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盛平

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ノックスとの約束

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 あかりはグリフたちと焚き火を囲んでいたが、しばらくしてから一人で席を立った。グリフが心配してあかりに聞く。

「メリッサ、どこに行くんだ。一人じゃ危ない」

 あかりは少し怖い顔を作ってグリフに言った。

「レディはたまに一人になりたい時があるの。ほっといて」
「何だ便所か、迷子になるなよ」
「グリフのバカ!デリカシーなさすぎ!」

 あかりは一人でその場を離れた。ティグリスとグラキエースもあかりに着いていくと言ったが、あかりは二人にここにいてと言い聞かせた。

 あかりは一人森の中を歩いていく。日は大分傾いて、辺りは暗くなってきた。あかりは森の中で声を出した。

「狼さん、出てきて」

 あかりの言葉にガサリと草分ける音が聞こえた。あかりが音の方に振り向くと、そこには大きくて真っ黒な狼がいた。グリフの契約霊獣だ。あかりは霊獣に言った。

「狼さん、さっきは助けてくれてありがとう」
『俺はグリフの飼い主だからな、守ったペットの側にたまたまお前がいただけだ、気にする事はない』

 あかりは少し笑ってから言った。

「私はメリッサ、狼さんは」
『俺の名はノックス』
「ノックスはグリフの事が大好きなのね?グリフを心配してすごく怒ってた」
『別にグリフの事が好きな訳じゃない。俺は死にかけたグリフを拾ったのだ。拾ってしまった命は最後まで面倒を見なければいけないと考えたからだ』
「ノックスがグリフと会った時、グリフは死にかけていたの?」
『ああ、大ケガをして、俺が治癒魔法を施さなければ確実に死んでいた。俺はグリフを憐れに思った。人間は、霊獣に比べればとてもわずかな寿命だ。それなのにグリフを見つけた時、グリフは早く死にたいと言っていた。俺はこのままグリフを死なせたくなかった』

 あかりはノックスの話をジッと聞いていた。ノックスは話を続ける。

『俺がグリフを拾っても、グリフは人形みたいに感情がなくて、瞳はガラス玉みたいだった。俺はグリフに生きる喜びを感じて、幸せな気持ちで死を迎えてほしいと思っていた。だが無感情なグリフに変化が起きた。それはメリッサ、お前を見つけてからだ。メリッサを見つけた途端、グリフは目に見えて生き生きするようになった。メリッサ、オヤジに付きまとわれて嫌だと思うが、どうかグリフの側にいてやってくれないか?』

 メリッサはノックスに微笑んで答えた。

「ノックス、私グリフの事好きよ。彼は不器用で優しくて、そして悲しい人だわ。私と同じよ」

 あかりはグリフに出会って強く思う事があった。あかりとグリフは同じなのだ。心から愛する人がいるけれど、その人とは二度と会えないのだ。

 あかりとノックスが森の中に座って話し込んでいると、二人の背後から声がした。

「メリッサ、便所が長すぎるぞ」

 あかりが後ろを振り向くと、グリフが機嫌が悪そうに木に寄りかかって立っていた。

「グリフ、お手洗いじゃないわよ。本当にデリカシーがないんだから。でも心配かけてごめんなさい」

 グリフは渋面を崩さずノックスに言った。

「ご主人さま、メリッサにおかしな事吹き込むなよ」
『ペットのくせに生意気だなグリフ。俺はメリッサにお前の事を頼んでやっていたんだぞ』
「余計な事するなよ、俺とメリッサは相思相愛なんだよ。なぁメリッサ」

 グリフの言葉にあかりはすぐに返事ができなかった。グリフが焦って言う。

「えっ、メリッサ嫌なの?!」
「嫌ってわけじゃないけど、相思相愛ってのはちょっと」
「そんなぁ、メリッサァ」

 あかりとグリフのやり取りを見ていたノックスが笑い出した。

『ハハハッ。メリッサにかかると、お前もかたなしだな。グリフ、何かあったらちゃんと俺を呼ぶのだぞ』

 ノックスはそう言ってから姿を消した。グリフはあかりをうながして皆の所に帰ろうとした。あかりはグリフに言った。

「グリフはノックスのペットとして一体何をしているの?」
「それはなぁ、俺の愛らしさを愛でてノックスは癒されてるんだよ」
「・・・」
「メリッサ、何で無言になるの?」
「だってグリフを見て心が癒されるなんて到底思えないわ」
「メリッサ、辛らつだが客観的な答えだ。ノックスはなぁ、養い子の代わりに俺を構っているんだ」
「養い子?ノックスには養い子がいたの?」
「ああ、詳しくは話さないがな。その養い子が大きくなったらノックスとそりが合わなかったようだ。ノックスはいい加減で事なかれ主義の霊獣だ。成長した養い子はノックスのそんな所が許せなかったみたいで、リンクして話をしても無視されるみたいなんだ。だから俺を拾って適当に構っているんだ」

 あかりは思った。霊獣の守護者と養い子は、人間の親子によく似ている。だがたとえ親子でも、子供が成長すれば自我が芽生え、親に反発する事がある。霊獣も同じかもしれない。
 
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