ダブル魔眼の最強術師 ~前世は散々でしたが、せっかく転生したので今度は最高の人生を目指します!~

雪華慧太

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66、気になる話

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 朝練が終わり、俺たちは朝食をとる。
 アーシェは初めての特訓でお腹が空いたのか、可愛らしい口を大きく開けてハムと卵がのったパンを食べている。

「えへへ、美味しい! 私もロイと一緒に魔法の練習したの! そしたらお腹空いちゃって」

 嬉しそうにそう報告するアーシェに、アランとママンは顔を見合わせて微笑んだ。

「そうか、良かったなアーシェ! ほら、沢山食べろ」

「ふふ、そうよ。いっぱい食べて、アーシェ」

「うん!」

 すっかりうちに馴染んできたアーシェ。
 無邪気な笑顔で楽しそうに二人と話をしている。
 俺はアーシェの特訓の成果を二人に話した。

「アーシェは回復魔法の才能があるんだ。将来はお母さんみたいに凄いヒーラーになるかもしれないよ」

「まあ! そうなの? ふふ、楽しみね」

 もちろん、まだママンみたいな魔力や治癒能力をってわけにはいかないけど、訓練を始めたばかりだからな。
 さっきの光といい、ヒーラーとしての才能は相当なものだ。
 アーシェはママンに言う。

「私、一生懸命勉強して、ロイのお母さんのお手伝いするの! こんなに楽しい毎日のお礼がしたくて!」

「もう! アーシェったら」

 朝からママンの涙腺がまた崩壊しそうである。
 俺は二人に言った。

「今日、アリシアの店に行くんだけど、そこでアーシェの魔法道具も選ぼうと思うんだ。剣よりも杖とかの方がいいかなって思うんだけど」

 俺の言葉に二人は顔を見合わせると頷いた。

「そうだな、ロイ。アーシェがヒーラーの才能があるならその方がいいかもしれないな」

「そうね、私が一緒に行って選んであげたいんだけど、今日も患者さんが朝から来る予定になってるし」

 それを聞いて、ラフィーネが言う。

「心配ないよ、エルディ。あたしがついていくからね」

「ラフィーネ! ありがとう!」

「いいのさ、元々ついていこうと思ってたからね」

 そう言った後、先生は少し肩をすくめると二人に言う。

「でも、いいのかい? あのアリシアって子の店は、例のエバースタイン商会だろ」

 ん? 例のっていうのはどういう意味だろう。
 アリシアの店に何かあるのか。
 含みがある言い方に俺は思わず、ラフィーネや両親の方を見る。
 アランとママンは顔を見合わせると言う。

「大丈夫よ、ラフィーネ」

「ああ、昔の話だ。それに都にはあいつもいない。なんの問題もないさ」

 それを聞いてラフィーネは肩をすくめる。

「まあ、アラン、あんたがそう言うのなら私が口を挟むことじゃないね。別にあんたが直接顔を出すって話でもないし」

 気になるな、あいつって一体誰だろう。
 俺はジト目でアランを見つめると言った。

「……お父さん、まさか、エバースタイン商会に関係している誰かと変な関係があるんじゃないでしょうね? お母さんが許しても俺が許しませんよ!」

 この超絶イケメン野郎は恐ろしい程モテるからな。
 アリシアだって、うちで働いていたころはアランを見る目がすっかりハートマークになっていた。
 アランはぽかんとした顔で俺を見つめている。

「許さないってお前、なに言ってるんだ?」

 そして、ハッとしたように声を上げる。

「ば、馬鹿野郎! お前、何変なことを考えてるんだ! 俺は、昔からずっとエルディ一筋だ!!」

「うふふ、もう朝から何言ってるの、アラン」

 どうやら俺の勘違いだったようだ。
 相変わらずの熱々ぶりである。

 まあ、確かにアランはそんな器用なタイプじゃないからな。
 アランは溜め息を吐きながら言う。

「お前が気にするようなことじゃない。昔少し、因縁があった相手が商会に関係しているだけだ。もう、俺とは関係のない相手だからな。二度と会うこともない」

「そうですか、分かりました。お父さんを信じます」

「当たり前だろ!」

 ピシャリとそう言われて、逆に安心した。
 しかし、因縁がある相手か。
 気にするなと言われると余計に気になるな。

 そう言えば、確かにおかしいよな。

 アシリアの家は大商会だ。
 その令嬢であるアリシアがどうしてわざわざ、俺の家でメイドとして働いていたのだろう。
 トーマスが言っていたように花嫁修業だとしたら、貴族の屋敷とか他にも相応しい場所がありそうだ。
 アーシェが俺を見つめて不思議そうに首を傾げる。

「どうしたの? ロイ」

「はは、なんでもないさ。アーシェ」

 まあ、しかしこの様子だとアランは教えてくれそうもない。
 アランが言わないのなら、ママンもラフィーネも教えてはくれないだろう。

 後で内緒でアリシアにでも聞いてみようか?

 俺はそんなことを考えながら朝食を終えた。
 ママンが、俺たちの身支度を整えてくれてアーシェは可愛らしい洋服を着てクルリと踊るように回る。

「うわぁ! 凄く可愛いお洋服」

「ふふ、知り合いのお店に頼んだの。制服でサイズは分かってるから」

 アーシェはギュッとママンに抱きつく。

「ありがとう! ロイのお母さん」

「よく似合ってるわ。アーシェ! ロイも素敵よ」

 俺も、真新しい服に袖を通す。
 どうやら、士官学校に通い始めた俺たち二人の為に新しい服を用意してくれたようだ。

「ありがとう、お母さん!」

 そんな中、既に用意を整えたラフィーネ先生が俺たちに言う。

「あたしも準備は出来たよ」

 普段のいかにも魔導士といった姿も悪くないが、よそ行きの服を来たラフィーネ先生はヤバい程の美しさだ。
 肩に乗っているビビの姿も相まって、まさにファンタジーの世界の住人といった様子である。
 さすがエルフである。

「さてと、じゃあ二人ともそろそろ出かけるとしようか!」

 俺たちは大きく頷くと、両親に見送られて家を出ると商会へと向かうことにした。
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