ダブル魔眼の最強術師 ~前世は散々でしたが、せっかく転生したので今度は最高の人生を目指します!~

雪華慧太

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47、ビクトルードの紅の騎士

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 どういうことだ?
 今、目の前にいるのは入学式の時に俺に制服を渡してくれたあのティア先輩に間違いない。

 さっきまで情熱的な赤に染まっていた髪は、今は清楚な黒に変わっている。
 それに、瞳の色まで紅から黒へと変化をしていた。
 驚くような変貌ぶりである。

 目の前でその変化を見てなければ信じられない話だが、つまり、さっきの赤毛の美少女剣士はティア先輩ってことだよな。
 その姿を見て、今度は新入生の女子生徒たちから一斉に声が上がった。

「ねえ、あれ、ティア先輩でしょ!」

「生徒会の副会長で、ビクトルードの紅の騎士の異名を持つ天才剣士! 私、大ファンなの!!」

「きゃ~! ティア先輩!!」

 どうやら、新入生の女子の中にはティア先輩の熱狂的なファンが数多くいるようだ。
 お蔭で、補足情報が手に入ったな。
 男子生徒たちからも声が上がっているが、女子生徒たちからの人気が圧倒的過ぎてその声にかき消されている。

 ビクトルードの紅の騎士か。
 確かにあの姿はその異名に相応しい。

 校庭にぶっ刺さった氷の剣の群れを一閃して、こちらに向かってきた姿を見れば天才と呼ばれるのも分かる。
 素の身体能力なのか、あの剣の力も込みなのかは分からないが間違いなくあの短距離走のタイムでいえば軽く2秒は切っての1秒台だろう。

 刀に居合、情熱的な赤い髪と瞳、そしてこの変身能力。
 そして生徒会のメンバーでもある。
 大人気になるのも分からなくもない。
 そんな中、生徒会室に向かったはずのトーマスがこちらに向かって走りながら叫ぶ声が聞こえてきた。

「ロイ! 大丈夫か! 今、校舎の裏でティア先輩とすれ違ったんだ! 事情を話す前に、もの凄い形相でそっちに向かったからさ」

 ええ、トーマス君。
 知ってますよ、今俺の目の前にいますから。
 校庭に面した校舎の奥には食堂があるからな。
 俺とアンドニウスの戦いに気が付いて、校庭に飛び出してきたのだろう。

 それにしても、もの凄い形相って……

 校庭に入りかけたトーマスがビクンと凍り付いたようにその場に立ち止まる。
 一瞬、ティア先輩がまるで殺し屋のような目でトーマスの方を見たからな。
 クールな美人なだけにおっかない。
 口は災いのもとである。

 絶対怒ってるよな。
 入学初日からアンドニウスともめ事を起こして、今日は校庭にそのアンドニウスが大の字に倒れているわけだからな。

 魔氷剣レオベウスが、墓標のようにその傍に突き刺さっているのも頂けない。
 あいつもあいつだが、それをやった俺も間違いなく問題児認定されるだろう。
 それも超ド級の。
 ティア先輩は俺を見てにっこりと笑うと言った。

「ロイ君、とにかく君が無事でよかったわ。それで、本当に君がやったの?」

 あれ?
 意外と怒ってないのかな。
 声色が優しい気がする。

「え……ええ。まあ、そうだったような気がします」

 俺は少し目を逸らすと上ずった声でそう答えた。
 ティア先輩は俺の答えに驚いたように目を見開くと、アンドニウスの傍に歩いていく。
 そして、俺に背を向けたままその清楚な顔に似合わない少しドスの利いた声で吐き捨てた。

「まったく、問題ばかり起こして。ぶっ殺すわよ」

 怖い怖い怖い!
 普通なら聞こえない程度の呟くような声だったが、校庭に突然現れた赤い髪の少女に警戒して臨戦態勢に入っていた俺の耳にはしっかりと聞こえてきた。
 アンドニウスの方を見ながらだったけど、今のは俺に言ったんだよな?
 あいつは気絶してるしさ。

 ティア先輩はこちらを振り返ると、ニッコリと笑って言った。

「ロイ君、事情を聞きたいから、この後私に少し付き合ってもらおうかしら?」

 清楚な微笑みで閉じられている瞳の奥が笑っているのか分からず、俺はその圧に負けて大きく頷いた。
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