転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください

木野葛

文字の大きさ
11 / 22
世界はとても残酷で(特にご飯が)

人体の不思議

しおりを挟む
 人が食事をやめて食べることがになってウン十年。
 効率の良いパワーバーなんかを食べることが食事として一般的になった頃、インターネットも生活に欠かせないものになっておりました。
 動画サイトなんかも増えた事で、動画配信者も増える。その配信者の一人が「昔やってた料理ってのやりまーす」したらしい。

 こだわり食材、贅沢に使われる香辛料、時間をかけて行う食材の下処理、煮込んだり焼いたり。パッケージ一つ破けば食べられる食事に対してかかる調理の時間。
 つまり料理は時間やお金に余裕があるひとの嗜好品であると動画内では結論づけられた。
 動画を見ているだけの一般人なら料理wで終わったのだが、問題だと言われたのは作った後の配信者の行動だ。

『料理ってヤバくね?こんだけ頑張ってこの出来とかw  レシピ通りやったのにくそ不味い。塩っぽい。匂いもしないしコレ、胡椒すりゃ美味くなんの?』

 そう言った配信者は胡椒をドバッと料理にかけたのだ。

「つまり…?」
「昔は食事で鍛えられた味覚だけじゃなく、嗅覚も衰えている。衰える事で味に対して鈍くなってから、結果少しでも嗅覚を働かせようとした企業努力の末がハーブレトルト」
「何それ怖い話?」

 配信者一人の問題ではなく食事に関する関心を置き去りしたことで現れた料理をしている世代以外全ての人の問題に繋がっていた。

 使わない筋肉は衰える。
 それと同じように使わない嗅覚味覚も衰える。

 食事で鍛えられる味覚嗅覚の力の低下を舐めてはいけない。
 食べやすい=柔らかく適正塩分、匂いもクセがない食べ物。
 今でも食べられているが、パワーバーは基本的にクッキー程度の硬さ。他には野菜のペーストや白粥なんかを常食している。
 しかしコレだとどうしても早食いに繋がり、噛まずに食べて顎が弱る。
 すると体に不調がさまざま出ていることがわかった。顎を使わなすぎることによる、噛み合わせの悪さやそこから来る体の歪み、筋肉が衰えること顔のたるみなど健康にも美容にも悪い影響が出てしまう。
 結果、それを改善しようとできたのが、噛むことを強要する固いパワーバーと嗅覚を働かせるためのハーブ&スパイス臭強いレトルト食品の爆誕。
 ハーブとスパイスの匂いが強い方が美味しいものとして認識される地獄みたいな構図ができあがったのだ。
 スパイスが高級なこともあって香り高いものは贅沢な高級品とされるのも地獄に拍車をかけてる。

 ついでに、お菓子は管理された食事の中でも嗜好品のため食べる人は少ない。
 オートミールクッキーっぽい補食はあくまで補食だから薄味ね。前世で例えるなら赤ちゃんせんべいの固いバージョン。
 お菓子は嗜好品なので羽目を外して良い食べ物と考える人が多く、結果お菓子に入れられる砂糖の量が前世よりも増えている。
 元になるレシピはあるけど、味覚嗅覚が衰えてる人向けにハッキリした味にするために砂糖が増える→バター ・卵・牛乳などの材料に溶け切らない→そのまま焼くので砂糖が焦げて焦げ臭いクッキーやケーキが完成!
 お菓子の味を知らない人たちは、それをお菓子の味と認識。
 正解を知っている年代の人は、自作するケースが多くて作ったものは自己消費。
 どんどん幻の味になっていく正解のお菓子の味…。

 使わない技術や味は廃れていくのをまざまざと見せつけられている…。
 ついでに人体の不思議も味合わされている…。




 瓶に入った醤油を小皿にちょっとだけ取り分けられる。

「餃子につけてみな」

 言われた通りに餃子にちょんとつけて食べてみた。
 餃子本体だけじゃない、醤油にも何か入っている。
 脳内の前世お姉さんの記憶の中にある、今世でも知っている香りだ。

「何が入ってる?」

 葛木のおばあちゃまの質問に自信満々に透子さんが「ニンニク!」と答える。
 うん、確かにニンニクは入っていると思う。
 新しい餃子にちょんとつけて、醤油を意識して舌で転がすように確かめるとニンニク以外の香りがした。
 この…独特な香りは…覚えがあるぞ。
 今世でも食べた。

「大葉?」
「正解」
「入ってたんですか…?」
「子どもだからか、味覚嗅覚鋭いね。美味いものを作る才能がある」
「餃子につけて食べるとうまー!」

 テンション上がるね!
 パンチがありながらも食材と調和しているって食べ物は悲しいことだけど少ない。
 そんな世の中でも美味しいものと出会える幸せよ…。

「餃子と一緒だとちょっと難しいかもしれないけど、大葉はわかりやすい食材だ」
「たしかに匂い強めですものね」
「分からないってことは、それだけ味覚が退化してるか、経験が無いんだろう」

 あー、味覚は経験って話はどっかで聞いたな…。
 経験を積むことで、子どもは食べられる食材を増やすとかなんとか。
 わかりやすいハーブを使ったレトルト食品も、何度も食べているうちに慣れてくる…アレも経験の蓄積…。

 ヤダよぅ。
 アレを美味しい物と認識したくないよぅ!

 でも食べ続けるとアレを美味しい物と認識する…人体恐ろしい。
 美味いものを忘れるとか恐ろしい。
 人間食べなきゃ生きていけないなら、楽しみたいじゃない!
 ご飯のお供は何にしようかとか考えるの楽しみたい!

「この醤油を使って何作りたい?」
「シンプルにお肉に漬けて焼くか、チャーハン」
 
 白米も好きだけど、味つけたご飯も大好きよ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

女性が少ない世界に転移しちゃったぁ!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比40:1の世界に転移した主人公 人のようで人ではなかった主人公が様々な人と触れ合い交流し、人になる話 温かい目で読んでいただけたら嬉しいですm(__)m  ※わかりにくい話かもです 

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

処理中です...