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263、地下50階層

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『エイジ、あの分かれ道よ。右に曲がれば、お母様が言っていた目的地に着けるわ』

 二股に分かれた48階層の通路。
 それを右側に曲がるように、エイジに語り掛けるリイム。

『ああ、分かった。ファルティーシアさんと約束したからな』

 自らの中にいる精霊に答えるエイジ。
 ミイムはエイジの肩の上にとまると、ワクワクした顔でエイジを見上げている。
 エイジは、その小さな頭を撫でながら一向に行き先を伝える。

「みんな、あの通路の先を右に曲がろう。ファルティーシアさんからの依頼を果たしたいんだ」

 その言葉に一同は頷いた。
 ファルティーシアからの依頼の話は、皆にも伝えてある。
 ライアンは首を傾げながら。

「でもよ、いまいちピンとこないよな。人間じゃないんだし、精霊にそんなことが必要あるのか?」

「ふにゃ~、確かにそう言われるとそうだにゃ」

 一方でエリスとリアナは当然と言った顔で。

「あら、そうかしら。私には、気持ちはわかるけど?」

「そうねエリス。私もだわ」

 アンジェとオリビアは、どちらでもといった雰囲気で肩をすくめた。

「とにかく依頼をこなしましょう」

「ええ、精霊が考えてることなんて私たちには分からないもの」

 エリクは二人の言葉に頷くと。

「そうですね。それにもしエイジが言っていた通りなら、私たちにとっても悪くはない場所のはずです」

「ですね、エリクさん」

 エイジはそう言うとエリクと一緒にパーティを先導し、二股に分かれた通路を右へと進む。
 通路の先には長い階段がある。
 エイジはそれを見て思う。

(これは、随分長い階段だな)

「行こう、この先が目的地のはずだ」

 一行は頷いて階段を下りていくが明らかに49階層を通り過ぎてもなお、それは下へと続いていた。
 オリビアはそれを見て呟く。

「どうやら、直接50階層に繋がっているようね」

「ああ、そうみたいだな」

「ふにゃ~、50階層なんて初めて行くにゃ! 何だか興奮するにゃ!」

 若き警備隊のホープである三人は、顔を見合わせて頷く。
 階段の幅は下に行くほど広くなっていく。
 アンジェはシーフのスキルである【索敵】で周りを警戒しながら言った。

「周囲に、魔物はいないようね……それに見て、あの光」

 階段の先からは青く淡い光が溢れている。
 そのまま進むと、階段の壁や周りの雰囲気が今までとは違ったものになっていく。
 それまでの石材で作られた人工的な建造物が途絶え、一見大きな自然の洞窟のような場所にたどり着く。
 青い光に包まれた巨大な空洞。
 その神秘的な光景に、思わずエイジは辺りを眺めた。

「……これは」

 エリスとリアナも、エイジの隣に立って呆然と辺りを見渡す。

「凄い……」

「ほんと、こんな綺麗な場所初めて」

 巨大な空洞の壁は透き通っている。
 そして、空洞を支える自然の柱も全て青く透き通った岩で出来ていた。
 いたるところに、美しく青い結晶があるのが見える。
 まるで、水晶で出来た巨大な空洞に迷い込んだようだ。
 それは自らも淡い光を放っているが、エリスとシェリルのライトーラに照らしだされると幻想的な反射を見せる。
 エイジにとっても見たことも無いような光景だ。
 その時、アンジェは空洞の奥にある物を見て思わず叫んだ。

「ねえ、みんな! あれを見て!!」
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