美少女戦士はもう無理だって!

marry

文字の大きさ
12 / 16

第12話 敗北だニャン♡

しおりを挟む
 ブロロロロ~ンッ

 ワルツは避難する人々とは反対方向へ必死に原チャリを走らせていた。

 途中警察が道を塞いでいたが、お構いなく突っ切る。

 バーンッ!

 バリバリバリッ!

「ごめんなさ~い!
 急いでるの~!」

 流石に警察も命が惜しいのだろう。

 怪獣が暴れる現場へ向かうワルツを、追いかけてくる者はいなかった。

 コンビナートの駐車場に到着すると、ワルツはエンジンも止めずに、慌てて原チャリから飛び降りた。

 ノアールとルージュを見つけたワルツはふたりに駆け寄ろうとするも、爆風に乗って瓦礫がひっきりなしに飛んでくるので、なかなか近づけない。

 ワルツはその場から、祈るしかできない。

 歯痒さで、握り締めた手からは、ポタリポタリと血が流れ落ちていた……

 -- ワルツの視界の先では、覚悟を決めたルージュとフウテンが、今まさに、ナメクジ怪獣に挑もうとしていた。

「さあ、やるわよ、フウテン!」

「合点承知!」

 ナメクジ怪獣の手前で、ルージュとフウテンは立ち止まった。

「大っきいわね」

「だね」

「核はどこ?」

「スキャンは既に終えているよ。
 目玉とボディの中心。
 この二箇所だね。
 一箇所壊したあと、すぐにもう一つを壊さないと再生しちゃうよ」

「やっぱり、そうなるわよね」

「スピード勝負ってことさ」

「あなたは知ってるでしょ?
 私はこう見えて素早いんだから」

「期待しているよ、ルージュ」

「それじゃあ、ぼちぼち行きますか」

「オッケー!」

 フウテンは私に【猫ニャンステッキ】を向けて叫んだ。

「マジカル~ニャンニャン~ラブオファーッ!」

 ビヨヨヨヨ~ン!

 フウテンの【猫ニャンステッキ】から真っ赤な光線がルージュに注がれる。

「来たわっ!
 来たわっ!
 これなのよ~っ!」

「それ、それ~っ!」

「もっと、もっとよ!
 フウテン!」

「おりゃあ~っ!
 僕の【ニャンダフルパワー】は限界突破!」

 命を懸けたフウテンの【ニャンダフルパワー】とルージュの熱い情熱【ソウルラブ】が一つになるとき、奇跡は起こる。

「そんなあなたにフォーリンラブ!
 ニャンニャン~ダイナマ~イトッ!」

 ルージュは真紅の炎を纏い情熱の塊と化す。

 それはまさに諸刃の剣……

 燃え上がれば燃え上がるほど、ルージュの体を蝕む技。

「あとは任せたよ、ルージュ……」

 バタンッ

 力を使い果たしたフウテンは、その場に倒れ込んだ。

「任せなさい!」

 ダッダッダッダッダッダッ!

「加速!」

 ギュン ギュン ギュン!

 炎の弾丸となりルージュはナメクジ怪獣に向かい、どんどん加速する。

「せやっ!」

 地面を蹴り、巨大なナメクジ怪獣に飛びかかるルージュ。

 燃え盛る情熱の炎が目玉を捉えた。

 バッコーンッ!

「ギャオーン ナメクジ~ンッ!」

 バーン バッコーン

 バーン バッコーン

 目玉の核を貫かれたナメクジ怪獣は、触角を振り乱し、今まで以上に周りのものを破壊する。

 道路に触角を強く打ちつけた瞬間、舗装に亀裂が入り、地面から水が吹き出した。

 ナメクジ怪獣の腹部からジュウっと煙が上がる。

 ナメクジ怪獣は少し驚き、水を嫌うような素振りで、触角を振り回すのをピタッとやめると、少し山側の空き地に体を反転させ、その場を離れた。

「どうしたのかしら?
 吹き出した水が、業火で蒸発したのかしら?
 いや、今は不思議がっている場合じゃないわ。
 早くもう一つの核を破壊しなくちゃ」

 ルージュは慌ててナメクジ怪獣に追い打ちをかけようとしたが……

「ググッ」

 ルージュは左肩を押さえる。

「こんなときに、痛みなんて……
 体に力が……
 お願い、もう少しだけでいいの。
 マイボディ……
 あとちょっとだけ頑張って。
 ほんの一撃でいいから!」

 激痛に耐えながら、ルージュはナメクジ怪獣の巨体めがけて、満身創痍の体をぶつけに行った。

 ズッバーンッ!

 「ナメナメ~ンッ!」

 ナメクジ怪獣の体を貫通したルージュは、そのまま地面に叩きつけられた。

 ババババ ゴロゴロ

 ガッシャーンッ

 倉庫らしき建物まで転がりなんとか止まれたものの、体はもう動かない。

 ルージュは視線だけをナメクジ怪獣に向けた。

「やったの?」

 果たして……

「ナメクジ~ンッ!」

 ルージュは見事二つ目の核を破壊した。

「やったわ」

 ルージュに安堵の笑顔が溢れた。

 その刹那……

「ナメナメクジクジナメナメクジ!
 ギャオーンッ!」

 再生……

 0コンマ数秒……

 激痛に左肩を押さえてしまったあの一瞬……

 その僅かな遅れで、二つ目の核を破壊する前に、一つ目の核が再生されてしまった。

 そして、二つ目の核も、みるみるうちに再生していく。

 ナメクジ怪獣は、何事もなかったかのように、再び暴れ出した。

 ルージュはもう動けない。

 荒れ狂うナメクジ怪獣の姿を最後に、意識を手放すのであった。

「ルージュ~!」

 ノアールは叫んだ。

「ヤマト、行くわよ!」

「了解だ」

「「せやっ!」」

 ノアールとヤマトに策はない。

 でも、ゆかなければならなかった。

「ニャンダフル~シャイニ~ングッ!」

 ピッキーンッ!

 ヌルンッ

 おおかたの予想通り、ノアールの必殺技はナメクジ怪獣に弾かれた。

「それでも、やらなくちゃ!
 ヤマト、ごめん……
 私と死んで!」

「いいよ」

 ノアールとヤマトは薄っすらと目に涙を浮かべて、微笑み合った。

「ニャンニャンフルパワー!」

 七色の光がヤマトの【猫ニャンステッキ】からノアールに放たれる。

「僕たちも限界突破だ!
 そりゃ~っ!」

 光が増すごとにヤマトはふらつき始めた。

 しかし、ヤマトはやめようとはしない。

「まだまだだ~っ!」

 ヤマトの【ニャンダフルパワー】を受け、やがてノアール自身も七色に輝き始めた。

 ピヒャーッ!

 ノアールが凄まじいオーラをまとった瞬間、ヤマトはゆっくりと崩れ落ちた。

「ヤマト……
 行ってくるわね。
 少し待っててね……」

 ヤマトを抱きしめたあと、ノアールは涙を振りほどき、踵を返した。

「そりゃ~っ!」

 地面を蹴り、拳を前に、弾丸となった七色の光はナメクジ怪獣のボディにある核を貫いた。

 グワッシャーンッ!

「ナメクジ~ンッ!」

 不意を突かれたナメクジ怪獣は、叫び声をあげ、触角にあるその大きな目で自分のボディの風穴を確認している。

「まだよ!
 ここからよ。
 もう一つの核を早く破壊しなきゃ!」

 ノアールは空中で反転し、一直線に大きな目玉めがけて飛んでいった。

 触角の横がモゾモゾと動いているような気がしたが、今はそんなことに構っている暇はない。

 違和感を感じつつも、ノアールは拳に力を集中する。

「勝てる!」

 ノアールがそう呟いたとき、左の脇腹に衝撃を受け、弾き飛ばされた。

 バッコーン

「グハッ」

 ノアールに衝撃を与えた何かは追い打ちをかけてくる。

 バーンッ!

 地面に転がるノアールの上から、新たな衝撃が二度三度と襲う。

「グハッ
 グゲッ
 ガハッ」

 薄れゆく意識のなかでノアールは呟いた。

「まさか……
 もう一つ触角を隠していたなんて……」

 やがて、ノアールもゆっくりと瞼が閉じられていった。

 無常にも、テレビクルーの置き土産となったカメラは、ふたりのセーラー戦士が倒れる様子を、全国へ流し続けていたのである。

「せんぱ~い!」

 ワルツは絶望にも似た叫び声をあげた。

「ワオーンッ!」

 そのとき、業火の情景に犬の遠吠えが響き渡った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...