恐竜世界に転移した俺に懐いたちっちゃ可愛いドラゴンたちが最強だった

盛平

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ツノリュウの長老

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『トップ、大丈夫?もう痛くない?』

 母親が心配そうにトップの顔をのぞき込む。

『ありがとう、母ちゃん。もう平気!』

 トップと母親のやり取りを、父親は苦々しく見ている。

『母さんがいつもトップのケガを治していたら、トップの治癒魔法がいつまでたっても上達しないじゃないか』
『だけど貴方、トップが痛がっているのに可哀想じゃない』

 父親と母親が口論を始める。トップは困ったように両親を見上げていた。きっといつもの事なんだろう。

 俺とトップが困り顔で夫婦の口論を傍観していると、洞窟の中からのっそりと巨大なトリケラトプスがあらわれた。

『じいちゃん!』

 トップは嬉しそうに祖父にすり寄った。

『トップ。またヒト族のところに行ったのか?』
『・・・。うん。ねぇ、じいちゃん。お願いだよ。おいらをヒト族のいるところに行かせてよ。じいちゃん、いつも言ってるだろ?戦うには相手を知らなければならないって』
『うむ、その通りじゃ。じゃがそれだけなら、トップが連れてきたお客から話しを聞けばよいのではないかな?』

 トップの祖父は、おだやかな目を俺に向けた。


 トップの祖父はツノリュウの長老なのだそうだ。トップの祖父は俺を家に招いてくれた。

 洞窟内はとても広く、居心地が良かった。トップの母親は俺に果物をすすめてくれた。

 よくうれたりんごだ。そこで初めて俺はのどが渇いている事に気がついた。俺は夢中でりんごにかじりついた。

 俺がりんごを二つ食べてようやく落ち着いた頃、ツノリュウの長老はおごそかに言った。

『エイジ。孫のトップを助けてくれてありがとう』
「いいえ。俺はただ間に入っただけで、人間を倒したのはトップ自身です」
『なっ!言っただろ、じいちゃん!おいらはヒト族に勝つ事ができるくらいに強いんだぞ!』

 横からトップが嬉しそうに話し出す。長老はひとにらみしてトップを黙らせる。

『エイジ。聞いてもよいか?』
「はい」
『わしはツノリュウの長老として、ヒト族と対話を試みた事がある。だがヒト族には、わしの言葉は伝わらなかった。わしはヒト族の手から逃れるために、魔法を使ってしまった。だがエイジとは普通に会話ができる。何故だ?』
「はい。俺はこの世界のヒト族ではないのです」
『この世界ではないとな?』
「はい。俺は、ある事がきっかけでこの世界に来る事になったのですが、ここに連れて来てくれた方に、貴方たちリュウ族と会話ができるようにしてもらったんです。だから、俺の話しは、貴方たちのお役には立てないかと思います」

 長老は落胆したようにため息をついた。俺は慌てて付け足した。

「ですが、俺はヒト族の言葉もわかります。俺は貴方たちの気持ちを代弁する通訳になります」

 俺の提案に、トリケラトプス一家の顔が明るくなった。一番喜んだのはトップだ。

『なっ!エイジはいい奴だろ?なぁ、じいちゃん。エイジと一緒にヒト族の住処に行ってもいいだろ?』
『・・・。ダメじゃ』
『何でだよ!』
『トップ。お前はまだ治癒魔法も上手くできないひよっこだ。そんな者を外に出すわけには行かない』
『・・・』

 長老はきっと孫が心配で仕方ないのだろう。だがトップは不満顔だ。

 俺に治癒魔法が使えたら、トップと一緒に旅ができるのかな。俺がそう考えた瞬間、脳裏に声が響き渡った。

《できますよ!》

 この声は、女神さま。
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