前世で百人殺した殺し屋の俺は地獄行きを回避するため現世で百人助けます

盛平

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作戦

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 エッラは自分の部屋にカイルとサイラスを泊めようと提案してくれた。エッラは弟のドーグの部屋で寝るから心配ないというのだ。

 だがカイルはそれに反対した。族長の娘であるエッラの部屋にガンドル国の男二人がいたら、もうしひらきができない。

 問答の結果、カイルとサイラスはドーグの部屋で休ませてもらう事になった。ドーグの部屋もそれなりに大きかったが、エッラの部屋との差はれきぜんだった。トーノマ族の中で、族長の長子がどれほどの存在かわかるようだ。

 カイルとサイラスは二人で狭いベッドに入ったが、狭い狭いと押し合いが続いた。何とか自分の場所を確保してから、サイラスがカイルに聞いた。

「なぁ、師匠。これからどうするんだ?俺たちが仲裁に入るったって、聞き入れるような奴らじゃなさそうだぜ?」
「ああ。まずはお互いの言い分と真意を確認しなければな。明日トーノマ族の奴らの話しと、領主の話しを聞きに行く」
「ええっ?トーノマの奴らが俺たちに話してくれるわけないだろ?俺たちは嫌われてるガンドル人なんだぜ?」
「サイラス、うるさい。俺に考えがあるからもう寝ろ」

 サイラスはチェッと言って、背中を向けてしまった。カイルは天井を見上げながらため息をついた。カイルの足元にはレッドアイが丸くなって眠っていた。

 翌日エッラが用意した朝食を食べた後、カイルはドーグに案内を頼みトーノマ自治区内を歩く事にした。

 頼まれたドーグは困惑顔だ。自治区内がピリピリしている中で、ガンドル人のカイルたちにウロウロされたくないのだろう。カイルはサイラスに言った。

「サイラス、変身魔法の応用だ。俺のやる通りにしろ」

 カイルはサイラスにそれだけ言うと、呪文を唱えた。すると、カイルの白い肌が褐色に変化した。カイルは黒い髪と瞳なので、肌の色が褐色に変わると、トーノマの人々と区別がつかなくなった。サイラスは指をパチンと鳴らしてから、呪文を唱えた。

 サイラスの金髪の髪と青い瞳は黒くなり、白い肌も褐色になった。それを見たエッラとドーグは驚きの声をあげた。


 カイルたちはトーノマ族の集会所に足を運んだ。ここでの近頃の議題は、いかにしてエッラとガンドル人の婚約を解消させるかだ。穏健派と強硬派がけんけんがくがくの話し合いをしていた。

 その最中に、ドーグがカイルたちを連れて来た。前に立ってげきを飛ばしていた若い男がドーグをギロリとにらんで言った。

「ドーグ、誰だそいつらは?」
「モンス、父上が呼んだんだ。国境近くのヨーラから来たサイラスとカイルだ」

 ドーグは事前に打ち合わせをしていた話しをした。トーノマ族は自治区にいる人々がすべてではない。ガンドル国の国境の外にもいるのだ。カイルたちはそこから来たトーノマ族という事になっている。

 ドーグは若い男をモンスと呼んだ。エッラの元婚約者だ。モンスはカイルたちを疑わしそうににらんだ。それきり、カイルたちに興味を失ったようで、ドーグに視線を戻して言った。

「ドーグ、エッラは大人しくしているのか?」
「ああ、可哀想に毎日泣いて暮らしてるよ。モンスが姉ちゃんを殴ったからだ!」
「ふんっ、当然だ。俺はエッラの夫になる男なんだからな」

 モンスはそれだけ言うと、ドーグを無視して集会所にいる男たちに叫んだ。

「この前届いた領主からの手紙には、もうしばらく時間がほしいと書いてあった。だが俺たちは充分待った。もう武力行使に踏み切る時だ!」

 トーノマの男たちは、ワァッとモンスの言葉に同調した。カイルはサイラスとドーグに目で合図して集会所から出た。

 もはや一刻のゆうよもなさそうだ。モンスは近々領主の屋敷に殴り込みに行くに違いない。そして憎き恋敵のトーマスを殺そうとするはずだ。

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