悪の組織は正義の味方 〜 それは怪人製造ガチャポンから始まった 〜

marry

文字の大きさ
8 / 15
ジャスティス誕生

第7話 託された未来

しおりを挟む
 ここ最近、ヒーロー戦隊が魔族の村を襲撃したという話を耳にしない。

 前回の戦いで奴らもかなりの痛手を負ったのだろう。

 スカンク怪人ガッスンが味方で本当によかったよ……

 いや……

 味方でもヤバいんだけどね(笑)

 なんにしても、人間族がやって来ないってことで、ゆっくりだけど、村の復旧作業は進めることができている。

「ライトや、すまんのう。
 お前たちにばかり力仕事をさせて。
 それに、どこかから調達してきてくれた米のお陰で我々はなんとか生きながらえることができておる。
 感謝するぞ」

「なにを言ってるんですか、カインド村長。
 ここは俺が生まれ育った場所。
 それに……
 死んだ母さんだって、一刻も早い村の復興を願っているはずさ」

「うむ、うむ。
 ほんとにお前は優しい子じゃのう」

 カインド村長は目を細めて、ポンポンと俺の頭を叩いた。

 少し照れくさい……

 俺は、はにかんだ笑顔をカインド村長に向けた。

「それにしても、あのウヒョヒョ言いながら瓦礫の撤去作業をしてくれておる全身黒タイツの方々は暑くないのかのう?」

 カインド村長は腕組みしながら首を傾げる。

 確かにそうだよなあ……

 それに彼らの覆面の下はどうなってんのかな?

 のっぺら坊だったりして……

 ……まさかね。

 俺はそれ以上は少し怖くなったので、適当に答えておく。

「ああ、彼らは日差しに弱いんですよ。
 だから、ああやって全身を直射日光から守っているんですよ」

「なるほどのう……」

 俺が質問に軽く答えていると、軽トラに乗る父がこちらを向いて、何かを叫んでいた。

「ライト~ッ!
 こっちに来てくれないか~!」

「あっ、父さんが呼んでるみたいなんで、ちょっと行ってきますね」

 俺はカインド村長にペコリとお辞儀をして、その場を離れることにした。

 軽トラに近づくと、どうやらエンジンがかからないようであった。

 カチッ

 キュルルル キュルルル

 カチッ

 キュルルル キュルルル

 父さんが何度もキーを捻るが、軽トラはてこでも動きそうにない。

 俺はパネルにある燃料計を覗き込んだ。

「父さん……
 燃料計がエンプティを指してるよ」
 
「ほんとだ。
 といっても、軽トラの燃料は魔族の村じゃあほとんど手に入らないしなあ……」

 俺と父さんは腕組みしながら考える。

 ポクッ ポクッ ポクッ ポクッ

 チーンッ!

「もう一度アレするしかないなあ……」

「アレするしかないだろうねえ……」

 俺たちは目を合わせニヤリと笑った。

 ……というわけで、俺たちは今、前回と同じ小高い丘の岩場に身を潜めている。

 例によって、時刻も同じ丑三つ時……

 流石に今回は、相手も警戒しているだろうと、少数精鋭でやってきた。

 ポッポの情報によるとガソリンスタンドには軽トラが二台置いてあるらしい。

 何人かの怪人たちも運転は教えてあるのだが、念のためにと今回の作戦には父さんも参加している。

 もちろん、鳥目のポッポと騒がしいシュークは置いてきた。

 言わずもがな、トンネル担当のモグラ怪人モグモグくんと、侵入担当のリスザル怪人サスケはスタメン入りしている。

 あとはモモンガ怪人モモちゃんとハムスター怪人のハムっちを連れてきた。

 それからもうひとり……

 あまり気は進まなかったけれど、いざというときの飛び道具として、スカンク怪人のガッスンも同行させることにした。

 彼には重々言って聞かせたのだけれども……

 勝手な放屁だけは慎んでくれることを、切に願う。

「さあ、ライト。
 今日も指揮は君に任せたからね」

 父さんの言葉に俺はコクリと頷いた。

「夜明け前には、かたをつけて村へ戻ろう!
 さあ、出発だ!」

 俺の合図でモグモグくんはガソリンスタンドへ続くトンネルを掘り始める。

 俺たちも、モグモグくんに続き、街のガソリンスタンドを目指す。

「モグモグモグー!」

 モグモグくんの勢いは止まらない。

 前回よりも気持ちに余裕があるのかな?

 なんだか体も軽い気がするよ。

(ちょっとあんた!
 調子に乗るんじゃないわよ!
 リラックスと油断は別なんだからね!
 しっかりと気を引き締めなさいよ!)

「危ない、危ない。
 全くその通りだよ。
 またシュークに怒られちゃうよなあ」

 俺が自省していると、モグモグくんの動きがピタリと止まった。

 トンネルの中は腐葉土の匂いに混じり、微かに油の独特の重たい匂いも漂っている。

 どうやらガソリンスタンドの真下に到着したようである。

「それじゃあサスケ、頼んだよ」

「キュイキュイッ!」

 サスケはコクリと頷き、小さな穴からトンネルの外に出て行った。

 しばらくすると、サスケがトンネルに戻ってきた。

「軽トラは屋内です。
 内側からカギは開けてきました。
 店員などはいませんでしたので、ガソリンはお持ち帰りし放題ですよ!」

「よし、みんな行くぞ!」

 抜き足 差し足 忍び足……

 抜き足 差し足 忍び足……

 俺たちはゆっくりと事務所に忍び込む。

 キーボックスから軽トラのカギを奪うとすぐに併設している倉庫の扉を開け、ガソリンタンクと軽トラを表の給油機まで移動した。

 怪人たちは、急いでガソリンを注ぎ軽トラに積み込んでいく。

 小一時間も過ぎた頃、軽トラの荷台は満タンになった。

 俺と父さんは別々の軽トラに乗り込みキーを捻る。

キュルルル ブオン ブオン

 軽トラのエンジンが唸りを上げる。

「さあ、出発だ!」

 ヘッドライトに明かりが灯され、アクセルを踏み込もうとした瞬間……

 どこからともなく、聞き覚えのある、甲高い嫌な声が響いた。

「待て!
 逃がしはせんぞ!」

 久しぶりに見る顔だ。

 一人少ない気もするけれど……

「この世に悪が蔓延る限り、正義の炎が燃え盛る……
 レッドバード!」

「ささっと参上、ぱぱっと解決!
 ひと呼んでさすらいの翼……
 ブルーバード!」

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!
 魔族を倒せと俺を呼ぶ……
 グリーンバード!」

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり……
 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす……
 イエローバード!」

「「「「我ら……
 ヒーロー戦隊……
 バードラー!」」」」

 バッゴーンッ!

 彼らの派手なポーズとともに夜空にはカラフルな花火が打ち上がる。

「ピンクへの怨みを……
 いや……
 ピンクの仇を討たせてもらう!」

 レッドが地面を蹴り、真紅の炎が靴底を走る。

「見つかったぞ!
 急ぐぞライト!
 強行突破だ!」

 俺と父さんが強引にヒーロー戦隊を躱そうとすると、その先に一台のトレーラーが現れ道を封鎖した。

「ハッハッハッ。
 あめえんだよっ!
 何回も同じ手を食うかってんだ!
 これで逃げ道はなくなっただろ!
 カッカッカッ……」

 レッドは高笑いする。

「大首領様、大幹部様!
 私にお任せください!」

 突然、荷台に乗っていたハムっちが飛び降り、トレーラーめがけて一直線に走り出した。

 その背中は大きくもあり、寂しくもあった……

「打て~!」

 バーン バーン バーン

「グホッ……
 なんのこれしき!」

 弾丸を受けてもハムっちは走り続ける。

「どんどん打ち込め!」

 バーン

「クハッ」

 バーン

「ぬぬ……」

 フラフラになりながらも、ハムっちは走り続けた。

 やがてトレーラーまで辿り着いたハムっちは、赤く染まった自分自身の体に檄を飛ばし、ドアをこじ開けて運転手を力一杯引きずりおろした。

 運転席に飛び乗ったハムっちは、ゆっくりとアクセルを踏み込み、俺たちの逃げ道を確保した。

 トレーラーの窓を開け、こちらへ叫ぶハムっち。

「私がヒーローを食い止めます。
 どうか、お逃げください!」

「ハムっち~っ!」

 俺は叫んだ。

「何を躊躇っておられるか!
 あなた方は生き延びねばなりません!
 モグモグ!
 ガッスン!
 早くお二人を!」

「「承知した!」」

「急ぎましょう、ライト様!」

「でも、ハムっちが……
 ハムっちが……」

「彼の気持ちを無駄にしないでください!」

 そう叫んだモグモグくんの目にも涙が溢れていた……

「ライト!
 モグモグくんの言う通りだ!
 せっかくハムっちが命を賭して道を開いてくれたんだ!」

「わかったよ!」

 俺は涙を拭いアクセルを踏み込んだ。

 ブロロロローンッ!

 俺と父さんの軽トラが急発進する。

「ハムっち、先に行ってるからね。  
 絶対にすぐ追いかけてきてよ!」

 トレーラーの横をすり抜けるとき、俺は見た。

 コクリと頷き微笑み返してはいたが口元は別れを告げていた……

「さ・よ・う・な・ら……」

 俺の視界はぼやけていた……

 でも、ここでスピードを緩めるわけにはいかない。

 俺たちが逃げ延びること……

 ハムっちはそれを望んでいるのだから……

「待て!
 逃がさんぞ!」

 慌ててバードラーたちはバイクで追いかけようとする。

「行かせるか!」

 ハムっちはトレーラーを反転させ、バードラーたちに突進する。

「やばいぜ!
 あいつ――自爆する気だ!」

 レッドが叫ぶとヒーロー戦隊は、散り散りにバイクを捨てて、左右に飛び退いた。

「大首領様……
 大幹部様……
 短い間ではございましたが、充実した日々でした。
 いつか生まれ変わったとしたら……
 酒というものを飲み交わし……
 楽しく語り合いましょうぞ!
 我がジャスティスに栄光あれえっ!」

 ボッカーンッ!

 ボカ ボカ ボッカーンッ!

 炎の柱が夜空を焦がし、ガソリンスタンド一帯が火の海と化す。

「ハムっち~っ!」

 俺はバックミラー越しに彼の名前を叫んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...