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世界はとても残酷で(特にご飯が)
お正月…それは試練
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「うっ…透子さん、早く迎えに来てねぇ…!」
泣いちゃダメ!
いくら地獄の実家行きとはいえ、透子さんにだってお休みは必要なんだから!
幼女、前世の記憶があるけど幼女だからイヤなことには泣きそうになる!
施設にいる女児専用ベビーシッター達は基本住み込みだけど、そんな彼女達にも当然休みはある。
ただどうしても都合上、安全面からシッターを交代と言うことは出来ないので、休みたい土日は父親の誰かが泊まりに来るような制度だ。
料理バレしてからはお父さんが積極的に来ている。
長期休暇として、夏と冬に最低でも二週間ずつの休みを設けるように法律で決まっているらしい。幼女はそのへんよくわからない。
ベビーシッターを休ませるのと同時に、ちょっと血縁と一緒に生活して関係修復してほしいなって思惑もあるんだろう。
二週間ぐらいなら双方我慢できるでしょう、って感じかな…。
正直、自分は関係修復できるとは思ってないよね。
「お嬢様、お土産買ってきますから…!」
透子さんは長期休暇を利用して、北海道へ旅行に行く。
二人で旅行雑誌眺めてテンション上げてたけど、美味しいお土産はないんだよね。
北海道産にこだわったパワーバーとかならあったけど。…そういうこだわりが残ってるのは、パラレルワールドでも日本を感じる。
「できれば美味しいもの見つけて来てねェ…!」
そんな会話を交わして、透子さんとはしばしの別れ。
葛木のおばあちゃまのところにも行けず、美味しいものも食べられない。
前世では長い休みで旅行や、お取り寄せなど楽しみも多かった正月。
ごちそうもおせちもお餅も消え去った今世…。
一体何を楽しみにしたらいい…?
せめて気分を上げるためとお気に入りのブラウスとカーディガン、長袖のワンピースだのを用意して、ミント色の子供用スーツケースに入れる。
入れるのはお気に入りだけ。どうせ実家に行けば、服はある。一言お洋服欲しいって言えば、父親達が買ってくれる。
イヤ、前世の価値観から言えばホイホイ物を買う親でいいの?とは思うけど、娘に貢ぐってのはこの世界では一種のステータスだから…。
実知ってる。休みが終わったら、職場で言うんだぜ。正月は娘に振り回されていましたよ、なんて言ってマウント取るの。
最後にチェック柄のコートに黒いボアキャスケットを被って完成。
「お待たせ、お父さん」
「ああ」
いざ、実家に出発ー!
施設から車で約三十分。
閑静な住宅地に我が家は合った。
マンション住まいかと思いきや、三階建ての一軒家である。
ただ、芸能人のお宅並みにセキュリティが高そう。と言うか実際に高いのだろう。
高級住宅街ってやつなのか、まわりのお宅も豪邸ばかり…。
私、本当にお嬢様だったんだな…。
イヤ、ご飯のことしか頭になくて、家族とか生活レベルとか考えてこなかったから…。
ガレージのシャッターが開くと、お父さんの車がスムーズに駐車した。
案外手慣れた手つきで、チャイルドシートのシートベルトを外してくれる。
お父さん…ちゃんと子どもの面倒見てるのね。仕事にしか興味ないみたいな容姿なのに…。
「やっぱり、男の子と女の子は違うな。お兄ちゃんたちはこんなに良い子にしていない」
この年頃の幼児なんて男女関係なく怪獣よ。
私が特殊なだけ。
ただいまと自宅に入れば、広々とした玄関。シューズクロークも広く色々な種類の靴が詰め込まれている。
土間の部分には2台の子ども用自転車、壁にはロードバイクが飾りのように掛けられているが、傷がついているので父親の誰かが使っているのだろう。
人口増加がないから、都内でもお家も庭も広い。キッチンは狭い…と言うか、納戸か給湯室かなってサイズ。
とりあえず、冷蔵庫は大きめだけどおそらく入っているのは酒。
手洗いうがいをして、リビングへと向かう。
キッチンが無い分だけリビングが広くて、こだわっていることがわかる。
そこには、お腹の大きな女性が寛いでいた。
ママだ。
何というか、お腹の大きな妊婦なのに不思議と母親と言うよりは女性と表現する方が正解な気がする人。
子どもである自分が言うのもなんだが、美人ではある。ただ、清楚な見た目と雰囲気は完全に仕事ができるOL感があるため、この人にとって本当に出産は仕事なんだなって感じ。
いや、相性悪くて施設に預けられた身としてはもっと毒々しい毒花系美女を想像していたのだが…。
よく考えたらこの人、まだ二十代半ばなんだよね。
こんな世界じゃなきゃ、バリキャリにでもなっていそう。
私を産んで一旦、妊娠はお休みしたが二十代のうちにあと二人ぐらいは産んでおきたいらしい。
パパ、そう言うことを明け透けに娘に言うのどうかと思うよ。
「来たの」
「おじゃまします」
これ、約八ヶ月ぶりくらいに会う母と幼女の会話な。
「お元気そうで何よりです。赤ちゃんの様子はどうですか?」
「順調よ。来年の一月末ぐらいには生まれるわ」
「楽しみですね」
「そうね」
もう一度言う。親子の会話ね、コレ。
前世の会社の同僚だって、もうちょっとフレンドリーに話してたわ。
関係修復とか無理無理。
うわーん、透子さん早く迎えに来てー!
「ところで、最近英治と仲良しね」
英治=お父さん。
一瞬、誰の名前だっけって思っちゃった。
「親子が仲良しなのは良いことでは?」
「そうね。でも、英治が居ないと不安だわ。もうすぐ、弟も生まれるし、貴方も可愛がってくれる?」
「もちろん」
弟生まれるから、大人しくして。英治盗るんじゃないわよってことね。
だってさ、お父さん。
幼女に対してマウントとる女ってどう思う?
私の位置からじゃ、お父さんの顔見えなくて残念。
泣いちゃダメ!
いくら地獄の実家行きとはいえ、透子さんにだってお休みは必要なんだから!
幼女、前世の記憶があるけど幼女だからイヤなことには泣きそうになる!
施設にいる女児専用ベビーシッター達は基本住み込みだけど、そんな彼女達にも当然休みはある。
ただどうしても都合上、安全面からシッターを交代と言うことは出来ないので、休みたい土日は父親の誰かが泊まりに来るような制度だ。
料理バレしてからはお父さんが積極的に来ている。
長期休暇として、夏と冬に最低でも二週間ずつの休みを設けるように法律で決まっているらしい。幼女はそのへんよくわからない。
ベビーシッターを休ませるのと同時に、ちょっと血縁と一緒に生活して関係修復してほしいなって思惑もあるんだろう。
二週間ぐらいなら双方我慢できるでしょう、って感じかな…。
正直、自分は関係修復できるとは思ってないよね。
「お嬢様、お土産買ってきますから…!」
透子さんは長期休暇を利用して、北海道へ旅行に行く。
二人で旅行雑誌眺めてテンション上げてたけど、美味しいお土産はないんだよね。
北海道産にこだわったパワーバーとかならあったけど。…そういうこだわりが残ってるのは、パラレルワールドでも日本を感じる。
「できれば美味しいもの見つけて来てねェ…!」
そんな会話を交わして、透子さんとはしばしの別れ。
葛木のおばあちゃまのところにも行けず、美味しいものも食べられない。
前世では長い休みで旅行や、お取り寄せなど楽しみも多かった正月。
ごちそうもおせちもお餅も消え去った今世…。
一体何を楽しみにしたらいい…?
せめて気分を上げるためとお気に入りのブラウスとカーディガン、長袖のワンピースだのを用意して、ミント色の子供用スーツケースに入れる。
入れるのはお気に入りだけ。どうせ実家に行けば、服はある。一言お洋服欲しいって言えば、父親達が買ってくれる。
イヤ、前世の価値観から言えばホイホイ物を買う親でいいの?とは思うけど、娘に貢ぐってのはこの世界では一種のステータスだから…。
実知ってる。休みが終わったら、職場で言うんだぜ。正月は娘に振り回されていましたよ、なんて言ってマウント取るの。
最後にチェック柄のコートに黒いボアキャスケットを被って完成。
「お待たせ、お父さん」
「ああ」
いざ、実家に出発ー!
施設から車で約三十分。
閑静な住宅地に我が家は合った。
マンション住まいかと思いきや、三階建ての一軒家である。
ただ、芸能人のお宅並みにセキュリティが高そう。と言うか実際に高いのだろう。
高級住宅街ってやつなのか、まわりのお宅も豪邸ばかり…。
私、本当にお嬢様だったんだな…。
イヤ、ご飯のことしか頭になくて、家族とか生活レベルとか考えてこなかったから…。
ガレージのシャッターが開くと、お父さんの車がスムーズに駐車した。
案外手慣れた手つきで、チャイルドシートのシートベルトを外してくれる。
お父さん…ちゃんと子どもの面倒見てるのね。仕事にしか興味ないみたいな容姿なのに…。
「やっぱり、男の子と女の子は違うな。お兄ちゃんたちはこんなに良い子にしていない」
この年頃の幼児なんて男女関係なく怪獣よ。
私が特殊なだけ。
ただいまと自宅に入れば、広々とした玄関。シューズクロークも広く色々な種類の靴が詰め込まれている。
土間の部分には2台の子ども用自転車、壁にはロードバイクが飾りのように掛けられているが、傷がついているので父親の誰かが使っているのだろう。
人口増加がないから、都内でもお家も庭も広い。キッチンは狭い…と言うか、納戸か給湯室かなってサイズ。
とりあえず、冷蔵庫は大きめだけどおそらく入っているのは酒。
手洗いうがいをして、リビングへと向かう。
キッチンが無い分だけリビングが広くて、こだわっていることがわかる。
そこには、お腹の大きな女性が寛いでいた。
ママだ。
何というか、お腹の大きな妊婦なのに不思議と母親と言うよりは女性と表現する方が正解な気がする人。
子どもである自分が言うのもなんだが、美人ではある。ただ、清楚な見た目と雰囲気は完全に仕事ができるOL感があるため、この人にとって本当に出産は仕事なんだなって感じ。
いや、相性悪くて施設に預けられた身としてはもっと毒々しい毒花系美女を想像していたのだが…。
よく考えたらこの人、まだ二十代半ばなんだよね。
こんな世界じゃなきゃ、バリキャリにでもなっていそう。
私を産んで一旦、妊娠はお休みしたが二十代のうちにあと二人ぐらいは産んでおきたいらしい。
パパ、そう言うことを明け透けに娘に言うのどうかと思うよ。
「来たの」
「おじゃまします」
これ、約八ヶ月ぶりくらいに会う母と幼女の会話な。
「お元気そうで何よりです。赤ちゃんの様子はどうですか?」
「順調よ。来年の一月末ぐらいには生まれるわ」
「楽しみですね」
「そうね」
もう一度言う。親子の会話ね、コレ。
前世の会社の同僚だって、もうちょっとフレンドリーに話してたわ。
関係修復とか無理無理。
うわーん、透子さん早く迎えに来てー!
「ところで、最近英治と仲良しね」
英治=お父さん。
一瞬、誰の名前だっけって思っちゃった。
「親子が仲良しなのは良いことでは?」
「そうね。でも、英治が居ないと不安だわ。もうすぐ、弟も生まれるし、貴方も可愛がってくれる?」
「もちろん」
弟生まれるから、大人しくして。英治盗るんじゃないわよってことね。
だってさ、お父さん。
幼女に対してマウントとる女ってどう思う?
私の位置からじゃ、お父さんの顔見えなくて残念。
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