84 / 118
トランド国王の決意
しおりを挟む
ついに来たか。トランド国王クリフォードは玉座から立ち上がった。クリフォード国王の側に宰相のガロアが近寄って来た。ガロアは心配げにクリフォードに声をかけた。
「国王陛下」
クリフォードは宰相のガロアに向き直ると、彼の手を取った。ガロアの手は柔らかで温かかった。剣を一度も握った事のない手だ。ただの平民だったクリフォードは、前国王の娘と結婚してトランド国王となった。だが政治のせの字も知らないクリフォードがいきないトランド国を治める王となる事は到底できなかった。
前国王は門外漢のクリフォードに手取り足取り政治を教えてくれた。そして前国王が完全に引退する時に、宰相をつけてくれたのだ。その者がガロアだった。ガロアはクリフォードより年若かったが、優秀な男だった。ガロアは、クリフォードを国王だからといって萎縮するでもなく、クリフォードが平民出だからといって軽んじるわけでもなく、淡々とクリフォードが国を治める事を手助けしてくれたのだ。
ガロアがクリフォードに心配げに言った。
「国王陛下のご命令通り、城の者、城下町の国民、全て避難完了しております」
「ありがとう。ガロア、世話になったな」
クリフォードの言葉にガロアは怒鳴った。
「王よ、まるで今生の別れのようなお言葉!貴方が死を覚悟しているのなら、私はここを一歩も動きません!最後まで共におります」
ガロアの剣幕に、クリフォードは困ってしまい、それと同時に嬉しさも募った。クリフォードは笑って答えた。
「案ずるなガロア、わしは死なん。なんたってわしはトランド国を魔王から救った勇者じゃぞ?」
「それは五十年前のお話です!」
「・・・、いつもながら信用ないのぉ」
「ええ、貴方はいつも問題ばかり起こして。私はちっとも信用できません」
クリフォードは、ガロアの怒った顔が面白くなって大笑いした。笑われたガロアは最初渋い顔をしたが、次第にクリフォードの笑いがうつってガロアも笑い出した。二人でひとしきり笑った後、クリフォードはガロアの肩をポンと叩いて言った。
「案ずるな、必ずわしが勝つ」
ガロアはうなずいた。ガロアの後ろに控えていた男が二人、ガロアの側に近寄った。クリフォードが信頼している二人の魔法騎士だ。クリフォードは魔法騎士二人に言った。
「トマス、エリヤ、ガロアを頼む。わしの友なのじゃ」
魔法騎士、トマスとエリヤは深くうなずくと、何度もクリフォードを振り返るガロアを促して王の間を出て行った。これでこのトランド城にいる人間はクリフォードだけになった。クリフォードはおごそかな声で言った。
「パンテーラ」
クリフォードの側に、美しいジャガーの霊獣が現れた。クリフォードの友である契約霊獣だ。ジャガーのひたいには第三の目が輝いていた。クリフォードはパンテーラに話しかけた。
「もうすぐだな」
『ああ。何だクリフ恐れているのか?』
「何を言っとる。武者震いじゃ!」
クリフォードとパンテーラは軽口をたたきあう。パンテーラは風魔法を使う霊獣だが、ひたいの第三の瞳は未来を視る瞳だった。パンテーラは近い未来、このトランド城に魔王バモンが現れるのを視たのだ。クリフォードは、盟友ゼノからも、冒険者アスランからも魔物と契約した人間の悪行を耳にしていた。そして魔王バモンが復活した事に思いいたった。
そのためクリフォードは城の者、城下町に住む国民を安全な場所に避難させた。このトランド城で魔王バモンを迎えうち、そして倒すためだ。クリフォードの胸の内に小さな不安がよぎる。クリフォードが魔王バモンを倒した五十年前は
、召喚士のゼノ、ヒーラーのユリア、戦士ドグマが共にいてくれた。だが今は自身は年老い仲間の二人は他界してしまった。だがそれでもクリフォードは戦わなければいけない。クリフォードはトランド国の人々を守る国王なのだから。
国王の間に禍々しい気配が溢れ出した。魔物の気配。クリフォードが虚空を睨みつけると、突然その場にフードをまぶかにかぶった老人が現れた。老人はしわがれた声でクリフォードに言った。
「何とも老いぼれた姿だな。勇者クリフよ」
「お主とてシワクチャではないか。丁度良いではないか」
フードの老人、魔王バモンは気分を害したように厳しい声で言った。
「ふん、減らず口を。小ざかしい人間め」
魔王バモンは声高らかに叫んだ。バモンの後ろにはゾウの霊獣、サイの霊獣、水の精霊が現れた。どうやら霊獣と精霊は、ゼノとアスランの報告通り魔王バモンに操られているようだ。クリフォードは物隠しの魔法を解いた。すると自身の手に大きな剣が握られていた。五十年前、魔王バモンを倒した時の剣だ。クリフォードは王となってからも剣の鍛錬を怠る事は決して無かった。馴染みある剣を握りしめ、バモンに向かって剣を構えた。
「国王陛下」
クリフォードは宰相のガロアに向き直ると、彼の手を取った。ガロアの手は柔らかで温かかった。剣を一度も握った事のない手だ。ただの平民だったクリフォードは、前国王の娘と結婚してトランド国王となった。だが政治のせの字も知らないクリフォードがいきないトランド国を治める王となる事は到底できなかった。
前国王は門外漢のクリフォードに手取り足取り政治を教えてくれた。そして前国王が完全に引退する時に、宰相をつけてくれたのだ。その者がガロアだった。ガロアはクリフォードより年若かったが、優秀な男だった。ガロアは、クリフォードを国王だからといって萎縮するでもなく、クリフォードが平民出だからといって軽んじるわけでもなく、淡々とクリフォードが国を治める事を手助けしてくれたのだ。
ガロアがクリフォードに心配げに言った。
「国王陛下のご命令通り、城の者、城下町の国民、全て避難完了しております」
「ありがとう。ガロア、世話になったな」
クリフォードの言葉にガロアは怒鳴った。
「王よ、まるで今生の別れのようなお言葉!貴方が死を覚悟しているのなら、私はここを一歩も動きません!最後まで共におります」
ガロアの剣幕に、クリフォードは困ってしまい、それと同時に嬉しさも募った。クリフォードは笑って答えた。
「案ずるなガロア、わしは死なん。なんたってわしはトランド国を魔王から救った勇者じゃぞ?」
「それは五十年前のお話です!」
「・・・、いつもながら信用ないのぉ」
「ええ、貴方はいつも問題ばかり起こして。私はちっとも信用できません」
クリフォードは、ガロアの怒った顔が面白くなって大笑いした。笑われたガロアは最初渋い顔をしたが、次第にクリフォードの笑いがうつってガロアも笑い出した。二人でひとしきり笑った後、クリフォードはガロアの肩をポンと叩いて言った。
「案ずるな、必ずわしが勝つ」
ガロアはうなずいた。ガロアの後ろに控えていた男が二人、ガロアの側に近寄った。クリフォードが信頼している二人の魔法騎士だ。クリフォードは魔法騎士二人に言った。
「トマス、エリヤ、ガロアを頼む。わしの友なのじゃ」
魔法騎士、トマスとエリヤは深くうなずくと、何度もクリフォードを振り返るガロアを促して王の間を出て行った。これでこのトランド城にいる人間はクリフォードだけになった。クリフォードはおごそかな声で言った。
「パンテーラ」
クリフォードの側に、美しいジャガーの霊獣が現れた。クリフォードの友である契約霊獣だ。ジャガーのひたいには第三の目が輝いていた。クリフォードはパンテーラに話しかけた。
「もうすぐだな」
『ああ。何だクリフ恐れているのか?』
「何を言っとる。武者震いじゃ!」
クリフォードとパンテーラは軽口をたたきあう。パンテーラは風魔法を使う霊獣だが、ひたいの第三の瞳は未来を視る瞳だった。パンテーラは近い未来、このトランド城に魔王バモンが現れるのを視たのだ。クリフォードは、盟友ゼノからも、冒険者アスランからも魔物と契約した人間の悪行を耳にしていた。そして魔王バモンが復活した事に思いいたった。
そのためクリフォードは城の者、城下町に住む国民を安全な場所に避難させた。このトランド城で魔王バモンを迎えうち、そして倒すためだ。クリフォードの胸の内に小さな不安がよぎる。クリフォードが魔王バモンを倒した五十年前は
、召喚士のゼノ、ヒーラーのユリア、戦士ドグマが共にいてくれた。だが今は自身は年老い仲間の二人は他界してしまった。だがそれでもクリフォードは戦わなければいけない。クリフォードはトランド国の人々を守る国王なのだから。
国王の間に禍々しい気配が溢れ出した。魔物の気配。クリフォードが虚空を睨みつけると、突然その場にフードをまぶかにかぶった老人が現れた。老人はしわがれた声でクリフォードに言った。
「何とも老いぼれた姿だな。勇者クリフよ」
「お主とてシワクチャではないか。丁度良いではないか」
フードの老人、魔王バモンは気分を害したように厳しい声で言った。
「ふん、減らず口を。小ざかしい人間め」
魔王バモンは声高らかに叫んだ。バモンの後ろにはゾウの霊獣、サイの霊獣、水の精霊が現れた。どうやら霊獣と精霊は、ゼノとアスランの報告通り魔王バモンに操られているようだ。クリフォードは物隠しの魔法を解いた。すると自身の手に大きな剣が握られていた。五十年前、魔王バモンを倒した時の剣だ。クリフォードは王となってからも剣の鍛錬を怠る事は決して無かった。馴染みある剣を握りしめ、バモンに向かって剣を構えた。
0
あなたにおすすめの小説
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる