鉄風雷火のフレームライダー ~少女たちの機影は遥か~

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戦闘記録 アンジェラとアナトリア

序:鋼の教えと燃える海:Ⅱ

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 MLメタルレイバーを駆るパイロット達には、戦場で遭遇したくない存在が二つある。
 一つは同数以上のML部隊。
 これは遭遇した場合に泥沼の戦いに引きずり込まれ、損耗率が高くなる可能性が高いということが原因で、仮に勝利できたとしても割に合わないからだ。
 もう一つはMFモビルフレーム
 これは単純に性能の差がはっきりしているというのが原因で、特に機動力に優れるチューニングが施された機体の場合、標準的なMLでは対抗できない可能性があるからだ。
 ただ、MFは基本的に単機で行動し、MLは複数機でチームを組むため、MFを駆るフレームライダーの腕次第では逆転の目はある。
 しかし。
「う、うお!? な、なんだよこいつ、何で……」
「シャーク3、ロスト!このライダー……強い!」
「囲め! 奴は“渡り鳥ツークフォーゲル”だ。まさか、あいつらの縄張りに入り込んでいたとは……。相手の機動力を潰せ!押し込まれるぞ!」
 その海域で起こった戦いは一方的な展開を見せており、早くも壊滅的な様相を呈していた。強襲を仕掛けたアンジェラとアナトリアは、通称「レイピア」と呼ばれる貫通力に優れた光学ライフルを用いて、瞬く間に、部隊の後衛についていた一機を海に沈めてみせた。
 その後も、その海上戦闘を想定したチューニングを生かし、まるで超一流のレーサーが決めるドリフト走行のような機動で、MLキラーヴァルの部隊に襲い掛かる。
 しかし、ML部隊も無抵抗ではなく、同じく海上戦闘に特化した足回りを生かし、アンジェラたちのMFの機動力を奪うべく包囲戦を仕掛けた。
 彼らの装備していたマシンガンは、MFの装甲を抜くには至らない嫌がらせ程度の威力しか持たないものだったが、足を止めるという目的を果たすには十分な性能を持っていた。
「この人たち、結構やるね。それなりに生き残ってきた人たちかな?」
 そんな目まぐるしく変わる状況と、装甲を叩き続けるマシンガンの音が響く中でも、アンジェラは平静さを崩すことなく、機体のセンサーアイが示す照準の制御に集中していた。
「感心している場合ではないわ。マシンガンは問題ないけれど、囲まれたらランチャーポッドで集中砲火を受ける。あれの威力は侮れない」
 アナトリアもまた、平静に相手の部隊が有する脅威を分析し、アンジェラの視覚映像へと飛ばし続ける。
「次は、右から接近して来るキラーヴァルを狙って。あれはマシンガンの後ろにパイルドライバーを隠してる。優先的に落として」
「了解だよ。その後は少し無茶するけど、良い?」
「ええ。あれでしょう?囲まれる前にやっちゃいましょうか。武装はいつでも行けるわ」
「有難う。それじゃあ……やりますか!」
 アンジェラは、意気込んだ声と共に照準を右側へと滑らせる。
 その先には一機のキラーヴァルが居り、背部ブースターを吹かしながら真っ直ぐに接近してくる様子が見えた。
 他とは明らかに違う動きを見せているその機体の右腕には、他に見られるようなマシンガンは握られておらず、代わりに鉄の箱のような物が装着されている。
「狙いは見えているよ。悪いけど、それは見逃せないね」
 滑らせた照準が、真っ直ぐにキラーヴァルのコックピットに収まる。同時に「レイピア」の銃口も相手を捉えた。
「じゃあね……。少しのお別れだ」
 瞬間、銃口が煌めき、鋭利な印象を受ける細い光線が射出された。間を置かず、それはキラーヴァルの胴体に吸い込まれるように突き刺さると、装甲を貫通して背部の動力源まで一瞬で貫いた。
「次っ!」
 数瞬遅れてから爆散したキラーヴァルを一瞥すると、アンジェラは次の標的へと照準を移した。

 相変わらず降り注ぐ弾の嵐に怯むことも引くことも無く、アンジェラたちの機体は邁進する。キラーヴァルのパイロット達もまた諦めることなく、足止めからの接近を続けている。
 そして。
「全機、俺が囮になる。ランチャーポッドで仕留めろ!」
「了解だ!」
 形勢の不利を悟ったキラーヴァル部隊のリーダーは、囮になるべく他よりも前へと出ていく。他の機体は、マシンガンを撃ちながらも、背部武装として装備されているロケットランチャーを準備し始めた。
 一方、その様子を見て取ったアンジェラとアナトリアは、秘かに微笑を浮かべた。
「アンジー!」
「出てきたね。やるよ、アナ!」
「ええ、行きなさいな!」
 そして、アンジェラは目の前に迫ってきていたキラーヴァルを真っ直ぐ見据えると、視覚情報の中に表示させた機体動作一覧から、補助ブースターの点火を選択。それに合わせて、機体各所に装備された補助ブースターが起動。点火の兆候を示した。
 その次の瞬間だった。
MPS多目的動力源エンジン、フルドライブ! 飛んで!」
 アンジェラの声と同時に、彼女の操作に従った機体が空へと跳躍するように飛び上がった。

 その突然の挙動に、キラーヴァルのパイロット達は唖然としていた。
 自分たちの狙いから外れるように空へと舞い上がったMFを見上げ、包囲を跳び越えていく様を見届ける。そして同時に、MFが補助ブースターの挙動を生かして急速に方向転換し、自分たちを照準していることに気が付く。
「!」
 MFからのロックオンによる警告のピープ音が響き渡り、パイロット達に回避を促す。しかし、誰も回避行動を取らなかった。いや、余りにも突然の出来事に、回避行動を取れなかったと言う方が正しいのだろう。
 そして、MFの腕部に装備されているライフル型武装二挺の銃口から、自分たちに向けて光が放たれた。

 その少し後。爆散したML達の炎で赤く染まる海を背景に、アンジェラたちは青い海の見える方向へと戻っていた。
「終わりね。護衛対象の輸送船団からお礼と、報酬の電文が来てるわ。また頼む、だそうよ」
「ふー……なかなか面倒な相手だった」
 アナトリアが送られてきた電文を読み上げると、最低限の操縦だけを行っていたアンジェラが大きく息を吐いた。
「でも予想より早く終わったから、本を読む暇は作れそう」
「良かったわね。まあ、今回の稼ぎで新しい物も頼めそうだし、新しい本も買う?」
「いいねぇ。是非そうしたいよ」
 そして、そのような事を楽しげに話しながら、戦闘海域を抜けていくのだった。
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