恐竜世界に転移した俺に懐いたちっちゃ可愛いドラゴンたちが最強だった

兄

　長老からヒト族の街に行く許可が出てから、トップは自分の縄張りをゆっくり歩いて回っていた。俺もトップについて歩く。

　トップは長老の孫という立場なので、多くのツノリュウたちに声をかけられている。皆このヤンチャな跡取りが大好きなのだ。

　俺はカッコいい角竜たちを堪能していた。ふと、疑問に思っていた事を思い出し、トップに質問した。

「なぁ、トップ。以前、お前に兄さんがいると言っていたな？その兄さんはどこにいるんだ？」
『・・・。兄ちゃんは、ヒト族の街にいる』
「へぇ。トップの兄さんは街に行く許可が降りたんだな？」

　俺の前を歩いていたトップは、立ち止まって俺を振り向いた。

『ねぇ、エイジ。今から話す事、じいちゃんにも父ちゃんにも母ちゃんにも言わない？』
「？。ああ、言わないよ。男と男の約束だ」

　トップは嬉しそうに笑った。

『おいらの言う兄ちゃんは、本当の兄ちゃんじゃない。兄ちゃんはジュウキャクリュウなんだ』

　トップの話しでは、小さい頃に縄張りの外に出てしまったのだという。ジュウキャクリュウの縄張りに入ってしまったトップは、ジュウキャクリュウに噛み殺されても仕方ない状況だった。

　その時に助けてくれたのが兄ちゃんことアクラなのだそうだ。

　アクラはトップをツノリュウの縄張りまで案内してくれた。トップらアクラに懐いてしまい、二人は秘密の友達になったのだ。

　アクラはとても頭が良く、トップに色々な事を教えてくれた。アクラはヒト族に興味を持って、よくヒト族の街の探索に行っていたのだ。

　トップはアクラの話すヒト族の暮らしを目を輝かせて聞いていた。

　アクラは数年前に、ヒト族の街に行くといって旅に出て行った。それきり戻って来ないのだという。

　トップは前脚で器用にアクラの絵を描いた。かなり上手い。トップの兄アクラはラプトルなのだ。

　ラプトルは小型の肉食恐竜だ。とても頭が良かったという。

　トップは空を見上げ兄であるアクラを思い出すように言った。

『おいら、ヒト族の事を学びたい。だけど、それ以上に兄ちゃんに会いたい』
「ああ、トップ。俺と一緒にヒト族の所に行こう。そして、お前の兄さんを探そう」

　俺の言葉にトップは嬉しそうに笑った。