前世で百人殺した殺し屋の俺は地獄行きを回避するため現世で百人助けます

盛平

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憎む相手を殺すという事

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 レベッカは疲れを見せる事なく剣をくり出し続けた。次第にサイモンが押され気味になる。サイモンはカイルやサイラスに比べれば、魔法も剣の技術もたいした事はない。

 ただ自分より弱い相手を吟味して殺すのだ。この戦いの場合、狭い室内、動かしづらい長い剣、封じられた魔法、明らかにサイモンが不利だ。サイモンは次第に焦りはじめたようだ。

 その一瞬のすきをついて、レベッカは間合いをつめて、サイモンの足をけった。サイモンは無様にあお向けに倒れた。レベッカはすかさず、サイモンの胸を足で踏みつけ動けなくした。手には剣を高々とかかげ、今にもサイモンの首に突き刺そうとしていた。そこでサイモンが泣き言を叫んだ。

「何をしている!カイル、サイラス、ボスである俺を助けろ!」

 カイルとサイラスは顔を見合わせてしまった。カイルは苦笑しながらサイモンに答えた。

「悪いなサイモン。俺は生まれ変わって新たな人生を歩んでいるんだ。ブラックスコーピオンにいたのは前世の事だ。現世の俺には関係ない」

 サイラスも笑いをかみ殺しながら答えた。

「俺は今日、ブラックスコーピオンを除名されたんだ。だからアンタはボスでも何でもねぇ、ただの無様なオッサンだ」

 サイモンは命の危機に悲鳴をあげた。だがいくら待っても、レベッカの剣はサイモンを刺す事はなかった。カイルがレベッカを見ると、彼女はブルブルと震えていた。

 カイルはやはりな、と思った。いくら殺したいほど憎んでいる相手だとて、簡単に人の命を奪えるはずがない。それにレベッカは家族の愛情を沢山受けて育った娘なのだ。そんなレベッカに人を殺す事は不可能だったのだ。

 青ざめていたサイモンの顔に、余裕の表情が浮かんだ。サイモンはニヤリと笑うと、口をモゴモゴ動かしてから、プッと何かを吹き出した。

 レベッカの側にいたサイラスが、すかさず剣でそれをはじき返す。それは小さな針だった。サイモンはレベッカを倒すために、口から毒針を吐いたのだ。だが毒針はサイラスの剣に返され、自身の胸に突き刺さった。サイモンはギャアッと声をあげた。サイラスが面倒くさそうにサイモンに言う。

「慌てるなよ、サイモン。毒針の解毒剤は自分で持ってんだろ?」

 サイラスは叫び声をあげるサイモンから、剣を振り上げたまま動かないレベッカに視線を向けた。彼女は泣いていた。口をギュッと閉じたまま、静かに。

 サイラスはレベッカに近づき、ゆっくりと彼女の剣を取り上げると、片手て抱き寄せて言った。

「もう分かっただろ?お前には人は殺せねぇ」

 レベッカは悔しそうにサイラスを見上げてから、顔をサイラスの胸に押し付けて泣き叫んだ。

「何でだよ?!何で!お父さまを殺した憎い奴なのに!何で殺せないんだよ!」

 サイラスは震えて泣いているレベッカを抱きしめながら答えた。

「それはな、おやじさんが止めだんだ。レベッカに人を殺させたくないってな」

 レベッカは号泣した。サイラスはジッと彼女を抱きしめていた。カイルは頃合いをみて空間魔法の出入り口を作り、サイラスとレベッカ、レッドアイを空間の出入り口に入るよううながした。

 最後にカイルは、ぼう然としているサイモンを一べつしてから空間の出入り口に入った。


 
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