若い魔術師と英雄の街

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第二六話 光の獣・雷の力

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 この場にいた英雄の半分以上が初めて見る。若く小さな勇者の見せた変貌に、思わず目が釘付けになった。今までの飛び回る様な戦法ではなくなり、必ず地を滑る様に走っていた。地盤は砂だ、そんな事が可能なのか、そんな考えもとうに浮かばず、ただ見ていた。切れ目の入ったズボンの裾から覗いていたのは、鱗に見える光の幕。攻撃に使っているのは、獣の爪に見える光の束。彼の頭に現れたのは、透き通った光で成された獣の耳だ。
「やっと出たな、ヒカルの獣の力。全く、忘れかけてたぜ」
「私達も行こうではないか」
「無論」
 小さな人間と、それから逃げる大きな怪物。怪物の体から生え出る触手は、再生しては両断され、再生しては両断されを繰り返していた。齢14の少年の繰り出す光の斬撃に成す術が無かった。最初から行っていた魔法だった。再生する筈の無いものを闇で作り出し、砂で補強する。外見は通常と全く同じ為、真逆の性質に攻撃されれば忽ち脆弱になり崩れ落ちる。今は砂を纏い表面の色を変える余裕も無くなっている。だから誤魔化しながら逃げるしか無かった。
「俺達もやるぜ!」
 やがて、最後の戦場に三名もの勇者が加わった。逃げている中、声に反応は出来たが振り向けず、不完全な触手ただ一本しか挟み込めなかった。直後、巨大な単眼が呻き声を上げて砂の上を跳ねていった。それはさながら川に投げた平たい石だ。
「的は分かってるな!?」
「背面だろ?」
「そこしか弱点はあり得ない!」
 跳ねる巨石を追い、三と一とが合流し、遂に一つのパーティへと昇華した。瞬時に隊列を組み、体制を整えつつあるモンスターへ駆け、刃を向ける。モンスターはビキビキと激しい火花を散らす触手を携え、向かい来る四人を見据えた。
『チィッ!』
 あと数瞬で刃が眼球を捉える。その瞬間、流れる刃は次々に空を切った。そして、足元からモゾモゾと音がする事に気づいた。また振動の具合から、あまり深くまでは潜っていないと分かっていた。
「距離を取れ、全力で掘り返すぞ」
 スピットは一言告げると、両手の短剣を逆手に持ち直す。おう、と三人が冷静に返答する。各々離れながら、ひかるは爪を肥大化させ、ジラフは槍と盾を特殊な形に組み直し、ターラは剣を持つ手を真横にピンと張った。そして、四人が蠢く砂を台に飛翔したと思うと、言葉で合わせるまでも無く、全ての技は同時に砂漠を抉り取る。
真空乱斬しんくうらんざん
獣稟じゅうりん荒鉤あらかぎ
響震きょうしん
一閃いっせん散撃さんげき
 そのパーティの目下、殆ど視界に写る全ての砂を限界まで抉り取った。折り重なったクレーターから幾つもの触手が顔を覗かせた。しかし肝心の本体が何処にいるのか、乱雑に伸びる触手では判断出来かねた。
「もう一丁!」
 スピットが身を捩り、クレーターの外に向かい剣を薙いだ。ドサッと砂を掘り返したのは、今まで披露していなかった巨大な真空波だった。パックリと割れた大地には、またしても幾つのも触手が蠢いているだけだった。その光景を見て悟り、彼はため息を漏らした。そして背後に浮かんできた巨大な眼を振り向き様に睨みつけた。
『モウ大丈夫ダ、オ前達ハ侮レン…全力デ潰ス』
 眼球に一段と黒いひび割れを走らせ、この上無い殺意を放って現れた。瞳孔は最小限まで狭まり、憤怒の情が伺える。あろう事か触手は全てが黒く変色していて、その様はまさに怒髪衝天、全て逆立ち揺れている。また、ドス黒いオーラも纏っていると錯覚させる。
「おいおい、あの触手は何だってんだ?」
「狼狽えている場合じゃ無い。迎え撃つぞ」
 ターラがそう言い切る前に足元の砂が振動し、黒い斑紋を浮かび上がらせながら影のように俺達へ伸びて来た。すかさず俺以外の三人は飛び上がり、俺は爪で縦に裂く。黒い波は抵抗せず、砂ごと真っ二つに割れた。だがそれで進行は止まらず、却って分離した事で二つのターゲットを狙うようになってしまった。その矛先はジラフとターラに向いている。未だ滞空中の二人を漆黒の槍が襲いかかった。
『響震』
重撃じゅうげき
 だが、それさえも想定内。二人は難なく槍を砕いて見せた。片やボロボロに崩れ去り、片や数センチ四方に細切れとなった。そんな結果を認識して、俺は目の前の黒い川を切り裂きながら辿り、本体を攻撃しようと突っ走った。その時、奴の向こう側に俺と同程度の人影が参った。それはいち早く裏を取ったスピットであり、俺より先に斬撃を見舞っていた。
「シッ!」
 突如として巻き起こる真空を発する斬撃の嵐。一度は奴の触手を全て刈り取った技である。奴は既の所で背後の気配に気付き防御を挟むも、完璧に防ぐ事ができた訳では無かった。其れにも拘らず、黒く変化した触手は十本も落ちなかった。ある程度の傷は見受けられるも切断には至っていない。そして、反撃として百近くの強固な鞭が風を切って迫って来る。
「っ!無理かっ!」
 それらを捌きつつスピットが呟く。見切れはするが更なる反撃は無意味だった。叩いても微妙な効果しかなく、本数が減らないという事は付け入る隙も無いと同じ。だからやり返す事なく受け続けるしか択は無い。だが、それは一人で戦っている時の話だ。
 黒い触手が背後からの刺突を捉えた。束ねられた光の爪と、ドス黒い揃えられた触手がぶつかり合い、キリキリと黒と黄金の火花が鮮やかに散る。やがて触手は前後の存在を薙いで弾き、それぞれ十数メートル後方に退かせた。
『無意味ダ。光使イ』
 ゆったりと見返る瞳。俺はそれしか知覚せず、発せられた言葉も聞かずに再び触手が鞭と化す間合いに踏み込んだ。スピットもほぼ同時に動きだし、絶対に挟み撃ちの形を崩さなかった。それでも奴は引けを取る事など無かった。現在スピットは奴の視界の外に居る、だが的確に両者の攻撃を防ぎつつ手痛い反撃を重ねてくる。
 視界内に常時収まっている俺に対しては殊更多くの槍が襲う。攻めの手数が少なくなり、防戦一方な状況に陥った。幾度となく叩きつけられる漆黒の鞭は、輝く爪を次第に欠けさせていく。勇選会でターラと戦った時と同じ、いつまでもつことなどなく、やがて折れて使い物にならなくなる。一度解除し再発現させなければならないのだ。そんな大きな隙を逃さぬ奴では無い、どんな小さな隙でも作ってはならない。ならば新しい事をするまでだ。
「オラッ!!」
 一瞬、奴の触手が一点に集まった。一つ一つの動きが重なるタイミングを逃さなかった。俺は新たに足に爪を生成し、その真黒な触手のまとまりを蹴り上げた。触手は弾力を持って爪を無効化し、直後解けると共に小さな体躯を突っぱねた。また後退させられ、ゴロゴロと砂の上を転がるがダメージは無い。しかし、一つだけ収穫があった。
(妙だ…感触がまるで違う…じゃなくなったか。まるで人を殴ってるみたいだ)
 そう考えていた折り新たに二つの影が現れ、各々が奴の左右に素早く陣取った。その後には三人の人間が怪物を囲み、槍や刃を交わしているのが目に飛び込んでくる。普通なら囲まれれば袋叩きになる所だが、実際にはこうしないと戦えない、俺が参加してやっと実力が拮抗する程度だ。俺は考えがまとまり次第、再び爪を生成して加勢した。
 眼が俺へと向き直り、また他者は視界の外に追いやった。さっきと全く同じ、しかし確実に襲い来る触手の数は減っている。彼らに感謝しないと、おかげで試したい事がスムーズに出来そうだ。繰り返し繰り返し、触手が束になった一瞬を狙って爪を当て続ける。何度かタイミングを前後させ、それをあえて防がせる。
(やっぱりそうだ!この闇は既に新しい肉体に変わってる!)
 闇魔法使いに必ず共通する事。それは等しく物質を創造できる能力を持つ点である。どんな世界でもそれは同じ、闇によって作り出された黒い触手は、いつのまにか新たな肉を獲得していた。爪の当たる瞬間、それは密度のみを変化させ攻撃を防いでいた。筋肉が締まって硬くなるのと同じように、触手も一種の筋繊維が締まって硬化していた。
「何かを試したな」
「皆ちっとばかし余裕が生まれたか」
 を密かに観察していた三人は小さく声を漏らした。決して打開できるとは限らないが、完全な四人体制となって立ち回りに余裕ができた。それぞれの息と、行動のタイミングさえ合致すれば、反旗を翻す事も可能だ。
 それから何度か触手をいなし続け、チャンスは遂に到来する。視界外のターゲットが僅かに一人へ集中した瞬間、手が空いた二人は進行方向を捻じ曲げ、奴を挟み込むように斬撃を振るった。眼球は揺れ動き、突如変わった背後の気配の行動パターンを気に留め、視界内に捉えた。長い剣と短い双剣が左右から切り掛かっていた。奴は触手を折り畳み、出来上がった黒いコブが、突き刺されながらも刃を止めた。そのまま剣を固定され、スピットとターラは焦りを見せた。無理に引き抜こうとするも成果は無さそうだった。
 その間にも俺は攻撃の手は止めはしなかった。しかし触手の壁に阻まれ、本体を叩けはしなかった。切れども切れども止めどなく、角度を変えようとも囲いは俺を逃すまいとついて来た。切れば瞬時に再生し、突けばめり込まずに止められる。あのナイフを使っても無意味だろう。
「ガッ!」
 壁の向こう側からスピットの不穏な声が耳に届いた。そして二つ分のゴロゴロと言う物音まで響いてくる。俺はそれに気を掛ける事も許されなかった。折り重なった壁の隙間から新たな触手が顔を覗かせ、周囲の砂が掘り返されると隠れていた触手が姿を見せた。それらが揃うと、秒読みの必要も無く飛来する。その直前に、俺の耳はしゃがれた声を聞いていた。
『最優先ハ最初カラオ前ダ』
 四方八方から無数の槍が繰り出された。それを外から見ていた人々は、一瞬で目を見開き、口は開いたままになった。だが、その時俺の表情が見えた者は、心配なぞしていなかっただろう。槍が肉を貫く直前、閃光と共に何かが弾けた。皆がモンスターのうめき声を微かに認識した時、高速の槍は微動だにしないゲソの剥製に成り代わっていた。
『モウヒトツ…ダトッ!』
 よく見ると、その剥製らの表面に樹の根に似た痕が這っていた。

 左足に受けたその傷は深いが貫通は免れていた、しかし骨も筋肉も殆ど使い物にならない位には重症だった。殆ど皮のみで繋がっているも同然、もちろん歩く事などままならない。
「うん、もうこれで大丈夫」
 水色の柔らかな鎧が、そんな患者の傷口を摩った。その鎧の手が離れるとポッカリ空いた穴に氷が敷き詰められ、表面から徐々に水へと変わり、立ち上がっても崩れない治癒のドームになった。冷たさは感じるが痛みは無く、違和感はあれど神経も元通りだった。
「さすがメルさんだ。けど、こう言うのは初めて見るな」
 患者だったのは鞭を片手に持った英雄、それはディザントで最も強いとされる人物だった。彼は応急処置を受けた足を少しだけ動かして見せた。膝の曲げ伸ばし、足首の動作、仕舞いには立ち上がってみせた。穴だった部分だけ感覚がないのが奇妙に感じたが、その他になんら異常な点は見受けられなかった。
「私ね、普通の回復魔法を覚えられなかったんだ。だから新しく水と氷の治癒魔法を編み出したの」
 そう言う彼女の後ろには、今まで同様にして治した英雄達が多く居た。その殆どがぐったりと疲れ果て、調子の変わらないのはこの男くらいだった。男は立ち上がったまま振り返り、砂煙が一層立ち込める場所を注視した。怪我人として良からぬ事を考えていた、それをメルに止められる。
「ねぇ、まさか戦いに戻るの?辞めときなよ、また怪我しちゃう…もしかしたら…」
 言葉を曇らせていくメルに、男は振り向き、微笑みかけて朗らかに言った。
「大丈夫さ、見つからないようにするから。俺の十八番のスキルなんだ、師匠にだけは見つかったけどね」
 メルは目の前の男の気配が一瞬にして消えた事を感じとった。目には映っているが、全くセンサーに反応しない。なんとも不気味な感覚を覚え、ただ凄い、と呟くのみだった。
「ここにいる英雄の代表として、『隠者ハーミット』が奴らを助太刀するよ」
 ゆっくりと左足を労わりながら、確実な意志を持ってそれは前進して行った。

 ギリギリと触手と爪が交差する。黒い槍は何度でも小さな体を襲うが、全てが閃光と追随する麻痺によって勢いを失う。その間に触手はブチっと断ち切られる。使う触手の割合を視界内の方に割き始めたため、視界外からの攻撃も激しくなり、いつの間にか攻守は逆転していた。
『クソ!雷!失ワレタ魔法ヲ三ツモ使イヨルカ!』
 それもその筈。いくつもの魔法を体に宿した者が相手なのだ、必要以上に警戒し、判断が鈍っていくのだから。次第に触手の再生が追いつかなくなり、輪切りにされた触手は更に短くなって行く。奴の弱点と思しき眼球の真裏、触手の生える場所の中心がやっと見えて来た。奴の裏面の構造はこうだった。太い触手四本が中心に、その周りに二十本の中くらいの触手、一番外に二層に並んだ小さな触手約八十本。だが今は闇で補強しているため、全てが中くらい以上の太さを持っていた。
「ターラ!あれは!?」
「ああ、雷だな。アイツが何を出そうとも、もう驚かん」
 人員の減った視界外の連中は、閃光と音の正体をモンスターの言葉を受け取ってやっと理解した。険しい顔をしたジラフとは打って変わり、いかにも冷静な声色でターラが返した。見るからに減った触手を軽くあしらいつつ、二人して次に何をしようか考えていた。
「悪りぃな、マジで…」
「いいさ、こう言う事もある」
 それと言うのも、スピットが奴の魔法でダウンしているからだった。特段怪我を負った訳ではなかったが、軽い打撲の表面には波紋のような黒い輪が浮かび、その場で停滞しながら回っている。確実にその魔法によって体力が奪われており、ほぼ口しか動かせない状態になっていた。
「いやあ、怪我が無いだけで儲けもんだな」
 スピットは冷や汗を垂らしながら言った。どうしても動かない体がもどかしく、戦えないのが彼にとって最大の苦痛だった。しかし出来ることは残っていた。体は動かないが、少なくとも思考までは疲れない。脳と口が動くなら、最善の策を伝える位なら出来るだろうと考えたのだ。彼はまた数回触手を弾き切り落とした二人に向かって最低限の指示を出す。
「奴の弱点。それが触手の生え際のまさに中心だとしたら、はとても小さいかもしれない。なら、ジラフが適任だ。差し込んで『響震』でも入れりゃあ、例え魔力性モンスターでも崩れさせれるだろ」
「承知した、だがまずは相応の隙を作らねばな」
 ジラフは合点し、槍を持ち直して来たる触手を軽くいなす。すると、殆どが光の獣を追うようになっていた黒い触手は遂に背後から出払い、簡単に弱点だろう部位を露わにした。そして気が付いた。輪切りの触手の殆どが再生していない、その全てに共通して樹状の傷跡が這っている。
(ヒカルの雷が再生を阻止しているのか?…普通のそれでは無いらしい)
 二本の図太い触手で立ち、十本足らずの触手で戦う単眼のモンスター。その向こうには一人で善戦する俺の姿。その時俺は、触手と格闘しながら幾度となく目線を送っていた。間も無くして、ジラフとターラはその目線に気が付いた。二人して見合わせ、言葉を発する事なく頷いた。同時に音もなく駆け出し、ターラが前に出てるとジラフの前から消える。次の瞬間には怪物の斜め後ろから現れ、一足先に斬撃を浴びせた。
 だが次に鳴ったのは触手の落ちる肉の音ではなく、ゴギャンと言うような鋼の割れる音だった。多枝の剣身は無造作に回転しながら宙を舞い、銀の鎧は抵抗もできないまま砂の上に転げ込む。それを後方で見ていたジラフは即座に接近を中止し、眉間に皺を寄せて下がって行った。
『妥当ダ。槍デハ無謀ダカラナ』
 ジラフが歩みを止めた理由はもう一つ、半数以上の触手が復活したのだ。ひと回り程小さくなっていたし、動きがぎこちなくなっている。しかし硬さは槍で切れる強度ではない事は確かだった。ジラフが実質行動不能となり、ターラはあれっきり動かない。復活した全ての触手が俺へ的を絞るのは必然だった。
 奴は手始めに、十本の触手を地中にけしかけると、十分に疲れ足の止まった俺に向かって砂が巻き上がってくる。それを更に高く舞わして二色の槍が顔を出した。十本の黒い槍に付随するように薄茶けた槍も飛び込んで来る。正中線を狙って来たそれら全てをゼロ距離で受けると、気付けばゲソは綺麗に二つに裂かれている。その根元まで二つに裂かんと、雷の刃が触手を伝い巨大な眼球に到達した。
『モウ驚カン、オ前が何ヲ使オウガ。我ナガラ無茶ヲシタ。光ニヨッテ遮ラレタ再生モ無理矢理使用シ、魔力回路ガ壊レタ。シカシソレデ問題無イ、ソレマデニ殺スダケダ』
 慢心から覚めたのか、やっと本気になったのか、ただブチ切れただけなのか。どれにしろギア全開で来るのは間違い無かった。それにしても奴は自信たっぷりだ、正面からは絶対にやられない確信があるみたいだ。
 目玉の位置が下がり前傾したと思った矢先、砂をかき分けて巨体が詰め寄って来た。助走を付けて二種の槍を振るい、巻き上がった砂は一つの塊となって硬い鎖を形成する。それら一つ一つを打ち落とし、雷で的確に眼球を狙い打つ。それに効果は見られないが、着実に触手を減らして行く。
 俺が次に砂に着地した時、突如として足元の砂が炸裂し俺は頭を下に浮き上がった。それがゴーレムの使った土魔法の互換である事はすぐに気付いたが、方向感覚は一気に狂った。そこへ追い討ちを仕掛けるように槍も鎖も黒い針をも飛んで来た。俺は落ちる方向を確認し、目に映った全てを撃墜する。奴は無い舌を打ち、触手をつがいて狙いを定めた。バネのように畳まれたそれは瞬時に打ち出され、落下してくる物体を刺し貫く。だがその前に触手の動きは止まり、眼球に雷が落下する。閃光に弾き出された体は砂の上に着地した。巨大な眼球はギロリと俺を見下ろし、更に半数に減った触手を集めた。
『打ツ手ナシ、無意味ダ。大人シク死ネ』
 俺はその言葉を無視した。攻めの手を止める事はあり得ない。それも雷を使って初めて分かった事があったからである。体から力を抜いて口を開き、奴に向かってこう言ってやった。
「嫌だね、生憎打つ手ならしっかり残ってる。ほら来た」
 突然、ガクッと体勢を崩したように奴の体が前のめりに傾いた。奴はしきりに背後を気にした様子を見せると、一本触手を伸ばしてそれを抜き取った。それは一本の矢であり、見覚えがある代物だった。ハッとした様に後ろへ目をやると、遥か遠くから次の矢が飛来していた。
『クソ!弓使イ!今ニナッテ邪魔ヲスルカッ!』

 大弓を構えた男とターバンを巻いた男は、周囲の小さな砂丘の上に立っていた。ターバンの男が彼に触れると、戦場を挟んだ向かいの砂丘の上へと移動している。足元には小さな鉱石、比較的多くの魔力を孕む代物であった。移動後素早く大弓で矢を放った男は、常に自らに触れる男に支持を出す。
「次、あっち!」
「了解!」
 再び場所を移し、大弓が矢を放つ。合計五度の発射だったが、それで十分だと彼は判断した。弓を下ろし、遠くの標的を凝視して呟いた。
「やっと隙らしい隙を晒したな。流石に集団戦場に慣れてるか…ま、後は現場の五人に任せるか。ありがとうハーロさん、お疲れ様。行こう、もう戦いは終わりだ」

 巨大な眼球はぐるぐると視点を回してそれを捉えた。正面から飛来する矢を触手で絡め取り、無造作に捨てると一気に振り向いてもう一本も巻き取った。全て防いだ愉悦に浸り、緩んだ心はまた隙を作る。ドスっとまた背面を矢が捉えた。それは深々と内側へ入り込み、モンスターの内部を抉って動きを鈍らせた。落ちた視界を上げると、もう一つ矢が迫って来ていた。ますます動かし辛くなった触手は言う事を聞かない様で、矢は着弾し爆発を伴った。
『アァ…』
 また異なる眩さに一瞬麻痺した視覚が戻ると、太陽を隠した影を見上げている事に気づいた。また、新たな光が太陽と重なった時、体を打つ強大な魔力の重圧に身震いした。
「全開。『御雷みかずち』」
 直径三メートルの目玉に、それよりも太い雷が落ちた。バリバリと轟く雷鳴と、少なからずも弾かれた雷の破片が辺りへ散る。やがて、耳鳴りの残った静寂に砂に何かが落ちる弱々しい音が混じった。
 その小さな影は片膝で立ち、片手を砂に突いて、息は荒く動く気配は無い。それの目の前に存在する巨大な眼は揺れ動き、視点を落とすと哀れな小動物に呆れた風に物を言った。
『全ク…最期マデ分カラナカッタカ。無意味ト警告シタト思ッタガ。マサカコレガ全テカ?何ノ実リモ無カッタデハ無イカ』
 その声の主は、少しずつヨロヨロと近寄って来る。決してトドメを外さない為に。
『オ前以外ナラ先ニ殺セモシタ、ダガソウシテハナラン理由ガアッタカラ後ニシタノダ。コンナ時ニ言ウノガ正解ナンダロ?【結構冷ヤ汗ヲカカセラレタゾ】トナ』
 俺の前方たった数メートルまで迫った瞳は、黒い亀裂が瞬きをする度に深く長くなり、瞳孔が極限まで狭まっている。ピクピクと震える触手が一本、眼の横に揃えられ、突き出す準備を終えた。そこにあった長い間は、最後の言葉を聞くための時間だと分かっている。だが、そこで俺は嘲る様に笑って言った。
「勝ち誇ったつもりか?…詰んだのはアンタの方さ」
『…減ラズ口ガ…』
 たった一言。掠れたような、何かを啜る音にも似た低い声で言うや否や、直ちに触手は力強く撃ち放たれる。肉を貫く音はせず、ただ、砂に液体の滴る微かな音が聞こえて来るだけだ。ゆっくりと黒い槍を引き抜き、残り物の処分をしようとした時、何を思ったか目玉は再び揺れ、自身の右側をまじまじと見始めた。
『貴様…』
 たった今現れたように感じた。確かに足を貫いたはずの男が、鞭を引きずって佇んでいた。少しばかり汗を浮かべてじっと見つめたまま喋り出した。
「ようクソ野郎、英雄代表として別れを言いに来たぜ」
「あばよ」
 奴はよほど癪に触ったのか、一目散に男をど突く。が、たった一言で攻撃は止まった。
「ああ待て。俺の事、かい?」
 それはその男の毅然とした態度に恐怖を覚えたから。違う。言われると同時に気づいたからだ、視界が溶け落ちるように黒ずんでゆくのに。
「あぁ後、そいつ、死んでない」
 視野全てが黒い影に支配されていく最中、眼球は再び前を向く。最後に眼球に届いた太陽の光は、二本の足で立ち上がり、胸に空いた穴が渦巻く水流によって修復される少年の姿だった。
『…ィ一体ッ!何ガァ!?』
 奴は目しかない頭を振り回し、触手を酷く暴れさせ、しぼんだ眼球にすら気づかないまま荒れ狂った。
 奴は視覚内の現象しか観測出来ていない。あの体には視覚と聴覚以外の感覚器官がまるで無いらしかった。嗅覚無し、味覚は言わずもがな、重要なのは触覚すら無い事だ。触覚がないと言うことは神経がないと言う事、痛みももちろん感じない。
 何度か違和感を感じた事があった。それは何度切っても瞬時に生え直るはずの触手が、ピタッと再生をやめた瞬間。戦闘中にそれが起こった事がいくらかある。最初はスピットに根こそぎ刈り取られた時。その後、塔を形成するまで切られた事に気付いていなかった。次に、奴が『苦悶の万力』を使っていた時、愉楽に浸っていた奴は触手を再生させなかった。これらから再生は自分の損傷をその眼で認識して故意に発動させると分かった。もし痛みがあれば、見なくても認識できるだろうから。
 だが、痛みが無いというのは仮説に過ぎなかった。それが確信に変わったのは、ついさっき眼に切れ込みを入れられたのに気が付かなかったからだ。眼にも体にも擦り傷を作れなかった筈なのに何故と思うだろう。あの眼に雷を当ててやっと気づいたのだ、強靭で透明なバリアが張ってあると。それは闇によって作られた、厚さ二センチ弱の超強固なケラチン質の膜だった。絶対にそれの内側へ行かない雷を見て気付けたし、それが最高品質の防御魔法だとも察知できた。俺の魔力を全開にして打った『御雷』でさえ破壊しただけで、中にあった眼は守られていた。
『ウウゥアァァ!!見エン!!何処ニ居ル!!』
 触手は暴れながら徐々に外へ被害を伸ばす。いずれ俺の跪いている場所にも到達するだろう。だがそれよりも前に、彼が俺の元へ歩んで来た。
「よう、お疲れさんだな」
「ありがとうラグル。俺らはお役御免だ、後は任せよう」
 ああ、と言って、ラグルは俺の両脇を抱えて引っ張っていった。彼が居たから無茶も出来たのだ。気配のほとんど消えたラグルは簡単に奴の横を取り、視覚を奪う一撃を容易に入れられた。視野には入っていた筈だが、気配が消失しているなら脳の処理で消えるかもしれない。実際それに似た事になっていたし、お陰で役割を完遂出来たのだった。
「ったく、やってくれたよなぁ」
 暗闇の中、背後で声がした。心の中で段々と不気味さと怖さが膨れ上がるのを奴は感じていた。二人ほど無力化した筈の人間が動き出したのだから。
「やっとこさ解放されたぜ、もう戦えないのは勘弁な」
「ヒビは入ったが問題無い、少々息苦しかったがもう治った」
「だったら本命と行こうかい」
 砂を駆ける三つの音は一体となり、確実な急所へと向かった。闇の中で足掻く触手は全て断ち切られ、残る体は空中へ跳ね上げられた。皮肉なものだった。闇を使った奴が闇の中で死ぬなんて。
『俺ハドウナッタ!?…死ヌノカ!?』
 恐らくあの巨大な目玉が全ての足りない器官の代わりだったのだろう。今は自分が落ちている事も風が身を包んでいることも分からない、そしてそのままあの世に逝く。クルクルと回る枯れた円盤、ジラフの槍がその裏の中央を捉え、槍先が表から顔を出す。文字通りの串刺しとなった奴は獣の様に喚き、ジラフは身を翻して槍に盾を組み付け、正真正銘最後の一撃を繰り出した。
「これでくたばんなぁ!『響震きょうしん』!」
 鳴り響く耳を裂く金属音、それは小気味の良い音響だった。空中で弾き出されたベージュの円盤は見る見る内に細々とした断片となり、やがて全てが砂へと還り風に舞ってしまった。ドサッと砂に落ちた老体が景気良く起き上がる。そして、いくらか拳が天を突くほどに高く挙げられた。
「勝ったぞおおおおぉぉぉ!!!」
 一つ雄叫びが上がると、それに呼応し何十もの雄叫びが重ねられた。そこに居合わせた全ての人が同じ喜びで湧いたのだ。至る所で強く手を握り合い、ハイタッチを交わし、抱き合う姿も見られた。死んだ者たちも満足してくれるだろう。
 ようやく一足先に前線を退いた俺とラグルがみんなの集まる場所へ到着した。和らぐ空間はどこか押し入り難くも、快く迎えてくれた。少しばかり皆と談笑していると、ふよふよとメルがやって来た。手には水晶を持っていたがすぐに渡す事はせず、労いの言葉がこぼれた。
「お疲れ様~。もう危なっかしいなぁ、ヒヤヒヤしたよ」
「やっぱ戦ってみないっと分かんなくてさ、諦めなくて良かったよ」
 この言葉を受け取るとメルは一層目を細めて微笑みかけ、柔らかくて冷たい鎧を押し当て抱きついて来た。『温調の魔石』があっても触れた物の熱は伝わり、熱を帯びた体が冷めていく。小さいが耳元で、良かった、と何度も復唱しているのが分かる。メルは気が済むとゆっくりと離れて、母親のように微笑んだ。
「ラグル君、これを。貴方が適任だと思うの」
 彼女はサッと体の向きを帰ると、ラグルに持っていた水晶を手渡した。彼は頷いて受け取ると、自身に備わった魔力を水晶に流し込み、淡くもそれを赤く輝かせた。
「作戦完了。目標の討伐は成功しました。総勢五十二名の内、負傷者三十五名、死者十名、無傷なのは勇者を筆頭に七人だ。これより拠点に帰還する」
 ラグルは言い終えると水晶を手放して砂に落とし、手に持った鞭を振るって叩き割った。少しばかり舞う煙に混ざって赤い輝きが浮かび上がり、徐々に黒ずむと天高く舞い上がり砂丘の向こう側へと消えた。
「よし、これで良いだろ」
 ラグルはそう言ってその場であぐらをかいて座り込んだ。俺も立つことにすら疲れを感じていたから同時にへなっと砂に崩れた。誰も口にしなかったが、そこには多少ここで休息をとるという雰囲気があった。そしてそれとなく会話が発生すると、それから場は更に騒がしさを増した。俺はそれに参加こそしなかったが不意に笑みは溢れていた。
「よーよー!帰って来たぜー!」
 遠くから活気付いた若い声が聞こえて来た。その方角へ目を向ければ、五人の集団が目に飛び込んで来た。奴にトドメを刺した三人と、外で援護をしていた二人だった。スピットが一人抜け駆けして来ると、スピットは半分飛び込む形で俺に肩を組んで来た。その勢いのまま倒されたが、気づいたら二人並んで座っていた。
「いやぁ助かったぜ!お前ほんと抜かりねぇな~」
 スピットは間近で大声を上げた。うるさいと思ったが、感極まっている分仕方ないと割り切った。彼が助かったと言っているのは俺が『御雷』を放った直後の事、雷の破片が飛び散った瞬間だ。あの魔法は『闇』で作られた物を解除する力を持たせて放った。出力を高くすれば、相応の強度の闇を無効化する。当然飛び散った破片にも効果は乗っていて、それがスピットに届いて最後の一斉攻撃が出来た訳だった。
「まあね、二人だけで攻撃しに行ってたからおかしいと思って、少し覗いたら斑を付けられたスピットが見えたからさ」
「へぇ、結構余裕あるじゃん」
「バカ言えバトラのお陰だよ」
「そりゃありがたい言葉だな」
 微笑みが出るほど和み、数分前とは対照的な光景だった。いつのまにかハーロと思しき男は自分のパーティに合流し、存分に喜んだ英雄たちの何人かは仲間の死を深く憂いていた。そんな中でターラがそっと声を上げた。
「…なぁ、ここからどうやって帰るんだ?また歩いて行くには時間が掛かるぞ」
 確かに、ここからどの方角へ行けば良いのかは別に問題無いが、重要なのはかかる時間の方だった。気にしていなかったが、今はもう一日の半分はとうに過ぎた時間だった。太陽が真上よりもずれたところにあり、少しずつ下に落ちていっていた。
「だな、でも別にヒカルは『転身』使えるんだし問題じゃなくね?」
 スピットはあっけらかんとして言い放った。目をパチパチする彼を見てターラがうつむき、ある事を語った。
「…今、そいつは魔力が枯渇している。それで風魔法が使えるとでも言うのか?」
 スピットは呆れ半分だった言葉をかみ砕くと、ああと言って謝って来た。ターラは特殊な目で魔力の流れを見れるが、他の人には不可能な芸当だから分からないのも無理は無い。しかし、俺はありがたくもその気遣いを突っぱねた。
「ありがとう、でも必要無いよ」
 ターラはその目を通して見た物に驚いた、仮面の暗い眼孔の中で赤い目が見開いていたのだ。そして腕をだらけさせて腕を組み、いつもの調子で言った。
「なるほど…そう言う仕組みだったのか。なら問題無いな、帰りは彼に掴まって行こう」
 程なくして、たった一人の少年に掴まって、何人もの人間が瞬間移動をしていった。喜びの熱も冷めない故か、人が覗いているのにも気が付きはしなかった。
「うーむ…アレを倒してしまうか…。七色の魔法使いか、また面白い事を知ったな…」
「…にしても…『闇』…か…。ん?」
『ルイス、俺たちの回収を頼む』
「…了解だ」
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