美少女戦士はもう無理だって!

marry

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第10話 絶望だニャン♡

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「Skull Leader here! 
 Target ahead! 
 Mayday! 
 Mayday! 
 I can’t stop!  
 Collision imminent!
 Mayday! 
 Someone… right in front! 
 I can’t avoid it!」
(こちらスカルリーダー!
 前方に対象!
 メーデー!
 メーデー!
 止まれない!
 衝突寸前!
 メーデー!
 誰か…目の前に!
 回避できない!)

 F-35A Lightning IIのパイロットは緊急回避を行うが間に合わない。

 突然現れた障害物を目の当たりにして、パイロットは死を覚悟した。

 ボヨヨ~ンッ

 ギュッ

「へっ!?」

 パイロットは、すっとんきょうな声を漏らす。

 いまだ、F-35A Lightning IIは爆発せずに高度を保っているのだ。

 ただ、コックピットからの視界に広がっていたのは空の景色ではなく、セーラー服に赤いコートを羽織った、まん丸い物体である。

「ちょっと、止まりなさい!
 て、止まれるわけないわね。
 それに、このままじゃ私の声も聞こえてないわよね。
 それじゃあ……
 ブッチュ~ッ」

 こともあろうか、ルージュはコックピットにへばりつき、キャノピー(風防)に熱い口づけをし始めた。

「ギャ~ッ!
 な、なんだ!?」

 パイロットはさらに混乱する。

 地上の報道カメラからは、さぞかし滑稽な映像が、全国に向け、流れているに違いない。

 なにしろ、セーラー服を着たおかまが空飛ぶ戦闘機に抱きついて、熱い接吻をしているのだから。

「パイロットちゃん、聞こえるかしら?」

「えっ?
 えっ?」

 パイロットはキョロキョロと周りを見渡す。

「私に決まってるでしょうが!
 こうやって、キャノピー(風防)を直接振動させて会話しているのよ。
 よく聞きなさい。
 このままじゃ危険だわ。
 視界が悪いでしょ?
 まずは、すぐに自動操縦に切り替えるのよ。
 それぐらいの機能はあるわよね?」

「いや、視界が悪いのは、あんたのせいなんだが……」

「はあ?
 なんか言った!?」

 ルージュは凄んでみせた。

「い、いえ……
 なんでもありません……」

「それじゃあ、さっさとやりなさいよ。
 こっちは時間がないのよ!」

「は、はい!」

 ルージュのあまりの迫力に、パイロットはコクコクと頷いた。

 恐らく歴戦の猛者であろう、仮にも部隊を率いる小隊長をビビらせてしまうとは、ルージュ恐るべしである。

「Skull Leader here. 
 Forward visibility blocked! 
 Switching to automatic circular hold!」

(こちらスカルリーダー。
 前方視界が塞がれたため、自動円形ホールドに切り替える!)

 F-35A Lightning IIはパイロットの指示により、ゆっくりと円を描きながら、その場を旋回し始めた。

 他の戦闘機もそれに追随して、その場を旋回する。

「私はルージュ、そして向こうにいるのがノアールちゃんよ。
 わかっているとは思うけど、猫ヶ原市の怪獣を倒したのは私たちよ。
 説明してる暇はないの。
 あなたたちの攻撃はあの目玉ちゃんには効かないわ。
 お願い。
 音速でヤツのところまで私たちを運んでくれないかしら?
 私たちのスピードじゃバリアを突き破ることができないの」

 そのとき、会話を聞いていた部下からスカルリーダーに無線が入る。

 ビー、ガーガー……

「隊長、だめですよ。
 そんなの、上に確認しないと!」

「なっ?
 ほんとバカなの!?
 この状況で、そんな杓子定規みたいなセリフ吐いてるんじゃないわよ!
 あんたたちが守りたいのは、この国の人々か安全なところでふんぞり返っている上役のご機嫌かどっちなのよ!」

 少しの沈黙が流れた……

「スカルリーダーより各隊に。
 我が機は左翼と右翼にルージュとノアールを乗せ、限界速度にてバリアまで接近する。
 タイミングを見てセーラー戦士は機体から離脱、加速をもって突入されたし」

「隊長ちゃん!」

 ルージュの顔がパッと明るくなる。

「あそこまで言われちゃ、やるしかないですね。
 私も護衛機としてお供しますよ。
 俺も焼きがまわったかな?
 基地に帰ったら始末書だろうな」

 部下が自虐的な言葉を吐いた。

「それは心配するな。
 だいたい、こんなところに人が飛んでいるわけないじゃないか。
 逆にそんなこと言ったら、カウンセリングの上、それこそ、空の任務から降ろされるぞ。
 俺たちパイロットは空飛ぶ円盤や未知の生物と遭遇しても、見たと言ってはいけないんだよ」

「な~るほど、さすが隊長」

「さあ、通信を元のチャンネルに戻すぞ、あんまり長いあいだ切り替えたままだったら、変に思われるからな」

「了解」

 チャンネルを切り替え、スカルリーダーは本部へ接近許可を求めた。

「This is Skull Leader.
 From now on, this unit will attempt to approach the target to confirm the barrier.」
(こちらスカルリーダー。
 ただ今より、本機はターゲットへの接近を試み、バリアを確認する)

「This is Air Traffic Control. 
 Proceed with caution and maintain safety.」
(こちら航空管制。安全に留意して行動されよ)

「Roger that」
(了解だ、管制)

 そこで通信が終わるかと思われたが、別の声がスカルリーダーに届く。

「緊急事態だ。
 ここからは日本語でよい。
 てか、お前なあ……
 通信チャンネル切り替えても、全部テレビで放送されてんだよ。
 お前の機体に貼り付いてるのって、例のセーラー戦士だよなあ?
 お前たち、何か考えがあるんだろ?
 まあ、気をつけてやれよ」

「指令!」

「あぁ、またお前のせいで始末書だよ」

「ハハハ。
 帰ったら酒奢りますよ」

「山崎25年シングルモルトな」

「ちょ、待ってくださいよ。
 私の安月給でそれはちょっと」

「ごちゃごちゃ言ってんと、早く行け!」

「鬼指令!」

「なんか言ったか?」

「別に……」

 やれやれと言った感じでスカルリーダーは大きく息を吐いた。

「話しはついたようね。
 あなたが航空管制と話をしているうちに、こっちの準備はできているわ」

 左翼にはすでにノアールとヤマトがへばりつき準備を整えている。

「ひえ~っ、た、助けて~!
 【猫ニャンスーツ】のお陰で息はできるけど、めちゃめちゃ怖いんですけど~!
 どんだけ~っ!」

 右翼を見るとフウテンもギュッと翼を掴んでいる。

「さあ、私が翼まで移動したら作戦開始よ!」

 ルージュもすぐに右翼まで移動し、パチリとウィンクをスカルリーダーに送った。

「Mission to Rouge! 」
(ルージュ作戦!)

 F-35A Lightning IIはスカルリーダーの合図で一気に加速する。

 ゴゴゴゴーッ!

「マッハ1.6!
 今だ!」

 ビューンッ!

 ルージュとフウテン、ノアールとヤマトは音速でバリアに向かって飛んでいく。

 任務を終えたF-35A Lightning IIは急旋回し、その場を離脱。

 スーパーソニックとなったルージュとノアールは叫ぶ。

「情熱の真っ赤なバラよ!
 暗黒の壁を焼払えっ!」

「行っけえっ!
 漆黒の風よ!
 バリアを突き破れ~っ!」

「「せや~っ!」」

 バババババッ!

 空との境界線に亀裂が入り、二人はどんどん突き進む。

「このまま行くわよノアールちゃん!」

「もちろんよ、ルージュ!」

「スーパー ウルトラ……」

「ミラクル ダイナマイト……」

「「パーンチッ!」」

 バッゴーンッ!

 ふたりの攻撃が目玉の中心を捉えた。

 バッバーンッ!

 ビッグアイを中心に大気が大きく揺れる。

 やがてその巨大な目玉はバランスを保てなくなり、地上へ落下し始めた。

 ガーッ ドッドーンッ!

 バーンッ ボカボカボッカーンッ!

 地上のコンビナートが大爆発を起こす。

 海岸線一帯は火の海である。

 予め人々が避難していたこと、それだけは、せめてもの救いだった。

「やったか?」

 私はルージュを見た。

 しかし、ルージュは静かに首を横に振った。

 私はすぐに、炎が燃え盛る地上に視線を戻した。

「な、何あれ!?」

 業火の中には荒れ狂う巨大な怪獣の姿があった。

「マ、マジですか?
 本当にナメクジちゃんじゃないのさあ……
 このあいだルージュが裏山で次はナメクジかしらなんて言ったから、フラグが立ってたじゃないのさあ。
 私、ヌルヌルは嫌いだってば!」

「ハハハ……
 それにしても、でかくて気持ち悪いナメクジちゃんね」

「何、落ち着いてるのよ。
 ナメクジなんて、全部気持ち悪いわよ!」

 そのナメクジ怪獣は前までの怪獣の20倍は大きかった。

 黒光りしてヌメっとしたボディ。

 触角は一つで、そこに付いている大きな目玉は、上空の私たちを鋭く睨みつけていた。

「優に300メートル超えてるじゃないのさ。
 ナメクジってだけでも気持ち悪いのに、あんな巨大な怪獣と、どうやって戦えばいいのよ!」

 私たちは時間の経過とともに、恐怖心も増大する。

 武者震いなんかじゃない。

 心底恐怖して、私は体の震えが止まらなかった。

 あの冷静なルージュですら言葉を失い、ただ呆然としていた。

 私の心は【絶望】の二文字で支配されていた。
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