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盛平

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メリッサのモヤモヤ

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 あかりたちは東を進み、トーリャという賑やかな街に到着した。この街には大きなマーケットがあり、人々が活気づいていてあかりは歓声をあげた。

「わぁ!とっても賑やかな街ねぇ」

 目を輝かせて店々をみているあかりを、グリフは嬉しそうに見つめてトーリャの街の事を話してくれた。

「ああ、この街は商業が盛んなんだ。そしてこの街の領主は女性なんだ」
「えっ女の人が治めている街なの?!」

 びっくりして聞き返したあかりに、グリフはうなずいて答えた。

「まぁ実際の統治は優秀な部下がやっているがな。女領主はいわば広告塔だ。前領主が高齢で亡くなった後、このトーリャの街をさらに発展させたんだ。何でもスッゲェ美人だってうわさだぜ?」
「わぁ、素敵ねぇ」

 あかりは街を見つめながらウットリとため息をもらしした。なおもお店をキョロキョロしているあかりに、グリフが提案した。

「なぁメリッサ、ここの街のドレスは王都に負けないくらい流行の最先端なんだぜ?服屋さんに行ってみないか?」
「ホント?行ってみたい!」

 村娘のあかりが最先端のドレスなんて似合うわけがない。だがあかりとて女だ、美しい物を見るくらい許されるだろう。グリフは笑顔で言った。

「よし決まりだ。メリッサに似合うドレスを買ってやるからな。アスラン、俺たちは買い物してくるからお前は宿を探しとけよ」

 グリフの言葉に、それまで興味なさそうにぼんやりしていたアスランが怒り出して言った。

「何だと!グリフ、君が宿を探せよ!メリッサのドレスは僕が買ってやる!」
「はぁぁあ?ボンクラのお前に女の子のドレスを見立てるなんて無理に決まってんだろ!俺はこれからメリッサとデートなの!」

 そういってグリフはあかりの手を掴んだ。それを見たアスランは、あかりの反対側の手を掴む。困ったあかりは一触即発の二人に言った。

「ねぇ皆で行かない?」

 だがケンカを始めたグリフとアスランはあかりの意見を聞き入れない。どちらかとあかりが買い物に行くと言って聞かないのだ。だからといってグリフとアスランは、あかりの腕を引っ張るでもなく、手を強く握るでもない。まるで真綿を掴むような繊細さで、あかりの手を握っているのだ。その扱いはお姫さまのようで、あかりをいたたまらなくさせた。馬のアポロンもティグリスもグラキエースも呆れ顔であかりたちを見ている。あかりは段々腹がたってきて二人に大声で言った。

「もう!いい加減にして二人共!他の人たちに迷惑でしょ?!そんなに手がつなぎたいなら二人でつなげばいいじゃない。グラキエース!」

 あかりはグリフとアスランの手から、スルリと手を抜くと、ドラゴンのグラキエースに言った。グリフとアスランの手をくっつけてと。グラキエースはニンマリ笑って、魔法でグリフとアスランの手をくっつけると、氷魔法で固めてしまった。あかりは厳しい顔を作って二人に宣言した。

「二人共反省して!」

 あかりはグリフとアスランの情けない声を背中に聞きながら、ティグリスとグラキエースを連れ、ズンズンと市場の奥に歩いて行った。

 あかりは、グリフとアスランのあかりへの接し方にいつもモヤモヤしたものを感じていた。アスランは、街を歩けば周りの女性たちが頬を染めてウットリ見つめるような美男子なのだ。だがアスランは自身のルックスにとんちゃくしていないのか、女性たちの視線に全く気づいていない。

 その点グリフは自身の見た目の良さを自覚しているようだ。街で女性と目が合うと、魅力的な笑顔で会釈をしている。見つめられた女性は可哀想なくらい顔が真っ赤になってしまうのだ。そんなカッコいい二人が取り合っているのは、綺麗なお姫さまではなくモッサリした村娘のあかりなのだ。周りの人たちは、何故あのダサい娘を二人の男たちが取り合おうとするのか不思議で仕方ないだろう。

 あかりは自身の外見にコンプレックスを持っていた。あかりの姿は、前世の姿と全く変わらないのだ。あかりの今の姿は前世で高校生だった時の姿とそっくりだった。この現世の世界は色々な人種がいて、肌の白い人、黄色い人、黒い人、褐色の人とまるで違う。そして瞳の色も髪の色も皆違うのだ。あかりはアスランのようなブロンドの髪や、宝石のようなブルーの瞳に憧れていた。自分もそうだったらいいのにと。イライラと機嫌が悪いあかりにグラキエースが言った。

『メリッサ、あ奴らいつまでお仕置きしとくのじゃ?』
「しばらくしたら魔法を解除してあげて?二人共いつもケンカばっかりなんだもの。少しは反省してもらわなきゃ」

 そしてグリフとアスランの手をくっつけたのは、二人に少しでも仲良くなってもらいたかったからだ。あかりはグリフもアスランも大好きだ。あかりの好きな人たちが仲が悪すぎなのは悲しいのだ。あかりが物思いにふけりなが歩いていると、あかりを呼び止める声がした。あかりが不思議に思って振り返ると、そこには鎧を着た美しい人が立っていた。アスランの姉ヴイヴィアンだった。


 グリフは怒って行ってしまったメリッサの背中を悲しい気持ちで見つめていた。しかも大嫌いなアスランと手をくっつけられてしまって踏んだり蹴ったりだ。グリフは右手にいる相手をにらみながら言った。

「おいアスラン、早い所この魔法を外してメリッサを探しに行くぞ」

 アスランもグリフをにらみ返して答えた。

「言われなくたってそうするよ」

 グリフとアスランは、グラキエースに氷で固められた手に魔力を集中させて炎を出そうとした。だが炎は出なかった。やはりなとグリフは思った。サーチの魔法が使えるグリフは、グラキエースの膨大な魔力を見ているのだ。グリフとアスランごときの魔法では解除できない。アスランはのんきに言った。

「やぁグラキエースの魔法はすごいや、全く解く事ができないな。地道に炎で溶かすしたないようだ」

 アスランはそう言っ、グリフと手をつないでいない反対の右手を氷に向けて炎魔法を発動させた。その炎は、氷だけではなくグリフの右腕も一緒に燃やした。

「ぐわぁちい!何しゃがんだアスラン、テメェ!」

 グリフは反射的に空いてる方の左手のこぶしでアスランの顔面を殴った。アスランの高い鼻から鼻血が吹き出した。鼻血を出したアスランの顔が面白くて、グリフはアハハと笑った。次の瞬間、自身の左頬にアスランの右手のこぶしがめり込んだのがわかった。


 




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