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盛平

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メリッサのドレス

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 トランド国王のはからいで、あかりたちは舞踏会に招待された。これは勇者の称号を得たあかりたちを貴族にお披露目する意味もこめられている。勇者となれば貴族からの依頼も多くなるのだ。

 舞踏会という言葉にあかりは色めき立った。美しく着飾ったお姫さまたちが、立派な殿方とダンスを踊るのだ。村娘のあかりにとっては夢のまた夢のような世界だ。だがグリフとアスランの顔はくもっていた。どうやら舞踏会には出たくはないようだ。アスランの姉、勇者ヴイヴィアンも貴族の集まる舞踏会が大の苦手と見えて、トランド国王にあいさつをすると、そうそうに城を後にした。きっと依頼のある場所に向かったのだろう。だがヴイヴィアンはまた依頼の場所には着けないのだろうなと、あかりは思った。

 あかりはグリフとアスランの顔色をうかがいながら、おずおずと言った。

「ねぇグリフ、アスラン。私舞踏会に行ってみたい」

 あかりのその言葉を聞いた途端、グリフとアスランが急に笑顔になって言った。

「ようし、なら俺がメリッサにダンスを教えてやる!ドレスもメリッサに似合うのを土魔法で作ってやるからな?」
「いや、メリッサ。ダンスは僕が教えてあげるよ。それにドレスは僕が作ってあげる」
「はぁぁ?!バカ言ってんじゃねぇよアスラン!お前みたいなダサい男が作ったドレスなんてメリッサに着せられねぇだろ!」

 グリフとアスランは、どちらがあかりとダンスをするか。どちらがあかりにドレスを作るかでケンカを始めてしまった。あかりとティグリスとグラキエースとアポロンは、またかとため息をついた。

 舞踏会の当日、あかりたちは城内の舞踏会会場の近くにある庭園にいた。そこは季節の花々が咲き乱れる美しい庭園だった。そこでグリフはアスランにいどむように言った。

「いいかアスラン。これから俺たちでメリッサにドレスを着せていく。メリッサが気に入ったドレスに決めてもらうからな?恨みっこなしだぞ?」
「ああ、受けてたとう」

 グリフとアスランのにらみ合いを見て、あかりは大きくため息をついた。グリフとアスランの言い争いに決着がつかず、どうやら最後はあかりが決断をくださなければならないらしい。今あかりの目の前にはグリフが土魔法で作った大きな姿見の鏡が置いてあった。あかりはその鏡の前に立たされた。これからあかりは、グリフとアスランに魔法でかわるがわるドレスを着せられる。そしてあかりが気に入ったドレスでストップを言えというのだ。

 まずはグリフがあかりに魔法をかけた。あかりの身体をキラキラした光が包む。あかりが目を開けると、ピンク色でフリルが沢山ついた可愛らしいドレスに身を包んでいた。可愛い。あかりは思わず呟いた。だがすぐにアスランが魔法をかけた。今度は、黄色のドレスだ。これも可愛い。あかりがドレスのすそを持ち上げて、鏡の中の自分をよく見ようとした途端、グリフの魔法があかりを包んだ。すると、黄色のドレスから、ブルーの美しいドレスに変わった。あかりは焦って叫んだ。

「ちょっとグリフ!アスラン!早すぎるわ?!もっとゆっくり見せてよ!」

 だがグリフとアスランは、お互いににらみ合って、あかりの言葉が耳に入らないらしい。グリフとアスランは口々にドレスの色を叫んであかりのドレスを替えていく。

「赤!」
「むらさき!」
「オレンジ!」
「紺色!」
「グリーン!」
「ライトグリーン!」

 あかりは目の前の自分にくぎ付けになってから叫んだ。

「二人ともストップ!」

 そこでようやくグリフとアスランはあかりに魔法をかける事をやめた。あかりは鏡の中の自分に息を飲んだ。それほどこのドレスが美しかったからだ。胸元はゆったりと開いて、胸から腰までは濃いグリーン、そこからプリンセスラインのドレスのフリルはグリーンから淡いライトグリーンに変化していた。グリフとアスランの魔法が混じってドレスにグラデーションができたのだ。あかりはため息をつきながら言った。

「とっても素敵。私このドレスがいいわ」

 あかりの返事にグリフは大きくうなずいてから言った。

「よし。ドレスがグリーンなら、宝石はエメラルドにしよう」

 横にいたアスランもうなずいて言った。

「ああ。だけど、濃い色のエメラルドはメリッサには似合わない。透明なグリーンのエメラルドがいい」

 そう言ってアスランは、あかりの胸元で指をパチンと鳴らした。すると鏡の中のあかりは透き通ったエメラルドのペンダントをしていた。鎖の部分は小さなパールだった。次にグリフがあかりの耳元でパチンと指を鳴らす。するとあかりはエメラルドのイヤリングをしていた。グリフはあかりの髪に触れると、あかり髪をアップにまとめて、頭には小粒のエメラルドとパールをあしらったティアラをのせてくれた。グリフは芝居がかった口調であかりに言った。

「いかがですかお姫さま?」
「素敵、夢みたい。ありがとう、グリフ、アスラン」

 そこであかりは気づいた。グリフとアスランはいまだに旅装束だったからだ。あかりが二人はどうするのかと聞くと、二人は顔をしかめながら自身に魔法をかけた。グリフとアスランの姿を見てあかりはキャァと感嘆の声をあげた。それほど二人の礼服姿はカッコ良かった。

 アスランは薄いさグレーのスリーピースのタキシードだった。ドレスシャツのえり元には白いタイが結ばれていた。グリフは黒のタキシードだった。ドレスシャツの首元にはボリュームがあり、それをおさえるためにアンティークなブローチをつけていた。そのブローチの宝石は繊細な金細工でふちどられたメノウだった。だがそのブローチは、女性物のようだった。あかりはグリフとアスランに言った。

「二人ともとっても素敵、まるで王子様みたい。グリフのブローチも素敵ね?」

 あかりの言葉にグリフは穏やかな笑顔を浮かべて答えた。

「ああ、このブローチは俺の大切な人たちの形見なんだ」

 大切な人たち。あかりは思った。このブローチは、きっとグリフの事を大切に思ってくれていた人たちの持ち物だったのだろう。

 グリフはあかりに手を差し出して言った。

「さぁお姫さま。舞踏会会場までエスコートさせてください」

 あかりははにかみながらグリフの手を取った。すると、あかりの反対の手をアスランが取って優しく引いてくれた。あかりは二人にうながされ舞踏会に足を進めた。アスランはニコニコしながらあかりに言った。

「メリッサ、最初のダンスは僕と踊ってくれるかい?」
「アスラン、私ダンスなんて踊れないわ」
「大丈夫だよ。僕が教えてあげる」

 アスランの言葉にあかりがうなずくと、横で聞いていたグリフが口をはさんだ。

「メリッサと最初にダンスするのはこの俺だ!メリッサ、俺がダンスを教えてあげるから心配ないぞ?それにアスラン、お前はメリッサとダンスなんかできないぞ?」
「何だとグリフ!」

 グリフの言葉にアスランが怒る。あかりは二人に手を引かれながら、ハァッとため息をはいた。あかりたちの後ろを子虎のティグリスとドラゴンのグラキエースと小さくなった白馬のアポロンがパタパタと翼をはためかせてあきれ顔でついて来ていた。

 





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