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盛平

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メリッサのドレス

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 ヴイヴィアンはもう一軒付き合ってくれと、あかりたちを服屋に連れて来た。そこは女性のドレスを専門にしている店らしく、色とりどりのドレスが並べられていた。あかりはドレスの美しさにため息をついた。

 店の中から、太った中年の女性が出てきた。どうやら店主のようだ。ヴイヴィアンは店主に頼んであかりに似合うドレスをみつくろってくれと言った。店主は大きくうなずき、あかりの身体にかわるがわるドレスを押し付けて、ヴイヴィアンに見せた。ヴイヴィアンはアゴに手をおいて数着のドレスを選んであかりに試着させた。

「ねぇヴイヴィ、おかしくない?」

 あかりはこんな綺麗なドレスを着るのが初めてで、緊張しながらヴイヴィアンに聞いた。ヴイヴィアンはあかりの側によると、あかりと一緒に大きな鏡を覗きこんで言った。

「とってもよく似合っているぞメリッサ」

 あかりは、自分の横で微笑んでいるヴイヴィアンを見て、前世の姉ひかりの事を思い出した。姉のひかりもよくあかりに服を選んでくれた。あかりは鼻の奥がツンと熱くなって、涙が出そうになるのを必死にこらえた。

 あかりはヴイヴィアンに淡い桜色のドレスを買ってもらった。服屋の店主のサービスで、あかりは髪型も整えてもらった。ヴイヴィアンの提案で、市場を一人で歩く事になった。ティグリスとグラキエースも一緒ではダメだというのだ。あかりはヴイヴィアンの真意はわからなかったが、彼女の言葉にしたがった。

 賑やかな街の市場を歩くと、あかりの心が浮き立つのがわかった。きっと素敵なドレスを着ているからだろう。しばらく歩いていると、ぼくとつそうな青年に声をかけられた。

「あの、道をたずねたいのですが?」
「ごめんなさい、私この街の人間じゃないんです。道を聞かれてもわからないわ」

 あかりが申し訳なさそうに言うと、青年が照れ臭そうに笑いながら言った。

「すみません、実はお嬢さんが可愛かったので声をかけてしまったんです。もし良ければ一緒に食事でもいかがですか?」

 あかりは初めて若い男性に声をかけられて焦ってしまった。そして仲間と待ち合わせしているのでと、青年の誘いを丁寧に断った。青年は苦笑しながら去って行った。

 あかりがまた一人で歩き出すと。今度は陽気そうな二人組の男に声をかけられた。男たちは少しガラが悪そうだった。やはりあかりに一緒に食事に行こうと提案した。二人組はしつこくて、あかりが断っても強引に連れて行こうとした。するとあかりたちの後ろから声がした。

「おいお前たち、その子は私の連れだ。どこに連れて行く気だ?」

 あかりと二人組が振り向くと、そこには凶悪な笑顔を浮かべた女剣士か立っていた。二人組の男たちは、女剣士の気迫に怖気づいて悲鳴をあげながら逃げて行った。あかりはヴイヴィアンに礼を言った。

「ありがとうヴイヴィ」
「問題ない。なぁメリッサ、何故男たちがお前に声をかけるかわかるから?」
「私が豪華なドレスを着ているからお金を持っていると思ったんじゃない?」

 ヴイヴィアンはふうっと、ため息をついてガラ答えた。

「違うぞメリッサ、お前が美しいから男たちが声をかけたのだ」

 ヴイヴィアンの言葉にあかりは驚いた。ヴイヴィアンはあかりに噛んで含めるように言葉を続けた。

「なぁメリッサ。お前は黒い髪と黒い瞳に何やらコンプレックスを感じているようだが、このトランド国では黒い髪と黒い瞳の人間はそこまで多くない。だからメリッサは皆に注目されるのだぞ?もつと自信を持って堂々としていろ」

 ヴイヴィアンの言葉にあかりは大きくうなずいて言った。

「ありがとうヴイヴィ」
「気にするな、いずれ私の妹になるかもしれないのだからな」

 あかりはヴイヴィアンの言葉に首をかしげた。アスランと同じようにあかりを妹のように思ってくれているのだろうか。ヴイヴィアンがそう思ってくれるならあかりも嬉しかった。ヴイヴィアンはあかりに声をかけた。

「メリッサ、虎、ドラゴン。ではさらばだ、私はカゴの街へ行かねばならん。縁があったらまた会おう」

 あかりはきびすを返して去ろうとするヴイヴィアンを大声で引き止めた。

「ねぇヴイヴィ!私もっとあなたとお話したいわ、カゴの街まで送らせて?」

 あかりは子虎の霊獣ティグリスに大きくなってもらってヴイヴィアンをカゴの街まで送る事にした。ティグリスが大空を飛んでくれたおかげでカゴの街へは一時間で着いた。カゴの冒険者協会に到着すると、あかりたちは協会関係者に涙ながらに礼を言われた。

 カゴの街からの帰り道、大きくなったティグリスに乗ってあかりが抱っこしているドラゴンのグラキエースが言った。

『のぉメリッサ。わしはドラゴンじゃから人間の外見の良し悪しはわからんがな、メリッサお主はとても心が綺麗な人間じゃぞ』

 あかりはありがとう、と言ってグラキエースをギュッと抱きしめた。あかりたちを乗せて飛んでいたティグリスも、顔を後ろに向けてあかりに言った。

『そうだぞメリッサ、俺は人間の中でメリッサが一番大好きなんだからな』
「うん、ありがとうティグリス」
『なぁメリッサ、あのいちご美味しかったなぁ。また食べたいぞ』


 ティグリスとグラキエースはヴイヴィアンが食べさせてくれたクレープに乗っていたイチゴが気に入ってしまったのだ。あかりがティグリスたちに言った。

「そうね、アスランとグリフの土魔法でイチゴを作ってもらえるか聞いてみようね?あっ!」

 そこであかりはアスランとグリフの手をくっつけたままにした事を思い出した。


 トーリャの街に着くと、あかりは通信魔法具のペンダントでアスランと連絡をつけて落ち合った。そこで待っていたアスランとグリフは、顔が大分変わっていた。二人共顔が腫れ上がっていて、目も開いてない状態だったのだ。二人の後ろにいた馬のアポロンは申し訳なさそうにあかりに言った。

『すまないメリッサ。君がせっかくアスランたちの仲を取り持とうとしてくれていたのに、手をつないだ一分後に殴り合いになってしまった』
「私こそごめんなさい。帰るのが遅くなって」

 アスランとグリフは、あかりが去った後からすぐにケンカを始めたようだ。きょうしゅくするあかりに、顔をパンパンに腫らしたグリフが言った。

「メリッサ、そのドレスとっても可愛いなぁ。まるでお姫さまみたいだ。あっ、でもそのドレス誰に買ってもらったんだ?もしかして変態オヤジに買ってもらったんじゃないだろうな!変な事されなかったかメリッサ」
「変態オヤジとは君の事だろうグリフ」

 顔がパンパンになったアスランがグリフに言う。あかりが二人の手を見ると、手が離れていた。どうやらグリフとアスランは自力でグラキエースの魔法を解いたらしい。アスランが心配そうにあかりにたずねる。

「メリッサ、そのドレスとてもよく似合っているよ。誰が買ってくれたんだい?」
「ヴイヴィよ」

 アスランは首をかしげた。あかりは言葉を続ける。

「アスランのお姉さんよ」
「!、姉さんが?!メリッサ、すぐに脱ぐんだ!呪いがかけられているかもしてない!」
「・・・、大丈夫よアスラン。ヴイヴィが辛く当たるのはアスランにだけよ。私にはとっても優しかったわ」
「・・・」

 あかりはため息をついてからアスランとグリフに言った。

「ねぇ二人共、顔に治癒魔法して?」
 

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