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夜の団らん2
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ようやく全員の食事が並びなごやかな夕食が始まる。
スカーは肉のかたまりにかぶりつくつき、トップは顔を果物まみれにしている。
ケロンは、海水を張ったカナダライに入りながら魚とイカを美味そうに食べている。
ジュエルは器にもった、カットされた果物を上品に食べていた。
俺は自作のスープをスプーンでひとさじ食べる。美味しい。夜になって気温が下がり、身体が冷えていたのだろう。
ショルダーバッグから街で購入したパンを取り出してかじる。固めなパンだが、スープにひたして食べるとちょうどいい。
俺はあらためて自分の仲間を見つめた。トップ、スカー、ケロン、ジュエル。一人でこの世界にやって来た俺にできた大切な存在だ。
満腹になってから皆眠りについた。俺はショルダーバッグから毛布を取り出して身にまとい、バッグを枕にして仰向けに寝転んだ。見上げた夜空にはたくさんの星が輝いていた。
ケロンはカナダライの中で眠っている。
トップもうずくまってプウプウ鼻息を鳴らしながら寝ている。ジュエルはトップの背中に止まって寝ていた。
どうやらスカーは目をつむっているだけで起きているようだった。俺はスカーに声をかけた。
「スカー、起きてるか?」
『・・・。何だ、エイジ』
「ちょっと話していいか?」
『ああ、』
「俺、ケロンとジュエルの魔法を見てすごく驚いたんだ。俺が魔法を練習した時、ちっとも上達しないで悩んでいたけど、ケロンとジュエルは、まるで息をするみたいに魔法を使いこなしていた」
『・・・。リュウ族は、ヒト族よりも魔力が膨大だからな。使い方を学べば、よほどのバカじゃないかぎり魔法は使いこなせる』
「それじゃあ、何でリュウ族は、ヒト族のいいなりになるんだ?俺から見るに、リュウ族はヒト族よりもはるかに強いじゃないか」
俺はずっと疑問に思っていた。この世界では、リュウ族は労働力としてヒト族に使役されている。
もしリュウ族が嫌ならば、雇い主のヒト族を魔法で倒して逃げればいいのではないかと考えてしまう。
スカーはしばらく経ってから、口を開いた。
『・・・。簡単に言ってしまえは、リュウ族は単純バカなんだよ。それに比べて、ヒト族は魔力が弱いくせに狡猾だ。単純なリュウ族なんかすぐに丸め込める。エイジ、リュウ族の寿命はどのくらいかわかるか?』
スカーの質問に、俺はううんと考える。恐竜は種族によって寿命の長さがだいぶ違う。小型の恐竜は短命だし、大型の恐竜は三十年ほどだろうか。
「よくわからないけど、三十年くらい?」
『いいや。俺たちリュウ族の寿命は三百年ほどだ』
「三百年?!」
『ああ。ケガや病気で死ぬのは別として、何事もなけりゃあ三百年は生きる。そのせいなのか知らんが、リュウ族はとてものん気だ。つがいが一生のうちに生む卵はせいぜい一つか二つ』
「えっ、それじゃあ」
『俺たちリュウ族は、ゆるやかな絶滅の道をたどっている。リュウ族は子供が少ないから、種の違うリュウ族も子供は大切にする。ヒト族は、リュウ族の事情をある程度知っているのだろう。お前たちの仲間を殺すと言われれば、リュウ族は大人しくいう事を聞くだろう』
「そんな、びどい」
『ひどくもねぇよ。それが世の中ってもんだ』
それきりスカーは黙ってしまった。きっと眠ってしまったのだろう。
俺はぼんやりと夜空を見上げていた。俺はヒト族だがリュウ族と会話ができる。ヒト族とリュウ族の架け橋になれるのではないだろうか。
スカーは肉のかたまりにかぶりつくつき、トップは顔を果物まみれにしている。
ケロンは、海水を張ったカナダライに入りながら魚とイカを美味そうに食べている。
ジュエルは器にもった、カットされた果物を上品に食べていた。
俺は自作のスープをスプーンでひとさじ食べる。美味しい。夜になって気温が下がり、身体が冷えていたのだろう。
ショルダーバッグから街で購入したパンを取り出してかじる。固めなパンだが、スープにひたして食べるとちょうどいい。
俺はあらためて自分の仲間を見つめた。トップ、スカー、ケロン、ジュエル。一人でこの世界にやって来た俺にできた大切な存在だ。
満腹になってから皆眠りについた。俺はショルダーバッグから毛布を取り出して身にまとい、バッグを枕にして仰向けに寝転んだ。見上げた夜空にはたくさんの星が輝いていた。
ケロンはカナダライの中で眠っている。
トップもうずくまってプウプウ鼻息を鳴らしながら寝ている。ジュエルはトップの背中に止まって寝ていた。
どうやらスカーは目をつむっているだけで起きているようだった。俺はスカーに声をかけた。
「スカー、起きてるか?」
『・・・。何だ、エイジ』
「ちょっと話していいか?」
『ああ、』
「俺、ケロンとジュエルの魔法を見てすごく驚いたんだ。俺が魔法を練習した時、ちっとも上達しないで悩んでいたけど、ケロンとジュエルは、まるで息をするみたいに魔法を使いこなしていた」
『・・・。リュウ族は、ヒト族よりも魔力が膨大だからな。使い方を学べば、よほどのバカじゃないかぎり魔法は使いこなせる』
「それじゃあ、何でリュウ族は、ヒト族のいいなりになるんだ?俺から見るに、リュウ族はヒト族よりもはるかに強いじゃないか」
俺はずっと疑問に思っていた。この世界では、リュウ族は労働力としてヒト族に使役されている。
もしリュウ族が嫌ならば、雇い主のヒト族を魔法で倒して逃げればいいのではないかと考えてしまう。
スカーはしばらく経ってから、口を開いた。
『・・・。簡単に言ってしまえは、リュウ族は単純バカなんだよ。それに比べて、ヒト族は魔力が弱いくせに狡猾だ。単純なリュウ族なんかすぐに丸め込める。エイジ、リュウ族の寿命はどのくらいかわかるか?』
スカーの質問に、俺はううんと考える。恐竜は種族によって寿命の長さがだいぶ違う。小型の恐竜は短命だし、大型の恐竜は三十年ほどだろうか。
「よくわからないけど、三十年くらい?」
『いいや。俺たちリュウ族の寿命は三百年ほどだ』
「三百年?!」
『ああ。ケガや病気で死ぬのは別として、何事もなけりゃあ三百年は生きる。そのせいなのか知らんが、リュウ族はとてものん気だ。つがいが一生のうちに生む卵はせいぜい一つか二つ』
「えっ、それじゃあ」
『俺たちリュウ族は、ゆるやかな絶滅の道をたどっている。リュウ族は子供が少ないから、種の違うリュウ族も子供は大切にする。ヒト族は、リュウ族の事情をある程度知っているのだろう。お前たちの仲間を殺すと言われれば、リュウ族は大人しくいう事を聞くだろう』
「そんな、びどい」
『ひどくもねぇよ。それが世の中ってもんだ』
それきりスカーは黙ってしまった。きっと眠ってしまったのだろう。
俺はぼんやりと夜空を見上げていた。俺はヒト族だがリュウ族と会話ができる。ヒト族とリュウ族の架け橋になれるのではないだろうか。
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