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おねしょの話

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休日の遅い朝、寝汗のようなじっとりとした不快感でようやく目を覚ました。
寝ぼけながら身を捩ると、明らかに濡れていることがわかった。グショ…と嫌な感覚に鳥肌が立ち背筋が凍る。
「ぅ、わ……」
あまりの出来事に思わず声が出る。こんな失敗、小学生以来だ。
嫌な出来事は続く。
俺がなかなか起きないから心配したらしい同居人が部屋の扉をノックする。俺は焦って布団に潜り込んだ。濡れているのが気持ち悪い。
「蓮、起きてる?ってか大丈夫?」
「別に、何もないけど?今起きるし……」
「……ふーん。それなら部屋入っていい?」
「いや、今起きるから!来るな!」
「はぁ……入るよ」
俺の叫びを無視して何かを察したらしい同居人が部屋に入ってくる。それを音から察して、中から布団を握りしめる。
「ほら出ておいで。なんでもないなら出てこれるでしょ?」
「やだ……こないでって言った……」
「うん、言ってたね。でも今の蓮絶対嘘ついてるでしょ。それくらいわかるんだよ。何年一緒にいると思ってんの」
布団越しに背中をさすられる。それに安心する反面未だに緊張している。もう逃げられないし、どうなるかなんてわかってるのにこんな姿を見られたくなくて、布団から出ることができない。
何年一緒にいたって恥ずかしいものは恥ずかしいし、何より俺の方が年上なのに。
「何があっても今さら驚かないって……布団、めくるからね」
そう言うと俺の抵抗も虚しく布団を剥ぎ取られてしまった。
ぐしょぐしょに濡れたベッドと俺の寝巻きが露わになる。
あまりの羞恥に耐えきれず枕に顔をうずめた。
「っ、みるな……」
「あー……やっちゃったね。そっちだとは思わなくて……配慮が足りなかった。ごめん」
枕で隠した顔で唇を噛んで泣くのを堪える。油断したら泣くし、なんなら堪えきれていない。
慰めるように頭を撫でられて、優しく言葉をかけられたらだめだった。「配慮が足りなかった」と言われたってそもそも俺がこんな失敗しなければよかったのにと惨めさに襲われる。
「俺がこっち片付けるから蓮は風呂入ってきな」
「やだ、きたないからっ、ぅ、おれがやる」
「だーめ。汚いなんて思わないし、そのままだと気持ち悪いでしょ?ここは俺に任せて蓮は風呂ね」
「ん、う”~……ひっ、ぅ」
おねしょして、バレて泣くとか救いがない。それも年下の前で、しかも年下に慰められて。年上の尊厳なんてあったもんじゃない。いや、そんなもの気にしたことはなかったが、それは今までこいつの前で情けない思いをすることがなかったからだと思う。
「そんな気にしなくていいのに……歩ける?歩けないなら俺が運んでくけど?」
「っ、ふ、歩けない……運んで、ほしっ……」
もう知るか。どうせ今更カッコつかないんだ。それならいっそ甘えてみたかった。
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