ダブル魔眼の最強術師 ~前世は散々でしたが、せっかく転生したので今度は最高の人生を目指します!~

雪華慧太

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2、金と銀の瞳

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「たす……けて」

 冗談じゃない。
 助けて欲しいのはこっちの方だ。
 この怠惰を絵に描いた様なマシュマロボディに人助けなど出来るはずも無い。

 それが俺と同じように死んでこの通路に吸い込まれて来た奴の叫びなのか何なのか分からないが、救いを求めるのであればもっと相応しい相手に求めるべきであろう。
 とにかく今は他人の心配をしている余裕など無い
 ヒキニートの俺が言うことではないが自分の事は自分でやってくれ。
 と思うのだが……

「クソッ!」

 俺は声のする方向に目をやった。
 淡い光の様なものがそこに漂っている。
 小さな子供のように見えるが、物凄いスピードの中で翻弄されているためにはっきりとは分からない。
 だがそれが俺に向かって必死に手を伸ばしているのだけは分かった。

「クソッタレが!!」

 俺は引きこもりのニートだが、目の前でガキが泣き叫んでるのを見て放って置けるほどクズでもない。
 俺はその手を握り締めた。

 おそらく数分後には、巨大な光の塊に俺は激突するだろう。
 とりあえず俺は頭を抱えて身体を丸くした。
 震えている小さな子供の身体を抱え込むようにして。
 このスピードだ、なんの足しにもならんだろうがこれぐらいしか出来ることはないからな。

「安心しな、どうせ俺達は死んでるんだ。きっと痛くなんかないさ」

 そんなことは分かりはしないが、まあ気休めぐらいにはなるだろう。

「ありがとう、お兄ちゃん。わたし……」

 少女の金の鈴の様なその声が俺の頭の中に響いた。
 まあ最後ぐらい中二病のアニメの主人公張りに格好をつけてみるのも悪くはないよな。
 少女も俺の手をギュッと握り締めている。

 これがアニメなら完全にフラグがたったところだな。
 もちろん俺はロリコンじゃない。
 だが最後に誰かに必要にされるのは悪くない気分だった。

「中二病も悪くねえな……ん?」

 ぼそぼそと声が聞こえる。

「ねえルル、どうする? 『安心しな』とか言っていきなりギュッて抱きしめてくれたから、イケメンのお兄さん想像してたのにさ。あんなキザなセリフ言うのって普通イケメンでしょ? ううん、寧ろイケメンに限るでしょ?」

「悪いよぉ、ララそんなこといったら。確かにちょっとぽっちゃりしてるけど優しそうだし」

「うそぉ、ルルって男の趣味悪!!」

 うむ……何だこれは?
 この子は二重人格か何かで、二人がかりで俺をディスっているのだろうか。
 俺は改めて自分が抱きかかえてる少女を見つめた。

(何だこの子!?)

 10歳ぐらいのメチャクチャ可愛らしい顔立ちの美少女なんだが、瞳の色が左右で違う。
 左目が金で右目が銀での瞳。
 俺が軽く落ち込んでいると少女がまた一人で話し始める。

「とにかくさララ、もうこの人の魂に入るしかないよ。このまま転生したらあいつらにすぐ見つかっちゃうし」

「だね……あんもう! この際イケメンじゃなくても許してあげる!!」

 見つかる? あいつらって何のことだ?

「あ、はい。何だか分からないけど、すみません」

 大体、なんで俺が謝ってんだ。

「ちょっと、契約するからジッとしてて!」

 ララと呼ばれていた声で少女がそう言うと俺を睨む。

「へ?」

 気が付くと少女の唇が俺の顔に迫ってくる。

「ちょ! 待ってって、何を……」

 天使のような美少女は俺の頬のチュッとキスをした。
 そして少し不愉快そうな顔をして言う。 

「イケメンのお兄さんだったら唇にしてあげてもよかったのに。とにかくこれで契約完了ね、いくわよルル!」

「ええ、ララ」

 その瞬間、熱い何かが俺に入ってくるような気がした。

「あいつに見つかりたくないから、しばらく私たちは眠るわ。でもあんたに死なれたら困るから、少しだけ力を与えてあげる。またいつか会いましょう」

 目の前から少女が消え、その声はいつの間にか俺の中で響いている。

「なんだこれは!? 熱っ!!」

 瞳が焼けるの様な痛みを感じる。
 俺が思わず目を閉じたその瞬、物凄い勢いで光の玉にに向かって激突して意識を失った。
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