ひよっこ召喚師モフモフの霊獣に溺愛される

盛平

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バレットの不機嫌

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 フィンたちはジェシカとネローと別れ、王都に戻る事にした。リリーとフレイヤは一度父親の家に帰るそうだ。定期的に父親に顔を見せるのが冒険者になる条件らしい。リリーと父親の関係が良好なようで、フィンは安心した。

 フィンはブランと共に、城下町にある宿屋を目指した。フィンの兄であるバレットが、よく利用する宿屋だ。霊獣ブランが霊獣ドロップから連絡を受けたのだ。冒険者の仕事が片付いたら、いつもの宿屋に来てほしいと。

 どうやらドロップの契約者アレックスがフィンに頼み事をしたいようだ。アレックスはフィンがとてもお世話になっている冒険者だ。困っているのであれば、ぜひ力になりたい。

 フィンがいつもの宿屋ベンジの店に行くと、アレックスとドロップ、バレットが一階の食堂の席についていた。アレックスはフィンを目ざとく見つけると、ぶかっこうなウィンクをしてよこした。アレックスがフィンを呼んだ事は、バレットに内緒にしてくれという事だろう。

 フィンはさも今気がついたという風に、アレックスとバレットに手をふりながら近寄った。バレットは口をへの字にしていた。どうやら機嫌が悪いらしい。だがフィンの顔を見ると、途端に笑顔になった。フィンは目のはしで、アレックスがホッとため息をついているのを確認した。フィンはバレットに聞いた。

「どうしたの?バレット。怖い顔して」

 バレットはまた不機嫌に顔をしかめながら答えた。

「どうしたもこうしたもねぇよ!アレックスのバカがバルディのおっさんとヒデェ事やらかしたんだ」

 バルディとは、冒険者の依頼でフィンたちの雇い主になった元騎士団長の事だ。バルディは現国王の所業をなげき、新たな国王をたてようとしている過激派な男だ。フィンがアレックスを見ると、彼は困った笑顔で言った。

「いや何、バルディさんたちが国王軍にケンカをしかけて返り討ちにあってしまってな。それで俺が助けに行ったんだ」

 フィンは驚いてアレックスに聞いた。

「バルディさんと元騎士さんたちは無事だったの?!」
「ああ。何とか逃げのびたよ」

 アレックスの返事に、フィンはホッと息をついた。そんなフィンをバレットはにらんで言った。

「良かったなんて事あるか!アレックスの奴、国王軍を打ち負かしちまったんだ。そのウワサが冒険者の間に広まって、今じゃ水撃のアレックスなんて変なあだ名で呼ばれてんだ。何が水撃のアレックスだ、大道芸人みたいな名前つけられやがって!」
「すごいねアレックス。国王軍に勝っちゃったの?」

 アレックスは苦笑しながら答えた。

「俺は何もしてないよ。ドロップが助けてくれたんだ」
『エッヘン。オラがやったんだぞ』

 アレックスの肩に乗っているコツメカワウソの霊獣ドロップは、得意そうに言った。フィンはドロップにすごいねと言うと、ドロップは嬉しそうだった。

 だがこの話を聞いて、フィンも不安になった。結果はどうあれ、アレックスは霊獣の力で国王軍に反旗をひるがえしてしまったのだ。これから国王軍に目をつけられてしまうのではないだろうか。バレットもそれを危惧しているから機嫌が悪いのだろう。

 バレットは、お人好しで心優しいアレックスが傷つく事をとても恐れているのだ。バレットにとって、アレックスはとても大切な存在だ。バレットは幼い時大切な人たちを失ってしまった。だからアレックスを失う事がとても恐ろしいのだ。

 フィンは不安そうにアレックスを見た。アレックスはフィンを安心させるために笑顔で答えた。

「大丈夫だよフィン。ほとぼりがさめるまで、俺はしばらく王都から離れようと考えてる。だから王都から遠く離れた土地の依頼を受けようと思ってな。どうだ、フィンも一緒に行くか?」

 フィンは抱っこしているブランと顔を見合わせてから、大きくうなずいた。

 そうと決まればと、アレックスはフィンにビーフシチューと、ブランにサラダを頼んでくれた。しばらくしてアツアツのビーフシチューとサラダを持った、この宿屋の主人ベンジがやって来た。

 ベンジもバレットの不機嫌を気にしていたようで、フィンがやって来てバレットの機嫌がなおった事に安どしたようで、フィンのビーフシチューを大盛りにしてくれた。

 フィンはビーフシチューを食べながらアレックスに質問した。

「アレックス、どんな依頼なの?」
「ああ。王都から西に歩いて十日くらいのグラブという町からの依頼なんだが、何でも若い娘の行方不明が多発してるらしくてな」
「女の子たちが突然消えてしまうの?」
「いや、若い娘たちの居場所はわかっているんだ。グラブの町一体を治めている領主の侍女として召し抱えられた娘たちが消えてしまったんだと」
「じゃあ依頼主はその領主さんなの?」
「いいや。依頼主は行方不明になった娘たちの家族だ。領主は娘は仕事を放棄して逃げ出したと言っているんだと。しかし家族はそれでは納得しない、それで冒険者協会に依頼が来たんだ」
「ふうん。不思議な話だね」

 それまで黙ってエールのジョッキをかたむけていたバレットが、ジョッキをテーブルにドンと置いて言った。

「ここであれこれ詮索してもらちがあかねぇ。飯食ったらサッサと出発するぞ」

 バレットの言葉に、フィンはうなずいてビーフシチューをたいらげた。

 宿屋を出ると、バレットは自身の契約霊獣黒ヒョウのパンターを呼び出した。美しい黒ヒョウの霊獣は、フィンたち大所帯を見て嫌な顔をしたがしぶしぶ大きくなってフィンたちを乗せてくれた。フィンたちは空を飛び、グラブの町を目指した。


 

 
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