118 / 254
連載
273、父の背中
しおりを挟む
「ねえ、私感じたの。二人とも白王の薔薇のことを知りたいんでしょ? 私少しだけ知ってるんだ!」
メグの言葉に、エイジとエリスは驚いたように顔を見合わせる。
エリスは思わずメグの手を握る。
「本当に? お願い教えて頂戴! どうしても、白王の薔薇が必要なの!!」
その瞬間!
まるでエリスの感情に反応したかのように、部屋の壁いっぱいに一人の男の姿が映し出された。
エリスと同じ燃えるような真紅の髪、逞しい背中とその凛々しい横顔。
まるで誰かがその男を見上げているような視線で、映像は映し出されている。
「お父様……」
その姿を見て、エリスは体を震わせて涙を流す。
(これが、国王レオンリート……エリスの父さんか)
エリスの記憶の中のレオン。
きっとそうなのだろう、とエイジは感じた。
だからレオンを見上げるように眺めているのだ。
エイジは震えるエリスの体を抱き締める。
そして思った。
幼い頃に一度しか父親に会ったことがないエリス。
繰り返し何度も映し出される光景は、悲し気な顔をして去っていく父親の後ろ姿だ。
きっとそれだけしか記憶がないのだ。
父親とのたった一つだけの記憶。
エイジの胸の中に顔を埋めてエリスは泣いた。
「私が馬鹿だったの……お父様は何度も私に会いたいって。でも、いつも私が意地を張って……」
エイジはそっとエリスの頬を撫でた。
「エリス、会いに行こう。この国の王様にじゃない、エリスの父さんに会いに。みんなで白王の薔薇を持って会いに行くんだ!」
エリスの心の中の不安を打ち消そうとして、力強くそう言って自分を抱き締めてくれる少年。
エリスは涙を拭きながら微笑む。
そして頷いた。
「……エイジ。そうよね、そしてお父様にエイジを紹介するの。お父様みたいに、この町で大好きな人に巡り合ったって」
「エリス……」
精神体になっているからだろうか、触れているだけでお互いの気持ちが伝わってくる。
まるで溶けあうような感覚に、エリスは思わず体を震わせる。
初めての体験だ。
肉体を離れている自分への違和感を感じなくなる。
まるでエイジと一つになった感覚。
エリスの体が、赤く淡い光を帯びていく。
「……エイジ」
精霊の女王のように美しい光を放つエリスに、見惚れるエイジ。
自然に、二人の顔が近づいていく。
その時──
コホンと誰かが、咳ばらいをするのが聞こえる。
メグだ。
周りには子供たちの姿をしたウォータードルフィンが集まって、二人をジッと見つめている。
「「「キスだ~」」」
はしゃぐ子供たち。
真っ赤になるエイジとエリス。
不思議な感覚に一瞬、周りが見えなくなっていたことに気が付く。
「エリスとエイジは好き同士だからいいの!」
メグはそう言って腰に手を当てる。
子供たちは部屋を駆けまわりながら。
「エイジとエリスは好き同士~」
「きっと結婚するんだよ~」
「そしたらエイジが王様になるの?」
「違うよ、エリスが女王様になるのさ!」
メグは囃し立てる仲間たちを眺めながら、溜め息をつく。
「ここに人間を呼ぶことは少ないの。今みたいに精神が深く触れ合うって、人間は慣れてないから。でも、せっかく私が白王の薔薇の話をしてあげるって言ったのに、二人でイチャイチャして!」
そう言ってぷっと頬を膨らますメグ。
そんなメグの様子に、エリスとエイジは顔を見合わせて頭を下げる。
「ごめん、メグ。でも大事なことなんだ、白王の薔薇のことなら、どんな小さなことでもいい! 俺たちに教えてくれ」
「お願いメグ! お父様を助けたいの!」
二人の真剣な表情にメグはふぅと溜め息をつく。
そして、ふふっと微笑むと。
「分かったわ。二人とも私としっかり手を繋いで!」
メグの言葉に、エイジとエリスは驚いたように顔を見合わせる。
エリスは思わずメグの手を握る。
「本当に? お願い教えて頂戴! どうしても、白王の薔薇が必要なの!!」
その瞬間!
まるでエリスの感情に反応したかのように、部屋の壁いっぱいに一人の男の姿が映し出された。
エリスと同じ燃えるような真紅の髪、逞しい背中とその凛々しい横顔。
まるで誰かがその男を見上げているような視線で、映像は映し出されている。
「お父様……」
その姿を見て、エリスは体を震わせて涙を流す。
(これが、国王レオンリート……エリスの父さんか)
エリスの記憶の中のレオン。
きっとそうなのだろう、とエイジは感じた。
だからレオンを見上げるように眺めているのだ。
エイジは震えるエリスの体を抱き締める。
そして思った。
幼い頃に一度しか父親に会ったことがないエリス。
繰り返し何度も映し出される光景は、悲し気な顔をして去っていく父親の後ろ姿だ。
きっとそれだけしか記憶がないのだ。
父親とのたった一つだけの記憶。
エイジの胸の中に顔を埋めてエリスは泣いた。
「私が馬鹿だったの……お父様は何度も私に会いたいって。でも、いつも私が意地を張って……」
エイジはそっとエリスの頬を撫でた。
「エリス、会いに行こう。この国の王様にじゃない、エリスの父さんに会いに。みんなで白王の薔薇を持って会いに行くんだ!」
エリスの心の中の不安を打ち消そうとして、力強くそう言って自分を抱き締めてくれる少年。
エリスは涙を拭きながら微笑む。
そして頷いた。
「……エイジ。そうよね、そしてお父様にエイジを紹介するの。お父様みたいに、この町で大好きな人に巡り合ったって」
「エリス……」
精神体になっているからだろうか、触れているだけでお互いの気持ちが伝わってくる。
まるで溶けあうような感覚に、エリスは思わず体を震わせる。
初めての体験だ。
肉体を離れている自分への違和感を感じなくなる。
まるでエイジと一つになった感覚。
エリスの体が、赤く淡い光を帯びていく。
「……エイジ」
精霊の女王のように美しい光を放つエリスに、見惚れるエイジ。
自然に、二人の顔が近づいていく。
その時──
コホンと誰かが、咳ばらいをするのが聞こえる。
メグだ。
周りには子供たちの姿をしたウォータードルフィンが集まって、二人をジッと見つめている。
「「「キスだ~」」」
はしゃぐ子供たち。
真っ赤になるエイジとエリス。
不思議な感覚に一瞬、周りが見えなくなっていたことに気が付く。
「エリスとエイジは好き同士だからいいの!」
メグはそう言って腰に手を当てる。
子供たちは部屋を駆けまわりながら。
「エイジとエリスは好き同士~」
「きっと結婚するんだよ~」
「そしたらエイジが王様になるの?」
「違うよ、エリスが女王様になるのさ!」
メグは囃し立てる仲間たちを眺めながら、溜め息をつく。
「ここに人間を呼ぶことは少ないの。今みたいに精神が深く触れ合うって、人間は慣れてないから。でも、せっかく私が白王の薔薇の話をしてあげるって言ったのに、二人でイチャイチャして!」
そう言ってぷっと頬を膨らますメグ。
そんなメグの様子に、エリスとエイジは顔を見合わせて頭を下げる。
「ごめん、メグ。でも大事なことなんだ、白王の薔薇のことなら、どんな小さなことでもいい! 俺たちに教えてくれ」
「お願いメグ! お父様を助けたいの!」
二人の真剣な表情にメグはふぅと溜め息をつく。
そして、ふふっと微笑むと。
「分かったわ。二人とも私としっかり手を繋いで!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。