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27、隠れ里の長
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「え? ああ、俺は裕樹っていいます」
こんな綺麗な人にべた褒めされると照れくさくなってくる。
巫女のような衣装を着てこちらに歩いてくるカレンさんの右手には、少し和風な感じの金細工の腕輪が嵌められていて、そこのつけられた鈴が歩くたびにシャンと鳴る。
それに合わせて大きな胸も揺れていた。
「ユウキか、良い名じゃ」
ていうか、凄くスタイルがいいよなこの人。
出るところが出て引っ込むところが引っ込んだ大人の女性って感じだ。
そのスタイルの良さは元の世界のトップモデルでもちょっと敵わないだろう。
ナナとレイラがジト目で俺を見ている。
「……ちょっと裕樹どこ見てるのよ?」
「ほんと、ちょっと褒められたからってだらしない顔しちゃって」
「ちょ! そ、そんなんじゃないって!」
俺が悪いんじゃない。
だって、おばば様だって聞いてたのにこんな人が出てきたら誰だって驚くだろ?
大体幾つなんだこの人。
見た感じは若いけど、ククルのおばば様なんだよな。
そんな俺たちを眺めながらカレンさんは楽し気に笑った。
そして、ククルに向かって手を広げる。
俺はそれを見てククルを地面に下ろした。
「はう~、おばば様ぁ!!」
ククルはべそをかきながらカレンさんの胸に抱きついた。
「おばば様! ごめんなさいなのです、ククルがいいつけを破ったからなのです!」
「もう良いのじゃ、ククル。ククルにこうしてまた会えたのじゃからな」
しっかりと抱き合う二人を見て、ツンとしていたナナとレイラもようやく笑顔になった。
俺はそんな二人の肩をポンと叩く。
「良かったなククル! なあ、ナナ、レイラ」
「ええ、裕樹!」
「ほんとね、助け出せて良かったわ!」
先ほど俺たちに襲い掛かってきた白い仮面の剣士たちは、皆ククルを抱くカレンさんの傍で跪いている。
ナナが俺に言った。
「ねえ、裕樹。それにしても、ククルのおばば様って偉い人みたいね」
「ああ、そうだな」
他の白狼族の人たちとは違って、巫女のような格好と三本の尻尾も特徴的だ。
レイラが改めて彼女に俺たちのことを紹介した。
「私はレイラ、聞いていると思うけどギルドを通して貴方たちの依頼を受けた者よ。ククルをさらった連中は痛い目を合わせて今、仲間が護送中だから安心して。この二人はユウキとナナ、今回の仕事に手を貸してくれたの。信頼できる相手よ、私が保証するわ」
その言葉にカレンさんはククルを抱き上げると頷いた。
「わらわはカレン。白狼族の長じゃ。そなたが銀狼の乙女じゃな、話は聞いておる。ククルをよくぞ助けてくれた、感謝するぞえ。それからユウキとナナ、そなたたちにも礼を言わねばならぬようじゃな」
どうやらこの人がこの隠れ里の長のようだ。
確かにそんな雰囲気はある。
周りの白狼族たちから敬われているのが分かるもんな。
俺とナナは首を横に振る。
「いえ、ククルが仲間のところに戻れたなら俺はそれで充分ですから」
「そうね! 裕樹」
ナナも同じ気持ちなのだろう。
それにククルと一緒に旅が出来て俺たちも楽しかったもんな。
小さいけど元気一杯なククルを見てるとさ、こちらも楽しくなってくる。
レイラはふぅと息を吐く。
「でも、驚いたわ。依頼を果たして訪ねてみたら、いきなりあの霧だもの」
「あいすまぬことをした。人間と何者かが突然、聖域に入り込むのを感じた故にめくらましの術を。あれは、視界だけではなく嗅覚も鈍らせるゆえ、慣れておる社の守りの者たちも直ぐにはそなたとククルじゃとは気が付かなかったようじゃ」
レイラは肩をすくめた。
「相手がユウキで良かったわ。本当はギルドを通じてククルを返すはずだったんだけど、少しでも早い方がいいと思って。この近くに隠れ里がある事以外は私もよく知らなくて。貴方達の聖域に勝手に入ってしまったことは謝るわ」
その言葉に俺も頷いた。
「だな! カレンさん、すみませんでした。俺たちここが貴方たちの聖域だなんて知らなくて」
「そうよ、わざとじゃないだから」
ナナもそう言って俺に身を寄せる。
さっき一斉に周囲から襲い掛かられた時のことを思い出したのだろう。
カレンさんは楚々とした表情で微笑む。
「分かっておる。そなたたちは恩人じゃ。それに先ほどの凄まじき剣の腕。この者たちの木刀をたった一人で切り落としながらも、決して誰も傷つけはせなんだ。これ程の男が偽りを述べるとは思えぬゆえな」
彼女に仕えている白い面をかぶった男たちも大きく頷いた。
「確かに!」
「驚くほどの程の技の切れだった。我らを切り伏せようと思えば出来ただろうに」
「まだお若いが余程名のある武人と見た」
俺は頭を掻く。
「名のある武人って……い、いえ、それほどでも」
名があるどころか、昨日剣士になったばかりだとはとても言えないよな。
狩人と剣士、この二つの職業を選んでる時の俺の運動能力は我ながらとんでもないことになってるし。
気配の察知能力もそうだけど、狩人としての柔軟な戦闘術と剣士としての技の冴えがいい具合にミックスされているのが分かる。
この世界に俺以外にカンストした剣士がいるのかどうかは知らないけど、普通の剣士とは全く動きや戦い方が違うはずだ。
レイラが狼剣士ならこの状態の俺は狩人剣士って感じだよな。
そんな職業があるのかどうかは知らないけどさ。
ククルはまるで自分のことのようにカレンさんたちに胸を張る。
「ユウキお兄ちゃん強いのです! おっきなおっきな猪もやっつけたです! ククルを助けてくれたです!!」
スカーフェイスに襲われたときのことを言っているんだろう。
それを聞いて彼女たちはレイラが持っている大きな角を見た。
カレンさんが目を見開く。
「まさか、それはスカーフェイスの角かえ!?」
レイラも少し自慢げに腰に手を当てると頷いた。
「ええ、ユウキがやっつけたの。恰好良かったんだから!」
まるで自分のことのように誇らしげなククルとレイラ。
ナナも頷く。
「そうよ、裕樹は凄いんだから!」
仲間たちに褒められて俺は思わず頭を掻いた。
「突然ナナやククルに襲い掛かってきたから俺も夢中で」
その言葉に白い面をした男たちが声を上げる。
「ドリルホーンの中でも奴は別格だ。それを倒すとは」
「ああ、手の付けられぬあの暴れ猪を」
カレンさんは俺にもう一度頭を下げる。
「ほんにありがたいことよ。あの大猪には我らも難儀しておったのじゃ」
彼女はククルを地面に下ろすと、俺の手をそっと握った。
「感謝するぞえ、勇者よ。ククルもこれほど懐いて、人間にしておくのは惜しい。ほんに好ましいおのこじゃ」
なんだろう。
ナナやレイラとは少し違った大人の魅力と神秘的な香りがその長い髪から漂ってくる。
もふもふとした白い尻尾が三本、優雅に揺れているのを見ると、本当に異世界に来たんだなと思わずにはいられない。
俺は思わず赤面しながら答える。
「ゆ、勇者だなんて」
むしろ勇者失格だって追い出されたんだけどさ。
ナナとレイラが何故か俺を睨んでいる。
「裕樹ったら、褒めたら直ぐこれだもの。ほんとだらしない顔しちゃって!」
「ほんと!」
ククルはカレンさんのことを真似して俺を見上げると言った。
「ほんに好ましいおのこなのです! ククルも、お姉ちゃんたちもユウキお兄ちゃんこと大好きなのです!」
それを聞いてナナとレイラが顔を赤くして慌てて言った。
「く、ククルってば! そんなんじゃないから」
「そ、そうよ。私は相棒としてユウキのことをね……」
ククルはそれを聞いてしょんぼりと指をくわえた。
「嫌いですか? ククルはお兄ちゃんが大好きなのです」
ナナとレイラは顔を見合わせるとツンとしながらも俺を眺めてククルに答えた。
「ま、まあ好きか嫌いかっていったら……す、好きよ」
「私だって……どちらかと言えば好きだわ。な、仲間だもの当然よね!」
俺は苦笑しながら二人に言う。
「どちらかと言えばって酷いな。俺は二人のことが好きだよ」
ナナはいつだって俺を励ましてくれるし、そのおかげで何度も勇気が湧いてきた。
それにレイラはちょっと大食いなところはあるけど、真っすぐだし本当に気のいい仲間だもんな。
俺はそう思って笑顔でそう言うと、二人は何故かますます真っ赤になっていく。
「は!? す、好きって馬鹿じゃないのいきなり!」
「そ、そうよ!」
その様子を見て俺も慌てて言い直した。
「ちょ! そ、そういう意味じゃないからな? 仲間として好きだってことだからさ!」
カレンさんはそんな俺たちを眺めながら楽し気に笑った。
「ほんに愉快じゃこと。そなたたちには礼をせねばな。これから宴の席を設けようと思うが、構わぬか?」
それを聞いて、俺たちは顔を見合わせた。
俺はレイラに尋ねる。
「なあ、レイラ。構わないかな? せっかくの話だしさ」
「そうね。ユウキの馬車もあるから、明日の朝早くに発てば問題ないだろうし。それに……」
レイラがさっき捕まえ損ねた背赤鱒が、川の中で見事なジャンプを見せるのを横目で見る。
背中がうっすらと赤いけど大きなニジマスみたいな感じだな。
それに合わせてレイラのお腹がくぅと可愛らしい音で鳴った。
「あんなの見せられたら余計、お腹減っちゃったもの」
そう言って耳をぺたんと垂れさせてこちらを見るレイラを眺めながら、俺とナナは顔を見合わせて笑った。
こんな綺麗な人にべた褒めされると照れくさくなってくる。
巫女のような衣装を着てこちらに歩いてくるカレンさんの右手には、少し和風な感じの金細工の腕輪が嵌められていて、そこのつけられた鈴が歩くたびにシャンと鳴る。
それに合わせて大きな胸も揺れていた。
「ユウキか、良い名じゃ」
ていうか、凄くスタイルがいいよなこの人。
出るところが出て引っ込むところが引っ込んだ大人の女性って感じだ。
そのスタイルの良さは元の世界のトップモデルでもちょっと敵わないだろう。
ナナとレイラがジト目で俺を見ている。
「……ちょっと裕樹どこ見てるのよ?」
「ほんと、ちょっと褒められたからってだらしない顔しちゃって」
「ちょ! そ、そんなんじゃないって!」
俺が悪いんじゃない。
だって、おばば様だって聞いてたのにこんな人が出てきたら誰だって驚くだろ?
大体幾つなんだこの人。
見た感じは若いけど、ククルのおばば様なんだよな。
そんな俺たちを眺めながらカレンさんは楽し気に笑った。
そして、ククルに向かって手を広げる。
俺はそれを見てククルを地面に下ろした。
「はう~、おばば様ぁ!!」
ククルはべそをかきながらカレンさんの胸に抱きついた。
「おばば様! ごめんなさいなのです、ククルがいいつけを破ったからなのです!」
「もう良いのじゃ、ククル。ククルにこうしてまた会えたのじゃからな」
しっかりと抱き合う二人を見て、ツンとしていたナナとレイラもようやく笑顔になった。
俺はそんな二人の肩をポンと叩く。
「良かったなククル! なあ、ナナ、レイラ」
「ええ、裕樹!」
「ほんとね、助け出せて良かったわ!」
先ほど俺たちに襲い掛かってきた白い仮面の剣士たちは、皆ククルを抱くカレンさんの傍で跪いている。
ナナが俺に言った。
「ねえ、裕樹。それにしても、ククルのおばば様って偉い人みたいね」
「ああ、そうだな」
他の白狼族の人たちとは違って、巫女のような格好と三本の尻尾も特徴的だ。
レイラが改めて彼女に俺たちのことを紹介した。
「私はレイラ、聞いていると思うけどギルドを通して貴方たちの依頼を受けた者よ。ククルをさらった連中は痛い目を合わせて今、仲間が護送中だから安心して。この二人はユウキとナナ、今回の仕事に手を貸してくれたの。信頼できる相手よ、私が保証するわ」
その言葉にカレンさんはククルを抱き上げると頷いた。
「わらわはカレン。白狼族の長じゃ。そなたが銀狼の乙女じゃな、話は聞いておる。ククルをよくぞ助けてくれた、感謝するぞえ。それからユウキとナナ、そなたたちにも礼を言わねばならぬようじゃな」
どうやらこの人がこの隠れ里の長のようだ。
確かにそんな雰囲気はある。
周りの白狼族たちから敬われているのが分かるもんな。
俺とナナは首を横に振る。
「いえ、ククルが仲間のところに戻れたなら俺はそれで充分ですから」
「そうね! 裕樹」
ナナも同じ気持ちなのだろう。
それにククルと一緒に旅が出来て俺たちも楽しかったもんな。
小さいけど元気一杯なククルを見てるとさ、こちらも楽しくなってくる。
レイラはふぅと息を吐く。
「でも、驚いたわ。依頼を果たして訪ねてみたら、いきなりあの霧だもの」
「あいすまぬことをした。人間と何者かが突然、聖域に入り込むのを感じた故にめくらましの術を。あれは、視界だけではなく嗅覚も鈍らせるゆえ、慣れておる社の守りの者たちも直ぐにはそなたとククルじゃとは気が付かなかったようじゃ」
レイラは肩をすくめた。
「相手がユウキで良かったわ。本当はギルドを通じてククルを返すはずだったんだけど、少しでも早い方がいいと思って。この近くに隠れ里がある事以外は私もよく知らなくて。貴方達の聖域に勝手に入ってしまったことは謝るわ」
その言葉に俺も頷いた。
「だな! カレンさん、すみませんでした。俺たちここが貴方たちの聖域だなんて知らなくて」
「そうよ、わざとじゃないだから」
ナナもそう言って俺に身を寄せる。
さっき一斉に周囲から襲い掛かられた時のことを思い出したのだろう。
カレンさんは楚々とした表情で微笑む。
「分かっておる。そなたたちは恩人じゃ。それに先ほどの凄まじき剣の腕。この者たちの木刀をたった一人で切り落としながらも、決して誰も傷つけはせなんだ。これ程の男が偽りを述べるとは思えぬゆえな」
彼女に仕えている白い面をかぶった男たちも大きく頷いた。
「確かに!」
「驚くほどの程の技の切れだった。我らを切り伏せようと思えば出来ただろうに」
「まだお若いが余程名のある武人と見た」
俺は頭を掻く。
「名のある武人って……い、いえ、それほどでも」
名があるどころか、昨日剣士になったばかりだとはとても言えないよな。
狩人と剣士、この二つの職業を選んでる時の俺の運動能力は我ながらとんでもないことになってるし。
気配の察知能力もそうだけど、狩人としての柔軟な戦闘術と剣士としての技の冴えがいい具合にミックスされているのが分かる。
この世界に俺以外にカンストした剣士がいるのかどうかは知らないけど、普通の剣士とは全く動きや戦い方が違うはずだ。
レイラが狼剣士ならこの状態の俺は狩人剣士って感じだよな。
そんな職業があるのかどうかは知らないけどさ。
ククルはまるで自分のことのようにカレンさんたちに胸を張る。
「ユウキお兄ちゃん強いのです! おっきなおっきな猪もやっつけたです! ククルを助けてくれたです!!」
スカーフェイスに襲われたときのことを言っているんだろう。
それを聞いて彼女たちはレイラが持っている大きな角を見た。
カレンさんが目を見開く。
「まさか、それはスカーフェイスの角かえ!?」
レイラも少し自慢げに腰に手を当てると頷いた。
「ええ、ユウキがやっつけたの。恰好良かったんだから!」
まるで自分のことのように誇らしげなククルとレイラ。
ナナも頷く。
「そうよ、裕樹は凄いんだから!」
仲間たちに褒められて俺は思わず頭を掻いた。
「突然ナナやククルに襲い掛かってきたから俺も夢中で」
その言葉に白い面をした男たちが声を上げる。
「ドリルホーンの中でも奴は別格だ。それを倒すとは」
「ああ、手の付けられぬあの暴れ猪を」
カレンさんは俺にもう一度頭を下げる。
「ほんにありがたいことよ。あの大猪には我らも難儀しておったのじゃ」
彼女はククルを地面に下ろすと、俺の手をそっと握った。
「感謝するぞえ、勇者よ。ククルもこれほど懐いて、人間にしておくのは惜しい。ほんに好ましいおのこじゃ」
なんだろう。
ナナやレイラとは少し違った大人の魅力と神秘的な香りがその長い髪から漂ってくる。
もふもふとした白い尻尾が三本、優雅に揺れているのを見ると、本当に異世界に来たんだなと思わずにはいられない。
俺は思わず赤面しながら答える。
「ゆ、勇者だなんて」
むしろ勇者失格だって追い出されたんだけどさ。
ナナとレイラが何故か俺を睨んでいる。
「裕樹ったら、褒めたら直ぐこれだもの。ほんとだらしない顔しちゃって!」
「ほんと!」
ククルはカレンさんのことを真似して俺を見上げると言った。
「ほんに好ましいおのこなのです! ククルも、お姉ちゃんたちもユウキお兄ちゃんこと大好きなのです!」
それを聞いてナナとレイラが顔を赤くして慌てて言った。
「く、ククルってば! そんなんじゃないから」
「そ、そうよ。私は相棒としてユウキのことをね……」
ククルはそれを聞いてしょんぼりと指をくわえた。
「嫌いですか? ククルはお兄ちゃんが大好きなのです」
ナナとレイラは顔を見合わせるとツンとしながらも俺を眺めてククルに答えた。
「ま、まあ好きか嫌いかっていったら……す、好きよ」
「私だって……どちらかと言えば好きだわ。な、仲間だもの当然よね!」
俺は苦笑しながら二人に言う。
「どちらかと言えばって酷いな。俺は二人のことが好きだよ」
ナナはいつだって俺を励ましてくれるし、そのおかげで何度も勇気が湧いてきた。
それにレイラはちょっと大食いなところはあるけど、真っすぐだし本当に気のいい仲間だもんな。
俺はそう思って笑顔でそう言うと、二人は何故かますます真っ赤になっていく。
「は!? す、好きって馬鹿じゃないのいきなり!」
「そ、そうよ!」
その様子を見て俺も慌てて言い直した。
「ちょ! そ、そういう意味じゃないからな? 仲間として好きだってことだからさ!」
カレンさんはそんな俺たちを眺めながら楽し気に笑った。
「ほんに愉快じゃこと。そなたたちには礼をせねばな。これから宴の席を設けようと思うが、構わぬか?」
それを聞いて、俺たちは顔を見合わせた。
俺はレイラに尋ねる。
「なあ、レイラ。構わないかな? せっかくの話だしさ」
「そうね。ユウキの馬車もあるから、明日の朝早くに発てば問題ないだろうし。それに……」
レイラがさっき捕まえ損ねた背赤鱒が、川の中で見事なジャンプを見せるのを横目で見る。
背中がうっすらと赤いけど大きなニジマスみたいな感じだな。
それに合わせてレイラのお腹がくぅと可愛らしい音で鳴った。
「あんなの見せられたら余計、お腹減っちゃったもの」
そう言って耳をぺたんと垂れさせてこちらを見るレイラを眺めながら、俺とナナは顔を見合わせて笑った。
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