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ドムとアクア2
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ドムが見張りの横に立ってのぞき込むと、見張りの男は完全に伸びていた。アクアが見張りを一べつすると、驚いた事に見張りの頭以外の胴体がすべて氷でおおわれてしまった。
いわば氷の牢獄だ。見張りが意識を取り戻し、《アンチ魔法》を発動させれば氷の牢獄は溶けてしまうだろう。だが少しでも足止めにはなるはずだ。
ドムがドアノブをひねってドアを開けようとするが、カギがかかっていた。ドムは思わず舌打ちをした。いつもは見張りがカギを開けてくれる。だがカギは見張りのポケットの中だ。
カギは見張りごと氷の牢獄の中だ。ドムがどうしようかと焦っていると、アクアがププと言った。すると水攻撃魔法が発動し、ドアのカギを破壊してしまった。
ドムはアクアに礼を言って室内に入った。部屋の中の少女たちは、恐怖の面持ちでドムを見ていた。無理もない、ドアの外で大きな音がしたのだ。何があったのか気になるはずだ。
「いやぁ、見張りの人が足を滑らせてドアにぶつかったんですよ。大きな音をさせてすみません。さぁ、皆さんお食事を配りますよ」
ドムが笑顔で声をかけても、少女たちは近寄ってこなかった。ドムは途方に暮れながらパティの言葉を思い出した。
「この中にオリアの町出身の娘さんはいますか?」
十一人いる娘の一人が、ギクリと身体を震わせた。きっとあの娘だろう。ドムは彼女を怖がらせないように一定の距離を取りながら声をかけた。
「お嬢さん。昨日パティという娘さんが貴女に声をかけたでしょう?パティはね、貴女たちを助けに来た冒険者なんです」
それまで怯えた目をしていた娘にキラリと光がやどった。ドムはうなずいて言葉を続けた。
「冒険者パティは、私たちも助けると約束してくれました。私はフロンの町から連れてこられた料理人です。お嬢さん、ここから脱出するために協力してくれませんか?」
オリアの町の娘は強い表情でうなずき、スクッと立ち上がって言った。
「皆、聞いて。この人の言っている事は本当だと思う。昨日女の子が私に声をかけたわ。黒髪で黒い瞳の女の子、とても綺麗な子だったわ。それにね、その子の目はすごく澄んでいたの。私昨日の女の子とこの人を信じるわ。皆も協力してくれない?」
オリアの町の娘の声かけに、残りの十人の少女たちも立ち上がった。ドムはうなずいて少女たちに部屋の中央に集まるように言った。
ポケットから顔を出したアクアがプクプクと言った。すると、部屋いっぱいに水防御ドームが出現した。ドームはドムたちを包み守ってくれているのだ。
いわば氷の牢獄だ。見張りが意識を取り戻し、《アンチ魔法》を発動させれば氷の牢獄は溶けてしまうだろう。だが少しでも足止めにはなるはずだ。
ドムがドアノブをひねってドアを開けようとするが、カギがかかっていた。ドムは思わず舌打ちをした。いつもは見張りがカギを開けてくれる。だがカギは見張りのポケットの中だ。
カギは見張りごと氷の牢獄の中だ。ドムがどうしようかと焦っていると、アクアがププと言った。すると水攻撃魔法が発動し、ドアのカギを破壊してしまった。
ドムはアクアに礼を言って室内に入った。部屋の中の少女たちは、恐怖の面持ちでドムを見ていた。無理もない、ドアの外で大きな音がしたのだ。何があったのか気になるはずだ。
「いやぁ、見張りの人が足を滑らせてドアにぶつかったんですよ。大きな音をさせてすみません。さぁ、皆さんお食事を配りますよ」
ドムが笑顔で声をかけても、少女たちは近寄ってこなかった。ドムは途方に暮れながらパティの言葉を思い出した。
「この中にオリアの町出身の娘さんはいますか?」
十一人いる娘の一人が、ギクリと身体を震わせた。きっとあの娘だろう。ドムは彼女を怖がらせないように一定の距離を取りながら声をかけた。
「お嬢さん。昨日パティという娘さんが貴女に声をかけたでしょう?パティはね、貴女たちを助けに来た冒険者なんです」
それまで怯えた目をしていた娘にキラリと光がやどった。ドムはうなずいて言葉を続けた。
「冒険者パティは、私たちも助けると約束してくれました。私はフロンの町から連れてこられた料理人です。お嬢さん、ここから脱出するために協力してくれませんか?」
オリアの町の娘は強い表情でうなずき、スクッと立ち上がって言った。
「皆、聞いて。この人の言っている事は本当だと思う。昨日女の子が私に声をかけたわ。黒髪で黒い瞳の女の子、とても綺麗な子だったわ。それにね、その子の目はすごく澄んでいたの。私昨日の女の子とこの人を信じるわ。皆も協力してくれない?」
オリアの町の娘の声かけに、残りの十人の少女たちも立ち上がった。ドムはうなずいて少女たちに部屋の中央に集まるように言った。
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