成長チートになったので、生産職も極めます!

雪華慧太

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272、記憶

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(静かだ……)

 エイジは虹色の光に包まれた不思議な空間にいた。
 とても泉の中だとは思えない。
 気が付くと沢山の子供たちが、その空間の壁に向かって立っている。

(何だこの子たちは? それに、これは……)

 気が付くとその壁にはまるでテレビ画面のように、幾つもの光景が映し出されている。
 エイジは思わず声を上げた。

「嘘だろ……これって日本か?」

 壁に次々と映し出されるのは、こちらの世界の光景じゃない。
 それは明らかにエイジが元々いた世界の光景だ。
 壁の前にいる子供たちは、虹色に光りながらその映像に夢中になっている。
 そのうちの二人がエイジに近づいてきた。
 6、7歳ぐらいの男の子と女の子である。

「エイジ、どこから来たの?」

「エイジ、貴方は一体?」

 少し年長の子供がそれを見て、慌ててエイジの傍にやってくる。
 年は11、12歳ぐらいだろうか?
 可愛らしい女の子である。
 その髪は虹色に光っていた。

「心配しないでエイジ。今貴方は私たちの思考空間の中にいるの。体は無事よ、泉の中で私たちが守ってるから」

「思考空間? ……もしかして君たちは!」

 いらずらっぽく笑う少女。

「ええ、ウォータードルフィン。この姿の方が、貴方にとってはいいんじゃないかって思って。私はメグ、ここでは最年長なの」

 その時、壁一面に大きな飛行機が横切った。

「うわ~、凄い!」

「何あれ!」

「飛んでたよ、大きな鳥~」

「ゴゴ~って言ってた」

 興味津々といった子供たちが、一斉に飛行機を追って部屋を走り回る。
 メグはそれを見て、クスクスと笑うとエイジに言った。

「あの子たちが、こんなにはしゃぐのは初めて! 貴方の頭の中って本当に凄いわ、見たことも無いものばかりなんだもの!!」

 今度は、壁一面に自動車が沢山走っている道路が映った。
 夢中になる子供たち。
 メグも思わずその映像に手を叩いた。

「凄い! 凄い! エイジ、貴方一体何処から来たの? こんな世界があるなんて信じられない!」

(だろうな……この世界には存在しない場所だからな)

 エイジは溜息をつきながら言った。

「ああ。日本って言う遠い所から来たんだ」

「日本? それって、何処にあるの?」

 メグの問いにエイジは肩をすくめる。

「メグなら分かるんじゃないか? 俺の頭の中の記憶を、勝手に見ることが出来るんだから」

 エイジの言葉に、メグは途端にシュンとなる。

「ごめんなさい……私たちそんなつもりじゃあ。でも全部分かるわけじゃないのよ! 自然に感じ取れることしか分からないんだから」

(そうか、向こうから俺の記憶を探ってるわけじゃないんだな)

 無意識ともいえるレベルで考えたことや、記憶が伝わっているのだろう。

「ごめんな、意地悪なことを言って。泉に入って来たのは俺の方だもんな」

「ほんと? もう怒ってない?」

 上目遣いにエイジを見るメグ。
 エイジは笑いながら頷いた。
 その笑顔に偽りが無いと感じてメグはエイジに抱き着いた。

「ふふ、ありがとう! エイジって思った通りの人ね。オリビアはエイジが大好きなのよ! お兄さんに似てるんですって」

「オリビアが? まさか……」

 そう言いながらも、メグたちの力を考えるとあながち嘘ともいえない。
 エイジは軽く咳ばらいをして言った。

「それは仲間としてさ。メグだって仲間は好きだろう?」

「ええ、もちろん! オリビアの気持ちも、そうなのかしら?」

 エイジは力強く頷く。

「ああ、そうさ」

 その時、エイジは誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
 メグたちが一斉にその声の方向を見つめる。
 部屋に映っていた映像が消えて辺りは静かになっている。

「誰か来るわ、エイジに会いたいって。凄く心配してるの、ここに呼んでもいい?」

「ああ、でもさっきのことは秘密にしてほしいんだ。驚かせちゃうからさ」

 エイジの言葉にメグは頷いた。

「エイジには一杯知らない世界の記憶を貰ったもの、もう十分だわ」

 そう言ってメグが両手で壁に触れる。
 すると、そこから淡い光を帯びた人影が入って来た。

「エイジ!!」

 そう叫ぶと、人影はエイジに駆け寄って抱きついた。
 エリスである。

「良かった、無事だったのね! 泉に渦が出来て私、夢中で……」

 その瞬間、部屋一杯にエイジとエリスの姿が映し出される。
 月光の下で口づけをしている姿だ。

「これは……」

 エリスの顔が真っ赤になる。
 子供たちが、口々に言う。

「エリスはお姫様なんだって~」

「本物のお姫様だ」

「それでね、お姫様はエイジが好きなんだって!」

 メグがクスクスと笑う。
 エリスは茫然とエイジを見つめた。

「エイジ? ここは何処なの? 私、泉の中に入ったはずなのに……渦にのまれて気が遠くなったと思ったらここに」

 エイジはメグたちのことを説明する。
 目を丸くして驚くエリス。
 まるで精霊のように淡く光を帯びている、エイジとエリス。
 自分たちのその姿に驚きながらも、エリスは赤面して胸を隠した。
 精神体のようなものになってるからだろうか、一糸まとわぬ姿になっているからだ。
 その美しさにメグたちも溜め息をつく。

「お姫様綺麗~」

「ほんと、精霊の女王様みたいね」

 メグはエイジとエリスを見つめると口を開いた。

「ねえ、私感じたの。二人とも白王の薔薇のことを知りたいんでしょ? 私少しだけ知ってるんだ!」

────

 いつもお読み頂きましてありがとうございます!
 お知らせを一つさせて頂きます。
 今日から新しいファンタジー作品の連載を始めました。

 タイトルは『無職の最強スキルを持つ転生者! ~異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました~』
 画面の下に、新作へのリンクを貼っておきましたのでそこから作品ページに飛べるようになっています。
 楽しくお読み頂ける作品に出来たらと思いますので、ぜひこちらの作品もお気に入りに入れて頂けましたら嬉しいです!
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