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奇妙な親子
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パティが驚いて声のした方に振り向くと、そこには小さな女の子がいた。十歳くらいだろうか。黒い髪に黒い瞳の、驚くほど可愛らしい女の子だった。
パティが女の子に見とれてぼうっとしていると、女の子は鋭い声で言った。
「店主、そのペンダントの宝石はクリスタルではないか。金貨十枚などと笑わせる。せいぜい銅貨十枚といったところだろう」
「何だこのガキ!営業妨害しやがって!どっか行け!」
店主はにこやかな表情から怖い顔になって女の子をいかくしようとした。女の子は店主など眼中にないようで、パティに振り向いてにこやかな笑顔を浮かべた。
「娘、ダイヤモンドを見た事がないのだな?これがダイヤだ」
女の子がパティの目の前にスッと右手を差し出す。彼女の中指にはキラキラと輝く大きな宝石をつけた指輪がはまっていた。
「わぁ、綺麗」
「そうであろう。お前はこの店の店主にだまされるところであったのだぞ?」
「はぁ、そうだったんですか。ありがとうございます」
「うむ。わたくしはお前を助けた。だから今度はお前がわたくしを助けてはくれぬか?」
どうやらこの女の子は困っているらしい。パティは女の子の身なりを観察した。彼女はとてもよいドレスを着て、イヤリングやネックレスや指輪など、たくさんの宝飾品を身につけている。
どうやらいいところの令嬢のようだ。パティの冒険者魂に火がついた。困っている人を放ってはおけないのだ。
「どうしたんですか?私にできる事なら何でも言ってください」
「うむ、実は親とはぐれてな。難儀していたところだ」
この女の子は迷子なのだ。こんな身なりが良く金目の物をジャラジャラと身につけていては、すぐに悪い奴に狙われてしまうだろう。パティはうなずいて女の子の小さな手を取って歩き出した。背後に、二度と来るなと店主の怒声を受けながら。
「娘、お前は旅姿をしているが、旅人なのか?」
「いいえ、私は冒険者です。依頼を終えてこれから王都に帰るところです」
「ほう、若い娘なのにたいしたものだな」
女の子はパティよりも小さいのに、ずっと年上のような表情で言った。パティは、ませた子供だなと苦笑しながら、女の子が母親とはぐれたであろう場所まで歩いた。
「アンジェさま!」
突然、商店街の道で大声を出す者がいた。その者は女性で、誰かを探しているようだった。パティと手をつないでいる女の子が嬉しそうな声をあげた。
「おお、お母さまだ」
そこでパティは少し変だな、と思った。街中で大声を出しているのが女の子の母親ならば、なぜ自分の娘を敬称で呼ぶのだろうか。
人だかりの中から、一人の女性が飛び出してきた。その女性を見て、パティはハッと息を飲んだ。驚くほど美しい女性だったからだ。
長い黒髪に、大きく美しい黒い瞳、くちびるはバラのように赤く、走っていたためか頬もピンク色に上気していた。
美しい女性は女の子をみとめると、目に涙を浮かべながらかけよった。
「アンジェさま!おけがはございませんか?!」
「大丈夫だ。そんなに慌てるでない」
「申し訳ありません。アンジェさまを見失うなど、大失態にございます」
そこで美しい女性は初めてパティに気づいたようだ。
「アンジェさま。この方は?」
「うむ、宝石店でだまされそうになっていたところを助けてやったのだ」
「まぁ」
パティは何となく察した。この二人は親子ではなく主従関係にあるのだ。だが何らかの理由で親子のふりをしているのだ。
パティが女の子に見とれてぼうっとしていると、女の子は鋭い声で言った。
「店主、そのペンダントの宝石はクリスタルではないか。金貨十枚などと笑わせる。せいぜい銅貨十枚といったところだろう」
「何だこのガキ!営業妨害しやがって!どっか行け!」
店主はにこやかな表情から怖い顔になって女の子をいかくしようとした。女の子は店主など眼中にないようで、パティに振り向いてにこやかな笑顔を浮かべた。
「娘、ダイヤモンドを見た事がないのだな?これがダイヤだ」
女の子がパティの目の前にスッと右手を差し出す。彼女の中指にはキラキラと輝く大きな宝石をつけた指輪がはまっていた。
「わぁ、綺麗」
「そうであろう。お前はこの店の店主にだまされるところであったのだぞ?」
「はぁ、そうだったんですか。ありがとうございます」
「うむ。わたくしはお前を助けた。だから今度はお前がわたくしを助けてはくれぬか?」
どうやらこの女の子は困っているらしい。パティは女の子の身なりを観察した。彼女はとてもよいドレスを着て、イヤリングやネックレスや指輪など、たくさんの宝飾品を身につけている。
どうやらいいところの令嬢のようだ。パティの冒険者魂に火がついた。困っている人を放ってはおけないのだ。
「どうしたんですか?私にできる事なら何でも言ってください」
「うむ、実は親とはぐれてな。難儀していたところだ」
この女の子は迷子なのだ。こんな身なりが良く金目の物をジャラジャラと身につけていては、すぐに悪い奴に狙われてしまうだろう。パティはうなずいて女の子の小さな手を取って歩き出した。背後に、二度と来るなと店主の怒声を受けながら。
「娘、お前は旅姿をしているが、旅人なのか?」
「いいえ、私は冒険者です。依頼を終えてこれから王都に帰るところです」
「ほう、若い娘なのにたいしたものだな」
女の子はパティよりも小さいのに、ずっと年上のような表情で言った。パティは、ませた子供だなと苦笑しながら、女の子が母親とはぐれたであろう場所まで歩いた。
「アンジェさま!」
突然、商店街の道で大声を出す者がいた。その者は女性で、誰かを探しているようだった。パティと手をつないでいる女の子が嬉しそうな声をあげた。
「おお、お母さまだ」
そこでパティは少し変だな、と思った。街中で大声を出しているのが女の子の母親ならば、なぜ自分の娘を敬称で呼ぶのだろうか。
人だかりの中から、一人の女性が飛び出してきた。その女性を見て、パティはハッと息を飲んだ。驚くほど美しい女性だったからだ。
長い黒髪に、大きく美しい黒い瞳、くちびるはバラのように赤く、走っていたためか頬もピンク色に上気していた。
美しい女性は女の子をみとめると、目に涙を浮かべながらかけよった。
「アンジェさま!おけがはございませんか?!」
「大丈夫だ。そんなに慌てるでない」
「申し訳ありません。アンジェさまを見失うなど、大失態にございます」
そこで美しい女性は初めてパティに気づいたようだ。
「アンジェさま。この方は?」
「うむ、宝石店でだまされそうになっていたところを助けてやったのだ」
「まぁ」
パティは何となく察した。この二人は親子ではなく主従関係にあるのだ。だが何らかの理由で親子のふりをしているのだ。
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