不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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10.グスン…

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 美少年君が目を覚ました。


「イーラさん!! 美少年君、目を覚ましたっすよ! どうするっすか!? どうすればいいっすか!? どうしよっす!?!?」


 ずっと楽しみに待っていたこともあり、テンションがおかしくなってパタパタオロオロと俺の手も足も体も心も大忙しだ。


「……うん。とりあえずツキ君は一回落ち着きなさい。ほら深呼吸は?」


「はいっす!! スゥーハァースゥ……」


 ピタリとその場に立ち止まり、大きく深呼吸をして心を落ち着けた。


「……はい。できたっす!」


「よろしい」


「へへ……ごめんなさいっす」


「……えっとあの……?」


「あ! 騒がしくしてごめんっす。……体調はどうっすか?」


 自分のパニックように恥ずかしくなって頬をかくも、聞こえた困惑気な声に俺は慌ててベッドの上、起き上がった美少年君の元に戻って体調を尋ねた。


「え? あ、だ、大丈夫です」


「そうっすか……。よかったっす」


「あの……僕を助けてくれた方ですよね? ここは……」


「! 覚えてくれてるんっすね! ここは俺達の狼絆のアジトっすよ! 美少年君三日も意識が戻らなかったんっすよ? 目が覚めてよかったっす!」


「び、美少年君? ……あのそれってもしかして僕のことですか?」


「そうっす!」


 美少年君以外ここには美少年はいない。美形はいるが。そうやって前のめりと矢継ぎ早しに美少年君へと話していると、イーラさんにコツンと頭を小突かれた。


「こらツキ君。全然落ち着いてないじゃないか。とりあえずボスを呼んできてくれる? その間に診察をするから」


「そうっすね! すぐ呼んでくるっす」


 了解っす! と、早く早くと急いで医務室から出てボスを探しに行こうとしたところで――


 ガコッッ!

「だッ!?」


 勢いよく掴んだドアノブが外れ、そのまま下にガクッとなった。勢いがよかった分、肩と腕への衝撃が……


「~~!!」


 う、腕とれるかと思ったっす。か、肩もやっちゃったっす……っ。


「……ツキ君大丈夫?」


「は、はいっす……」


 痛いっすけど、行ってくるっす。


ーー


「――んで、体調に問題はないんだな」


「はい。助けていただきありがとうございました」


「ああ。それでお前に聞きたいことがあるんだが……」


「……はい。僕にお答えできることでしたらなんでも」


 見つけたボスを医務室へと連れてくると、ボスはすぐに美少年君と話を始めた。その様子を俺は横から椅子に座ってほわ~と頬に両手を当てながら眺めた。


 美男美少年君。目の保養っすね~。


「それじゃあ……いやちょっと待て。……おいツキ、気が散る。どっかいけ」


「嫌っすよ。俺も美少年君と話したいっすもん」


「美少年君……あ、あの僕の名前は……えと、フレイって言います」


「! フレイ君っすか! ごめんなさいっす。そういえば自己紹介してなかったっすね……」


 申し訳なさに眉を下げる。


 もう美少年君って呼びすぎてそれが名前だと思ってたっす。


「クス……いいえ。あなたのお名前を聞いてもいいですか?」


「! あ、お、俺はツキっす! フレイ君よろしくっす!」


「ツキさん……ですね? はい、よろしくお願いします」


「っさん!? はいっす!」


 優しく目元を和らげ微笑むフレイ君に、俺はきゃーっと叫びたいのを耐え、熱くなる頬を抑えた。まさかのさん付けだ。さんなど付けなくといいと言いたいがなんだこの大人な響き。しっかりしなくてはと思うこの気持ち!!


 フレイ君、可愛いうえに優しいっすいい子っす~!


 ゴッ!!

「「ビクッ‼︎」」


 重い音が響き、フレイ君と一緒に肩が跳ねた。恐る恐るその音の方を見ればボスの拳が壁にめり込んでいた。


「ボ、ボス?」


「……悪い」


 ボスは罰が悪そうな顔をしたあと、そっぽを向いた。


「い、いや、あの、ご、ごめんっすね?」


 話の邪魔をしちゃったから怒っちゃったんっすかね……。


「……うわ~心狭すぎ。ツキ君可哀想に」


「うっせぇっ。わかってんだよ!」


「ビクッ」


 引き顔のイーラさんをボスが睨みつける。だが、その声の大きさに俺の肩がまた跳ね、じわりと目に涙が溜まってしまった。だってそれほどボスが怒っているのだ。


「うわ~遂に泣かせちゃったね。最近ボス怒ってばっかで怖いって言ってたし、ツキ君可哀想に……」


 まだ泣いてないっす。ギリギリ耐えてるっすよ。


「……っ……ああ~……ツキ、おっきな声出してごめんな? 怖かったよな」


「コク」


 怖かった。俺は何もしていないのにボスはずっとイライラしているのだ。


「悪かった。もう怒ってないから泣き止んでくれ」


「ズズ……本当っすか?」


「ああ。ほらな」


 鼻を啜り、見上げてみるも、ボスの眉間にはもう皺は寄っておらず、いつもと同じちょっと不遜気な顔つきのボスに戻っていた。そんなボスにホッとしてからムッと言葉を返す。


「泣いてないっす」


「そうだな。泣いてないな」


 ふっと笑って近づいてきたボスに、ヨシヨシと頭を撫でられる。そのままボスの方へと引き寄せられたため、ボスの服で気付かれないように涙と鼻水を拭いてやった。


 意趣返しっす。


「……うわ~ボス顔気持ち悪」


「…………あの……僕はこれ一体なにを見せられているんでしょうか?」


「え? 二人のイチャイチャ?」

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