良いことしてんだから素直になりなさい?」
「いや、違ぇよっ!!」
「まぁそうよねぇ、私にあんなことほざいた数時間後に自分は一般人逃がすのに必死でこの様になりましたぁなんて口が裂けても言えないわよねぇ?」
「うるせモガァッ!?」
桜は反論しようとする猛の口に大きめに切った林檎を突っ込み黙らせる。
「クザン、ありがとうね、私だけでなくて兄の命まで救ってくれたこと、本当に感謝してる」
「とんでもない、自分の出来ることをしただけだ……ん?」
クザンはここでやっと時間の流れがおかしいことに気がつく。
「桜? 怪我はどうしたんだ?」
「今更? あなたね、自分が何日寝てたか解ってる? 一週間よ、一週間」
「一週間!? そんなにか! いや、それにしたって一週間であの怪我が治ったのか!?」
桜は呆れ顔で返す。
「あなた自分の事棚に上げてよくそんなこと言えるわね、私だって改造人間なんだから、そのぐらいで治るわよ?」
「そうなのか……本当によかった、それにしても、一週間も経ってしまったか……」
「ふふっ、なに? デートの予定でも有ったの?」
冗談めかして聞く桜、対してクザンは眉間にシワを寄せ額に手を当て極めて深刻そうな顔だ。
「あのぉ……どしたの? 大丈夫?」
「…………」
「もしも~し?」
クザンは重そうな口を開く。
「ここの入院費用、どうしたものか……どうにかして金を稼がねば……」
クザン以外の三人が顔を見合わせ、そして笑い出す。
「ぶはははっ、青鬼でも入院費用の心配とかするんだなッ!」
馬鹿笑いするジェラルドにクザンは食って掛かる。
「いやいやっ! 俺に入院費用を踏み倒せと? そんなのは絶対に許さん、そうだっ! 院長室はどこだ! 土下座してせめて皿洗いでもさせて貰って……」
「まてまてまて!」
ベッドから飛び起きようとしたクザンをジェラルドが押さえつける。
「落ち着け……深呼吸しろ、クザン熱くなるな、いいか、ちょっと俺に話をさせろ」
「あ……あぁ」
「いいか、害獣を討伐すると俺たちハンターは報償金がもらえるんだ、んで、前回の風の害獣の報償金だが、おまえに戸籍がなかったから俺と桜が倒したことにして代わりにもらっておいた、それをお前にやる」
そういってジェラルドは二枚の紙を渡す。
そこには討伐者の名前として緑野 桜、ジェラルド ペレスとそれぞれ記入され、報償金が30万と書き込まれている。
「これで金の心配はしなくて良いな、そしてもう一つ、一週間前に倒した雷の害獣の報奨金だ」
もう一枚の紙を渡されたクザンはその内容に驚く、報償金が80万であることではなく討伐者の名前に花咲 九山と記入されていることにだ。
「ジェラルド……これは……」
「そうだっ! 俺が特別なコネを使って戸籍をつくってもらったんだ! もうお前は金も戸籍もある立派な龍の錫杖の住人だ、腕輪も今俺が預かってる、だからもうしばらくおとなしく寝てろ、つーか俺が無理矢理入院させたんだから入院代位俺が立て替えてやるからよ」
「……すまない……なんと礼を言って良いか……良い言葉が見つからん」
クザンは、絞り出すような声で言う。
「ぶっはははは、気にするな、部下二人を救ってもらったんだからな、それに俺もボランティアでやった訳じゃねぇ、色々面倒見た代わりといってはなんだがな、一つ俺の頼みを聞いてほしい」
「何でもしよう」
「お? 言ったな、まぁ単刀直入に言おう、お前俺の部下になってくれないか?」
言葉の意味が解らず、クザンは聞き返す。
「……というと?」
「俺の率いる害獣討伐部隊第十三班でお前のその青鬼の力を発揮してほしい……と言えば解るか?」
「…………」
「まぁ、嫌なら別にやんなくても良い、あんな化物の相手なんて誰だって嫌だからな、断ったからって戸籍と金はそのままお前の物、時間はある、ゆっくり考えて返事をしてくれ」
だが、間髪入れずに直ぐにクザンは返事を返す。
「……いや、是非やらせてほしい」
ジェラルドはニヤリと笑う。
「良いのか、安請け合いして、残った余生を静かに暮らすってのも十分にアリなんだぜ?」
「……この命、俺は何よりも大切な家族の為に使おうと思っていた、だが家族は先に逝き、使い道の無い命だけが残ってしまった」
クザンは拳を強く握りしめる。
「この使い道のない命で自分と同じ目に会いそうな人達を一人でも減らせるなら、喜んで俺は化物とでもなんとでも……戦おうと思う」
顎をさすりながらジェラルドは言う。
「真面目だねぇ、だがなんであんたが青鬼に成ったのか、少し解った気がするぜ、まぁこれで取引成立だ、宜しくな、花咲 九山」
「あぁ、宜しく頼む」
二人は硬い握手を交わす。
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