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盛平

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トランド国王の決意

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 ついに来たか。トランド国王クリフォードは玉座から立ち上がった。クリフォード国王の側に宰相のガロアが近寄って来た。ガロアは心配げにクリフォードに声をかけた。

「国王陛下」
 
 クリフォードは宰相のガロアに向き直ると、彼の手を取った。ガロアの手は柔らかで温かかった。剣を一度も握った事のない手だ。ただの平民だったクリフォードは、前国王の娘と結婚してトランド国王となった。だが政治のせの字も知らないクリフォードがいきないトランド国を治める王となる事は到底できなかった。

 前国王は門外漢のクリフォードに手取り足取り政治を教えてくれた。そして前国王が完全に引退する時に、宰相をつけてくれたのだ。その者がガロアだった。ガロアはクリフォードより年若かったが、優秀な男だった。ガロアは、クリフォードを国王だからといって萎縮するでもなく、クリフォードが平民出だからといって軽んじるわけでもなく、淡々とクリフォードが国を治める事を手助けしてくれたのだ。

 ガロアがクリフォードに心配げに言った。

「国王陛下のご命令通り、城の者、城下町の国民、全て避難完了しております」
「ありがとう。ガロア、世話になったな」

 クリフォードの言葉にガロアは怒鳴った。

「王よ、まるで今生の別れのようなお言葉!貴方が死を覚悟しているのなら、私はここを一歩も動きません!最後まで共におります」

 ガロアの剣幕に、クリフォードは困ってしまい、それと同時に嬉しさも募った。クリフォードは笑って答えた。

「案ずるなガロア、わしは死なん。なんたってわしはトランド国を魔王から救った勇者じゃぞ?」
「それは五十年前のお話です!」
「・・・、いつもながら信用ないのぉ」
「ええ、貴方はいつも問題ばかり起こして。私はちっとも信用できません」

 クリフォードは、ガロアの怒った顔が面白くなって大笑いした。笑われたガロアは最初渋い顔をしたが、次第にクリフォードの笑いがうつってガロアも笑い出した。二人でひとしきり笑った後、クリフォードはガロアの肩をポンと叩いて言った。

「案ずるな、必ずわしが勝つ」

 ガロアはうなずいた。ガロアの後ろに控えていた男が二人、ガロアの側に近寄った。クリフォードが信頼している二人の魔法騎士だ。クリフォードは魔法騎士二人に言った。

「トマス、エリヤ、ガロアを頼む。わしの友なのじゃ」

 魔法騎士、トマスとエリヤは深くうなずくと、何度もクリフォードを振り返るガロアを促して王の間を出て行った。これでこのトランド城にいる人間はクリフォードだけになった。クリフォードはおごそかな声で言った。

「パンテーラ」

 クリフォードの側に、美しいジャガーの霊獣が現れた。クリフォードの友である契約霊獣だ。ジャガーのひたいには第三の目が輝いていた。クリフォードはパンテーラに話しかけた。

「もうすぐだな」
『ああ。何だクリフ恐れているのか?』
「何を言っとる。武者震いじゃ!」

 クリフォードとパンテーラは軽口をたたきあう。パンテーラは風魔法を使う霊獣だが、ひたいの第三の瞳は未来を視る瞳だった。パンテーラは近い未来、このトランド城に魔王バモンが現れるのを視たのだ。クリフォードは、盟友ゼノからも、冒険者アスランからも魔物と契約した人間の悪行を耳にしていた。そして魔王バモンが復活した事に思いいたった。

 そのためクリフォードは城の者、城下町に住む国民を安全な場所に避難させた。このトランド城で魔王バモンを迎えうち、そして倒すためだ。クリフォードの胸の内に小さな不安がよぎる。クリフォードが魔王バモンを倒した五十年前は
、召喚士のゼノ、ヒーラーのユリア、戦士ドグマが共にいてくれた。だが今は自身は年老い仲間の二人は他界してしまった。だがそれでもクリフォードは戦わなければいけない。クリフォードはトランド国の人々を守る国王なのだから。

 国王の間に禍々しい気配が溢れ出した。魔物の気配。クリフォードが虚空を睨みつけると、突然その場にフードをまぶかにかぶった老人が現れた。老人はしわがれた声でクリフォードに言った。

「何とも老いぼれた姿だな。勇者クリフよ」
「お主とてシワクチャではないか。丁度良いではないか」

 フードの老人、魔王バモンは気分を害したように厳しい声で言った。

「ふん、減らず口を。小ざかしい人間め」

 魔王バモンは声高らかに叫んだ。バモンの後ろにはゾウの霊獣、サイの霊獣、水の精霊が現れた。どうやら霊獣と精霊は、ゼノとアスランの報告通り魔王バモンに操られているようだ。クリフォードは物隠しの魔法を解いた。すると自身の手に大きな剣が握られていた。五十年前、魔王バモンを倒した時の剣だ。クリフォードは王となってからも剣の鍛錬を怠る事は決して無かった。馴染みある剣を握りしめ、バモンに向かって剣を構えた。
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