恐竜世界に転移した俺に懐いたちっちゃ可愛いドラゴンたちが最強だった

出発

　俺とトップは、長老とトップの両親にあいさつをして旅に出発した。

　俺はトップの背中に乗せてもらい、ヒト族の街を目指した。

　森を出ると、そこはリュウ族の縄張りではなくなる。かつてはリュウ族のものだったが、増えすぎたヒト族が頻繁にやって来る土地になったのだ。

　トップと俺はひたすら平地を走った。日が暮れてこの場所で野宿をする事にした。俺は枯れ木を集めて積み上げ、手のひらに火魔法を作り出した。

　火魔法は枯れ木に燃え移り、焚き火になった。

　どうやら俺は土魔法だけではなく、火魔法も水魔法も風魔法も使えるようだ。起こせる魔法はとてもわずかなものではあるが。

　トップは焚き火を見て不思議そうに言った。

『エイジ。何で火を燃やすんだ？』
「何でって、今夜はここで野宿をするから、野生動物がやって来ないように火を燃やすんだよ」
『野生動物って、オオカミやコヨーテの事？そんな奴らより、おいらの方が強いから心配するなよ』

　その通りなのだ。ツノリュウのトップはそこらの肉食獣よりもはるかに強い。では何故、焚き火をしたのか。

　俺は焚き火のぬくもりを感じたかったのかもしれない。火とは燃えれば山火事にもなりかねない危険なものだ。

　だが使い方を知れば便利なものでもある。食べ物を煮炊きしたり、害獣から身を守る事もできる。

　人間は恐竜や野生動物よりもはるかにだ弱な生き物だ。だがそのかわり、どんな生き物よりも頭がいい。

　人間はその賢さによって強い動物たちを従えているのだ。しかし俺は、トップに出会ってリュウ族たちは仲間思いの優しい者たちだという事を知った。

　俺はリュウ族とヒト族の間に入って、かけ橋にならなければならない。それがこの世界に来た俺の使命に感じられた。

　俺はトップに果物を作ってもらって夕食にした。トップは満腹になるとゴロリと横になった。焚き火に手を近づけていた俺は、夜風にぶるりと身体を震わせた。俺の動きに気づいたトップが寝ぼけまなこで言った。

『何だ、エイジ。寒いのか？おいらのお腹にくっつけばあったかいぞ？』

　俺はお言葉に甘えてトップのお腹に飛びついた。トップが寝息を立てるたびに俺の身体も上下する。

　俺はなんて幸せ者なのだ。夢にまで見たトリケラトプスのお腹の上で寝られるなんて。もう死んでもいい。いや、まだ死ぬわけにはいかない。

　俺はもっともっとたくさんの恐竜に出会いたいのだ。

　俺はゆっくりと眠りに落ちていった。