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第1話 異世界召喚契約のご案内
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「いやいやいやいや……
無理無理無理無理……」
俺は全力で首と手のひらを振った。
***
—— 気がついたとき、俺はこの場に立っていた……
リビングから直行なので、スーツ姿ではあるが、靴は履いてない……
冷たい感触。
足裏には、磨き上げられた白い大理石の床……
ヒンヤリと靴下越しに冷たさが伝わってくる。
視界を上げると、巨大な白柱が何本も天へ伸びていた。
その厳かな空間はあまりにも静か過ぎて、耳の奥でキーンと言う音がこだまする。
俺はもう一度自分の足元を見た。
白で統一されている空間の中にあって、俺の立ち尽くす場所だけが異様な光を放っている。
幾何学的な円と星型の図形。
意味がわからない文字のようなもの。
そして……
白いマントとフードに身を包んだ神官たちが俺を取り囲む。
神官たちの手のひらからは青白いオーラが微かに光り、まわりの空気が共鳴し震えている。
魔法陣!?
—— ファンタジーアニメによく出てくるアレだ。
司祭ぽい人物が右手をあげると、俺を取り囲む円陣はサッと壁際に散った。
前方に視線を向けたその先には、この場に似つかわしくない豪華な椅子にふんぞり返りながら腰掛けるおっさん。
その横には、きらびやかな宝飾が施されたドレスを身に纏った女性がこちらを見据えて立っていた。
—— たぶん、王様と姫様だよなあ……
王様のドヤ顔は、腹に一物を持っているかのような表情にも見えた。
姫様は……
一瞬、蔑みの笑みを浮かべたように見えたが、俺と目が合うと、表情を一変。
期待のこもった尊敬にも似た眼差しを向けてきた……
こいつら絶対に何か企んでるよなあ。
ファンタジーアニメ好きの俺にはわかる。
俺は次の展開を予想する。
姫様が口を開いた。
「選ばれし勇者よ……」
ほらきた。
やっぱり……
そして冒頭のセリフに繋がる。
「いやいやいやいや……
無理無理無理無理……」
俺は全力で首と手のひらを振った。
どうせこのあと、魔王を倒せとか、隣国が侵略してきたから、それを阻止しろとか言う気だろ?
誰がそんなRPGの主人公みたいなことするんだよ。
考えてもみてくれ。
現実世界で、いきなり拉致されて、紛争地域に放り込まれてさ……
『お前は我々が選んだ特別な人間だからこの国のために身命を賭して戦うのだ!』って言われて、はいそうですかと答えられるかよ!
どうしてこんなことになった?
俺は冗談半分でアンケートに答えただけなのだが……
それは昨日まで遡る……
***
【○HK受信料契約のご案内】
天野 銀河 様
〒○○○-○○○○
○○県 ○○市 ○○町 ○-○
平素より○HK放送をご視聴いただき、ありがとうございます。
弊社の調査によりますと、貴宅にテレビ受信設備が設置されていることが確認されました。
○HKの放送受信契約が未加入となっております……
***
―― なにこれ?
いやいやいや、一人暮らしを始めて半年。
仕事が忙しいからテレビ見る暇があったらゆっくり寝たい……
―― てことで……
テレビなんてうちの家にないけど?
ちゃんと調べてから送ってこいよな!
ビリビリと用紙を破り、封筒と一緒にクシャっと丸めてゴミ箱にポイ!
―― そして今日……
ついさっき……
またかよ。
残業でクタクタなのに、ほんと不快な封筒だよなあ。
何度送ってきても、テレビもないしスマホにもワンセグ機能もないから加入なんてしないよ!
上着も脱がずにリビングのソファにドンッと腰掛ける。
苛立ちにまかせて、封筒ごと破り捨てようとしたとき、ふと差出人欄が目に入る。
あれ?
違う……
アルファベット4文字?
AWSK(Another World Summon Bureau)……
異世界召喚局……?
○HKじゃなくて?
興味をかきたてられ、その封筒を開けてみる。
新手の詐欺じゃないよな?
もしそうなら、なかなかの手法だよな。
異世界転生小説やアニメが好きならば、とりあえず開封まではしちゃうよな。
なになに……
***
【AWSK召喚契約のご案内】
天野 銀河 様
〒○○○-○○○○
第7宇宙ラニアケア超銀河団 乙女座超銀河団 天の川銀河 オリオン腕 太陽系 第三惑星 地球 日本国 ○○県 ○○市 ○○町 ○-○
平素よりAWSKの活動にご理解いただき、ありがとうございます。
厳正なる調査の結果、貴殿は
ヴァル=ギルティア王国
勇者候補に選出されました。
つきましては以下アンケートのご協力をお願いいたします。
***
―― AWSKの活動にご理解?
そんな活動知らねえよ!
だいたい勇者候補ってなんだよ!?
てか……
住所なげーよ!
こんなの郵便番号の意味ないだろ!
軽くツッコミを入れ、フンッと息を吐いた後、【AWSK召喚契約アンケート】に目を通す。
契約?
アンケート?
どっちなんだよ。
***
【AWSK召喚契約アンケート】
① お名前(フルネーム)
② 齢
③ 職業
④ 戦闘経験の有無
⑤ 好きな異世界ジョブ
⑥ 趣味
⑦ 特技
⑧ 健康状態・持病・アレルギーなど
⑨ 緊急時の連絡先
***
「名前は天野銀河だよ」
ボソリと呟くとボワンと用紙に名前が浮かび上がった。
えっ!?
まじか?
驚きつつも俺は次の設問に視線を移す。
「年齢25歳、職業は会社員。
すげーな。
いったいどんな仕組みだよ」
そう言いながら、次の設問へ。
「戦闘経験?
魔王を討伐ぐらいかな。
RPGだけどな」
用紙は俺の軽口を拾い上げる。
そこに記された文字は【魔王討伐経験あり】。
「ハハハ……」
苦笑いしかでてこない。
「ようし!
こうなったらいっそのこと、とことんなりきってアンケートに答えてやる!」
「好きな異世界ジョブ?
俺は勇者候補なんだろ?
それじゃあそのまま王道の勇者で!
次は趣味?
魔王軍殲滅と人助けっと……
それから、それから?」
なんだかテンションがあがってきた。
―― 特技
全ての属性魔法
剣神レベルの剣技
ドワーフレベルの鍛冶力
アイテムBOX持ち
「いやあ、楽しくなってきたなあ」
口から出るわ出るわ、嘘八百(笑)
俺はゲームの世界で思いつくままの能力を音声入力した。
「おいおい、こんなヤツいたら無双状態じゃないか!
チートにも程があるよ」
用紙に浮かぶ単語を眺め、思わず笑みが溢れる。
「次は健康状態かぁ……
最近、肩こりが酷いし寝不足なんだよなあ……
でも、勇者だから大丈夫。
健康状態は良好でいこう!」
―― 健康状態
良好
魔力と体力は魔王レベル
毒耐性あり
のどが渇けばヘドロでも美味しくいただける。
アレルギーってなに?
それ美味しいの?
アンケート用紙は俺の妄想で埋め尽くされる。
「最後に緊急連絡先かあ……」
俺はニンマリとしながら口を開いた。
「お問い合わせは第七宇宙の創造神へ!」
デマカセで埋め尽くされたアンケートは、これをもって完成した。
我ながらムチャムチャなできである。
神様が両親で能力はスーパーチート。
アンケート用紙を眺め、しばし余韻に浸っていた。
用紙の末尾に目をやると、入力後【送信】願いますと書いてある。
「ハハハ……
こんな用紙送って大丈夫なのかな?
まあ、何かの悪戯だろう」
「送信!」
特撮ヒーローの変身シーンよろしく、俺はアンケート用紙を天に掲げ、そして叫んだ。
しばしの沈黙……
その刹那……
なぜだか心臓がドクッと跳ねた気がした。
―― ほんの悪ふざけ……
このときまでは、これは何かの冗談だと思っていたんだ……
しかし、その瞬間……
アンケート用紙が発光する。
―― え?
な、なんだこれ!?
突然、耳元に機械的な声が響いた。
「勇者召喚受諾」
―― いやいやいや。
俺はアンケートに答えただけだよ。
しかし、その光は俺の戸惑いを待つことなく、全身を包み込む。
「うわ!
眩しい!
それに……
体が焼けるように熱い!」
―― やがて俺は意識を手放す。
気づいたときには白い神殿の中にいた。
勇者様?
いやいやいや。
無理無理無理。
俺は……
魔法陣の中心で、ノーをさけぶ!
無理無理無理無理……」
俺は全力で首と手のひらを振った。
***
—— 気がついたとき、俺はこの場に立っていた……
リビングから直行なので、スーツ姿ではあるが、靴は履いてない……
冷たい感触。
足裏には、磨き上げられた白い大理石の床……
ヒンヤリと靴下越しに冷たさが伝わってくる。
視界を上げると、巨大な白柱が何本も天へ伸びていた。
その厳かな空間はあまりにも静か過ぎて、耳の奥でキーンと言う音がこだまする。
俺はもう一度自分の足元を見た。
白で統一されている空間の中にあって、俺の立ち尽くす場所だけが異様な光を放っている。
幾何学的な円と星型の図形。
意味がわからない文字のようなもの。
そして……
白いマントとフードに身を包んだ神官たちが俺を取り囲む。
神官たちの手のひらからは青白いオーラが微かに光り、まわりの空気が共鳴し震えている。
魔法陣!?
—— ファンタジーアニメによく出てくるアレだ。
司祭ぽい人物が右手をあげると、俺を取り囲む円陣はサッと壁際に散った。
前方に視線を向けたその先には、この場に似つかわしくない豪華な椅子にふんぞり返りながら腰掛けるおっさん。
その横には、きらびやかな宝飾が施されたドレスを身に纏った女性がこちらを見据えて立っていた。
—— たぶん、王様と姫様だよなあ……
王様のドヤ顔は、腹に一物を持っているかのような表情にも見えた。
姫様は……
一瞬、蔑みの笑みを浮かべたように見えたが、俺と目が合うと、表情を一変。
期待のこもった尊敬にも似た眼差しを向けてきた……
こいつら絶対に何か企んでるよなあ。
ファンタジーアニメ好きの俺にはわかる。
俺は次の展開を予想する。
姫様が口を開いた。
「選ばれし勇者よ……」
ほらきた。
やっぱり……
そして冒頭のセリフに繋がる。
「いやいやいやいや……
無理無理無理無理……」
俺は全力で首と手のひらを振った。
どうせこのあと、魔王を倒せとか、隣国が侵略してきたから、それを阻止しろとか言う気だろ?
誰がそんなRPGの主人公みたいなことするんだよ。
考えてもみてくれ。
現実世界で、いきなり拉致されて、紛争地域に放り込まれてさ……
『お前は我々が選んだ特別な人間だからこの国のために身命を賭して戦うのだ!』って言われて、はいそうですかと答えられるかよ!
どうしてこんなことになった?
俺は冗談半分でアンケートに答えただけなのだが……
それは昨日まで遡る……
***
【○HK受信料契約のご案内】
天野 銀河 様
〒○○○-○○○○
○○県 ○○市 ○○町 ○-○
平素より○HK放送をご視聴いただき、ありがとうございます。
弊社の調査によりますと、貴宅にテレビ受信設備が設置されていることが確認されました。
○HKの放送受信契約が未加入となっております……
***
―― なにこれ?
いやいやいや、一人暮らしを始めて半年。
仕事が忙しいからテレビ見る暇があったらゆっくり寝たい……
―― てことで……
テレビなんてうちの家にないけど?
ちゃんと調べてから送ってこいよな!
ビリビリと用紙を破り、封筒と一緒にクシャっと丸めてゴミ箱にポイ!
―― そして今日……
ついさっき……
またかよ。
残業でクタクタなのに、ほんと不快な封筒だよなあ。
何度送ってきても、テレビもないしスマホにもワンセグ機能もないから加入なんてしないよ!
上着も脱がずにリビングのソファにドンッと腰掛ける。
苛立ちにまかせて、封筒ごと破り捨てようとしたとき、ふと差出人欄が目に入る。
あれ?
違う……
アルファベット4文字?
AWSK(Another World Summon Bureau)……
異世界召喚局……?
○HKじゃなくて?
興味をかきたてられ、その封筒を開けてみる。
新手の詐欺じゃないよな?
もしそうなら、なかなかの手法だよな。
異世界転生小説やアニメが好きならば、とりあえず開封まではしちゃうよな。
なになに……
***
【AWSK召喚契約のご案内】
天野 銀河 様
〒○○○-○○○○
第7宇宙ラニアケア超銀河団 乙女座超銀河団 天の川銀河 オリオン腕 太陽系 第三惑星 地球 日本国 ○○県 ○○市 ○○町 ○-○
平素よりAWSKの活動にご理解いただき、ありがとうございます。
厳正なる調査の結果、貴殿は
ヴァル=ギルティア王国
勇者候補に選出されました。
つきましては以下アンケートのご協力をお願いいたします。
***
―― AWSKの活動にご理解?
そんな活動知らねえよ!
だいたい勇者候補ってなんだよ!?
てか……
住所なげーよ!
こんなの郵便番号の意味ないだろ!
軽くツッコミを入れ、フンッと息を吐いた後、【AWSK召喚契約アンケート】に目を通す。
契約?
アンケート?
どっちなんだよ。
***
【AWSK召喚契約アンケート】
① お名前(フルネーム)
② 齢
③ 職業
④ 戦闘経験の有無
⑤ 好きな異世界ジョブ
⑥ 趣味
⑦ 特技
⑧ 健康状態・持病・アレルギーなど
⑨ 緊急時の連絡先
***
「名前は天野銀河だよ」
ボソリと呟くとボワンと用紙に名前が浮かび上がった。
えっ!?
まじか?
驚きつつも俺は次の設問に視線を移す。
「年齢25歳、職業は会社員。
すげーな。
いったいどんな仕組みだよ」
そう言いながら、次の設問へ。
「戦闘経験?
魔王を討伐ぐらいかな。
RPGだけどな」
用紙は俺の軽口を拾い上げる。
そこに記された文字は【魔王討伐経験あり】。
「ハハハ……」
苦笑いしかでてこない。
「ようし!
こうなったらいっそのこと、とことんなりきってアンケートに答えてやる!」
「好きな異世界ジョブ?
俺は勇者候補なんだろ?
それじゃあそのまま王道の勇者で!
次は趣味?
魔王軍殲滅と人助けっと……
それから、それから?」
なんだかテンションがあがってきた。
―― 特技
全ての属性魔法
剣神レベルの剣技
ドワーフレベルの鍛冶力
アイテムBOX持ち
「いやあ、楽しくなってきたなあ」
口から出るわ出るわ、嘘八百(笑)
俺はゲームの世界で思いつくままの能力を音声入力した。
「おいおい、こんなヤツいたら無双状態じゃないか!
チートにも程があるよ」
用紙に浮かぶ単語を眺め、思わず笑みが溢れる。
「次は健康状態かぁ……
最近、肩こりが酷いし寝不足なんだよなあ……
でも、勇者だから大丈夫。
健康状態は良好でいこう!」
―― 健康状態
良好
魔力と体力は魔王レベル
毒耐性あり
のどが渇けばヘドロでも美味しくいただける。
アレルギーってなに?
それ美味しいの?
アンケート用紙は俺の妄想で埋め尽くされる。
「最後に緊急連絡先かあ……」
俺はニンマリとしながら口を開いた。
「お問い合わせは第七宇宙の創造神へ!」
デマカセで埋め尽くされたアンケートは、これをもって完成した。
我ながらムチャムチャなできである。
神様が両親で能力はスーパーチート。
アンケート用紙を眺め、しばし余韻に浸っていた。
用紙の末尾に目をやると、入力後【送信】願いますと書いてある。
「ハハハ……
こんな用紙送って大丈夫なのかな?
まあ、何かの悪戯だろう」
「送信!」
特撮ヒーローの変身シーンよろしく、俺はアンケート用紙を天に掲げ、そして叫んだ。
しばしの沈黙……
その刹那……
なぜだか心臓がドクッと跳ねた気がした。
―― ほんの悪ふざけ……
このときまでは、これは何かの冗談だと思っていたんだ……
しかし、その瞬間……
アンケート用紙が発光する。
―― え?
な、なんだこれ!?
突然、耳元に機械的な声が響いた。
「勇者召喚受諾」
―― いやいやいや。
俺はアンケートに答えただけだよ。
しかし、その光は俺の戸惑いを待つことなく、全身を包み込む。
「うわ!
眩しい!
それに……
体が焼けるように熱い!」
―― やがて俺は意識を手放す。
気づいたときには白い神殿の中にいた。
勇者様?
いやいやいや。
無理無理無理。
俺は……
魔法陣の中心で、ノーをさけぶ!
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