究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平

文字の大きさ
59 / 212

黒髪の人々

しおりを挟む
「黒い髪、黒い瞳の者たちはたくさんいる。じゃが、純粋に黒髪、黒い瞳の者たちは少ない。何故なら彼らは異国人だからじゃ」
「・・・。異国人」

 老人はちらりとパティを見てから言葉を続けた。

「その者たちは、このグルニア国からはるか東にあるパンドールという国の者たちじゃ」
「では、パンドール国に行けば、私と同じような人たちがたくさんいるんですね?!」

 嬉しそうなパティに対し、老人はうつむいて小さな声で答えた。

「わしは数百年グルニア国を見てきた。グルニア国は、パンドール国の技術や特産物を欲していた。グルニア国とパンドール国は百年前から和平協定を結んでいた。じゃがグルニア国は大国、パンドール国は小国じゃった。この国の王グルニア十一世は、パンドール国に何くせをつけ、戦争が始まった」
「!」

 老人の言葉に、パティはのどをつまらせた。老人はパティが落ち着くのを待ってから話しを続けた。

「およそ二十年前の事じゃ。なぁ、娘さん。お前さんは、今十五歳だといったな?自分を捨てた親御さんをうらんどる事じゃろう。だが親御さんは仕方なかったのじゃ。戦争に負けた多くのパンドール国の者たちが捕虜としてグルニア国にやって来た。彼らには人権などなく、捕虜とは名ばかりの奴隷としてあつかわれた。娘さんの親御さんは、お前さんを守るために王都から遠く離れた小さな村にお前さんを預けたんだ」

 老人はそれきりだまってしまった。パティの頭の中は、グルグルと色々な事がうずまいていた。

 パティの両親は、捕虜としてパンドール国から連れてこられた。そこでパティを産み、奴隷になる事を拒んで逃げたのだ。

 パティをドミノ村の教会にたくし、グルニア国を出ようとした。パティの両親がいまだグルニア国にいるのか、パンドール国にいるのかわからなかった。

 ただ一つだけはっきりしている事があった。パティは生きているうちに、両親と会える事はまず無いだろう。

 覚悟していた事なのに、パティにはその事がとても悲しかった。マックスたちは心配そうにパティにすり寄った。パティは安心させるように友達を優しく撫でた。

「おじいさん。お話してくれてありがとうございました。私、心のどこかで両親に会えるんじゃないかって思っていたんです。だけど、それは難しいと改めて実感しました」
「娘さん、・・・。いや、なぐさめの言葉など何にもならんな」
「ええ。私には肉親はいないけど、育ての親のジョナサン神父さまとチコリおばあちゃんがいます。そしてこのどこかの空の下で、私の事を家族だと言ってくれる冒険者たちがいます。それに、」

 パティは言葉を切ってから、マックスとチャーミーを抱きしめて、肩に乗ったピンキーに頬ずりをして、膝の上に乗っているアクアの甲羅を優しく撫でた。

「私には、私の事をこんなにも大切に思ってくれるお友達がるいるんです。さびしくなんてないわ」

 老人は一瞬驚いた顔をしてから、柔らかに微笑んだ。

 しばらくして、パティたちと老人は別れを告げた。老人はハマイの町に向かい、パティたちは王都を目指して歩き出した。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...