見習い動物看護師最強ビーストテイマーになる

盛平

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森の少女

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 あかりたちは東の森を進んだ。日も暮れて、そろそろ野宿の準備をしようかとしていた時だった。パタパタと翼をはためかせて飛んでいるティグリスが言った。

『なぁメリッサ、人間の子供がいる』

 あかりは驚いた。もう森の中は真っ暗だ、こんな場所に小さな子供がいるなど信じられなかった。険しい顔で辺りを見回していたグリフも言った。

「ティグリスの言う通りだ。子供の泣き声が聞こえる」

 グリフは腰の袋からランプを取り出すと、火魔法で火をつけた。あかりたちはランプの光を頼りに子供を探した。はたして林の中に子供がうずくまって泣いていた。グリフはあかりにランプを持たせると、ポンと背中を押した。あかりが子供に声をかけろというのだ。確かに急に知らない男が声をかければ子供は怖がるだろう。自分が適任だと考え、あかりはゆっくりと子供に近づき声をかけた。

「どうしたの?」

 あかりの言葉に、子供はビクリと身体を震わせてから、おずおずと顔を上げた。可哀想に目を真っ赤にさせて泣いていた。あかりはつとめて明るい声で言った。

「私はメリッサ、あなたは」
「・・・、ラナ」
「ラナ、いい名前ね」

 あかりの後ろにいたグリフが声をかえた。

「やぁラナ。どこか痛いのか?」

 泣いている少女、ラナはコクリとうなずいて自分の右足を見た。ラナの足首は暗やみでもわかるくらい腫れていた。きっと転んで足首を捻挫してしまったのだろう。グリフは微笑んで言った。

「大丈夫だラナ、こんなケガおじさんがすぐに治してやるからな。なんたっておじさんは魔法使いだからな」

 ラナはびっくりしたようにグリフを見つめた。グリフはラナの腫れた足首に手をそえると、氷魔法でラナの熱を持った足首を冷やした。グリフは腰の袋から薬草を取り出すと、小さなすり鉢で薬草をすりつぶし、ガーゼにはさんでラナの足首に貼った。そして包帯でラナの足首が動かないように器用に巻いてやった。グリフはラナの治療を終えると、彼女を優しく抱き上げた。その姿は仲の良い親子のようだった。ラナは意を決したようにグリフの顔を見て言った。

「魔法使いのおじちゃん、お願い!お母さんを助けて!」

 ラナの話を聞くと、どうやらラナの母親は病気らしい。彼女は母親を助けるために森に薬草を取りに行ってケガをして動けなくなってしまったそうだ。あかりたちはラナの案内にしたがい歩いて行くと、小さな家に着いた。だがおかしな事にもう暗くなっているのに家の中に灯りがついていなかった。

 あかりは不審に思いながらドアをノックした。だが応じる気配がないので仕方なくドアを開いた。室内は雑然としていて、生活の気配がなかった。ラナに指示されるまま、ラナを抱いたグリフとあかりは室内に入った。小さな家なのでアスランとアポロン、ティグリス、グラキエースは外で待機する事になった。

 ラナが室内のドアを開けてと言う、どうやらそこが寝室のようだ。あかりがドアを開けると粗末なベッドが目に入り、誰かが寝ている事がわかった。ラナがお母さん、と呼んだ。するとベッドの上の人物は弱々しい声で答えた。

「ラナ、どこに行っていたの?とても心配したのよ」

 ラナは母の質問には答えず、興奮気味に言った。

「お母さん、このおじちゃん魔法使いなの。お母さんの病気を治してくれるわ!」

 あかりはランプを持ったまま、ゆっくりとベッドに近づいた。そこにはやせ細った女性が寝ていた。グリフは抱いていたラナをベッドの上に座らせると、あかりにランプを持っていてくれと指示をして、ベッドの女性に優しく声をかけた。

「森の中であなたの娘さんを見つけたんです。お母さんに薬草を採ってあげたかったようです」

 グリフはラナの母親の状態を確認させてくれと頼んだ。母親は急に現れたグリフとあかりを不審がっているようだが、あいまいにうなずいた。グリフは素早く母親の手の脈をとり、舌を出させ、下まぶたの裏を確認した。グリフはゆっくりとした口調で母親に言った。

「お母さん、貴女は極度の栄養失調で貧血をおこしています。貴女はめまいで起き上がる事も辛いでしょう?」

 母親は弱々しくうなずいた。ラナが心配そうにグリフに聞いた。

「おじちゃん、お母さんの病気治る?」

 グリフはラナに向き直ると笑顔で答えた。

「ああ勿論だよラナ、おじちゃんに任せとけ!」

 心配顔のラナがとびきりの笑顔になった。

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