見習い動物看護師最強ビーストテイマーになる

盛平

文字の大きさ
73 / 118

ゼキーグ

しおりを挟む
 ゼキーグは幼い頃から周りの人間が愚かに見えた。そしてゼキーグ自身は選ばれた存在であると信じて疑わなかった。ゼキーグは自身がこの小さな村にいる事が信じられなかった、ここは自分のいる場所ではないと常々思っていた。

 ゼキーグは働く事を良しとしなかった。汗水垂らして働くなど愚の骨頂だと考えていた。ゼキーグが金や食べ物に困れば、嘘をつけばよかった。今金を貸してくれれば後で倍にして返すなど、実現できもしない嘘をついて金や食べ物をだまし取っていた。勿論期日までに金を返さないとゼキーグに金を貸した村人は怒るが、ゼキーグは元来の口のうまさからのらりくらりと期日を伸ばしいつの間にかうやむやにしてしまった。

 ゼキーグかこの世で一番楽しいと思う事は、人間が恐怖や苦痛にゆがむ顔だった。そんな人間を見ると心が躍るのだ。ゼキーグはそんな人間の顔見たさに、よく嘘をついた。村の暴れん坊に、村で一番弱々しい人間が暴れん坊の悪口を言っていると吹き込むのだ。すると暴れん坊は頭に血が上って弱々しい人間に暴力をふるうのだ。ゼキーグは物の陰からそのありさまを見ておおいに笑った。弱々しい人間は、暴れん坊が怖くて事実無根の悪口の弁解すらしないのだ。

 そんなゼキーグに転機がおとずれた。やはりゼキーグは選ばれた存在だったのだ。ある時深くフードを被った老人が現れた。その老人は、おかしな事に音もなくゼキーグの家に入ってきたのだ。ゼキーグは最初老人を恐れたが、彼の言葉に喜びを隠せなかった。

「ゼキーグよ、貴様は力がほしいか?」

 ゼキーグはフードの老人の足元にひざまずくと、頭をすりつけてこん願した。

「はい、私は力が欲しいです。誰よりも強い力と財力がほしいです」
「よかろう、ならば与えよう」
「ハッ貴方さまのお名前は?」

 老人はフードの中でニヤリと笑った。

「我が名はバモン。魔界の王だ」

 ゼキーグは頭を地面にすりつけて低頭した。ゼキーグは魔物の力を強く欲した。バモンは魔法陣を描きゼキーグを真ん中に立たせた。バモンは呪文をゼキーグに復唱させた。すると魔法陣が輝き出し、ゼキーグを包みこんだ。ゼキーグか目を開けると、自身の身体の奥から力が溢れ出してくるのを感じた。バモンが命令した。

「ゼキーグよ、貴様の願いを言え」

 ゼキーグはゴクリとツバを飲み込み大声で叫んだ。

「金を我が手に!」

 ゼキーグの手には金の塊か握られていた。ゼキーグは高らかに笑い声をあげた。やはりゼキーグは選ばれた人間だったのだ。

 ゼキーグはみずから作り出した金塊で贅の限りを尽くした。豪華な屋敷を建て、美しい美姫をはべらせ、美酒と美食があふれた。ついに、ついに実現したとゼキーグは思った。これこそがゼキーグか本来いるべき姿なのだと。

 ゼキーグはしばらくは贅の限りを尽くす生活に満足していた。だがしばらくすると物足りなくなったのだ。何が足りないのかゼキーグは必死に考えた。そしてある答えに行き当たった。それは残虐な見世物だ。ゼキーグか一番心踊るのは、人間が恐怖におののき震える姿なのだ。ゼキーグは金に物言わせ、自身の村を治める領主から領地を譲り受け、新たな領主となった。今までゼキーグを馬鹿にして認めなかった村人たちに復讐するためだ。

 ゼキーグは自身の村の領主になると、すぐさま重い税を課した。そして時を同じくして、急に村の作物の生産が滞るようになった。ゼキーグはそれを好機と見て、村人にある商談を持ちかけた。税金を納める事ができなければ村人を生け贄として差し出せと。

 はたして生け贄はやって来た。それまでゼキーグと共に村で暮らした人々だ。村の連中はゼキーグにどんな目にあわされるかまるでわかっていなかった。ゼキーグは村人に拷問の限りを尽くした。村人は悲鳴をあげ、いっそ殺してくれとすら叫んだ。ゼキーグはその姿を見て、心の底から喜んだ。

 ある時村の村長がやって来た、税金の納期を伸ばすためのたん願がんにだ。この村長は以前、ゼキーグの生き方に意見をしてきたのだ。お前は心を入れ替えて真面目に生きなければいけないと言ったのだ。ゼキーグはその時の怨みを晴らすため、村長を徹底的に拷問した。

 だが命までは取らなかった。それは決して慈悲の心からではない。ゼキーグはもっと村長の苦しむ姿が見たいのだ。そのためにはまだ村長を殺すわけにはいかない。村長の目の前で村長の息子をなぶり殺しにするのはどうだろうか。きっと村長は自分が死ぬより苦しむのではないだろうか。ゼキーグはその考えがとても良案に思え、高らかに笑い声をあげた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...