成長チートになったので、生産職も極めます!

雪華慧太

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273、父の背中

「ねえ、私感じたの。二人とも白王の薔薇のことを知りたいんでしょ? 私少しだけ知ってるんだ!」

 メグの言葉に、エイジとエリスは驚いたように顔を見合わせる。
 エリスは思わずメグの手を握る。

「本当に? お願い教えて頂戴! どうしても、白王の薔薇が必要なの!!」

 その瞬間!
 まるでエリスの感情に反応したかのように、部屋の壁いっぱいに一人の男の姿が映し出された。
 エリスと同じ燃えるような真紅の髪、逞しい背中とその凛々しい横顔。
 まるで誰かがその男を見上げているような視線で、映像は映し出されている。

「お父様……」

 その姿を見て、エリスは体を震わせて涙を流す。

(これが、国王レオンリート……エリスの父さんか)

 エリスの記憶の中のレオン。
 きっとそうなのだろう、とエイジは感じた。
 だからレオンを見上げるように眺めているのだ。
 エイジは震えるエリスの体を抱き締める。
 そして思った。

 幼い頃に一度しか父親に会ったことがないエリス。
 繰り返し何度も映し出される光景は、悲し気な顔をして去っていく父親の後ろ姿だ。
 きっとそれだけしか記憶がないのだ。
 父親とのたった一つだけの記憶。
 エイジの胸の中に顔を埋めてエリスは泣いた。

「私が馬鹿だったの……お父様は何度も私に会いたいって。でも、いつも私が意地を張って……」

 エイジはそっとエリスの頬を撫でた。

「エリス、会いに行こう。この国の王様にじゃない、エリスの父さんに会いに。みんなで白王の薔薇を持って会いに行くんだ!」

 エリスの心の中の不安を打ち消そうとして、力強くそう言って自分を抱き締めてくれる少年。
 エリスは涙を拭きながら微笑む。
 そして頷いた。

「……エイジ。そうよね、そしてお父様にエイジを紹介するの。お父様みたいに、この町で大好きな人に巡り合ったって」

「エリス……」

 精神体になっているからだろうか、触れているだけでお互いの気持ちが伝わってくる。
 まるで溶けあうような感覚に、エリスは思わず体を震わせる。
 初めての体験だ。
 肉体を離れている自分への違和感を感じなくなる。
 まるでエイジと一つになった感覚。
 エリスの体が、赤く淡い光を帯びていく。

「……エイジ」

 精霊の女王のように美しい光を放つエリスに、見惚れるエイジ。
 自然に、二人の顔が近づいていく。
 その時──
 コホンと誰かが、咳ばらいをするのが聞こえる。
 メグだ。
 周りには子供たちの姿をしたウォータードルフィンが集まって、二人をジッと見つめている。

「「「キスだ~」」」

 はしゃぐ子供たち。
 真っ赤になるエイジとエリス。
 不思議な感覚に一瞬、周りが見えなくなっていたことに気が付く。

「エリスとエイジは好き同士だからいいの!」

 メグはそう言って腰に手を当てる。
 子供たちは部屋を駆けまわりながら。

「エイジとエリスは好き同士~」

「きっと結婚するんだよ~」

「そしたらエイジが王様になるの?」

「違うよ、エリスが女王様になるのさ!」

 メグは囃し立てる仲間たちを眺めながら、溜め息をつく。

「ここに人間を呼ぶことは少ないの。今みたいに精神が深く触れ合うって、人間は慣れてないから。でも、せっかく私が白王の薔薇の話をしてあげるって言ったのに、二人でイチャイチャして!」

 そう言ってぷっと頬を膨らますメグ。
 そんなメグの様子に、エリスとエイジは顔を見合わせて頭を下げる。

「ごめん、メグ。でも大事なことなんだ、白王の薔薇のことなら、どんな小さなことでもいい! 俺たちに教えてくれ」

「お願いメグ! お父様を助けたいの!」

 二人の真剣な表情にメグはふぅと溜め息をつく。
 そして、ふふっと微笑むと。

「分かったわ。二人とも私としっかり手を繋いで!」
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