不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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11.聞きたいっすね〜

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「――それじゃあ改めて二人を紹介するっすね! こっちがフレイ君を診て治療してくれたお医者さんのイーラさんっす! んでこっちのボスがここのボスのラックっす!」


 しばらくして落ち着いた後、イーラさんの咳払いでそういえばまだボス達の紹介をしてなかったと思い出し、俺は気を取り直してフレイ君へと二人を紹介した。


「ボス? ラックさん?」


「ああ」


「よろしくねフレイ君」


「あ……よろしくお願いします」


 ボスの機嫌は少し治ったもののぶっきらぼうに、イーラさんは微笑みながらフレイ君に挨拶を告げた。


「……ラックさんとツキさんは恋人同士なんですね」


「え? 違うっすよ?」


「え?」


「「………」」


 俺とボスを見て、しみじみと言うフレイ君に首を傾げた。どこでそんな勘違いを?


「違うんですか?」


「全く違うっすよ? そんなのあり得ないっすもん!」


 ははは! と笑ってフレイ君に返す。


「っ……」


「……ボス、落ち着きなよ。そんな即答されたからって」


「黙れイーラ。わかってる」


「ん?」


 ボスを見れば、ボスの震える拳をイーラさんが押さえつけていた。


「っはぁぁぁ……。……おい、フレイつったよな。そんなことより、さっき聞きそびれたことだが今の状況どこまで理解できてる?」


 ボスは深い溜息を吐き出すとフレイ君に向き直り真面目な顔で問いかけた。そんなボスに俺も椅子に座り直し、姿勢を正して茶々を入れるような真似もせず真剣に聞く体勢を作った。


 ボスの言葉にフレイ君は神妙な顔をして頷く。


「……おおよそは。僕、奴隷狩りにあったんですよね? そしてあなた達に助けられた?」


「ああそうだな。大体合ってる。お前帰る場所はあんのか?」


「……いいえ。両親は幼い頃に……。頼る親戚もいなくて……僕に帰る場所はっ」


「フレイ君……」


 悲痛な表情で言葉を噤むフレイ君に胸が痛んだ。そして、ボスをチラチラと見た。


「そうか。フレイお前いくつだ?」


「え? あ、えーと……十四歳です」


「なら孤児院だな。おいツキ、レトにフレイの入所手続きして来るように知らせてこい」


「え!?」


「……すぐっすか?」


「今すぐにだ」


「……わかったっす」


 とりつく島もないボスの様子にショックを受けながらも、言われた通りに俺はレト兄を探しに行こうと立ち上る。行き場がないのならフレイ君をここに置けば……と言いたいところだが、ボスの空気が完全にフレイ君を拒絶している。


 こんなボスに何も言えないっすよね……。はぅ……。


「あ、あのちょっと待って下さい!」


「……なんだ?」


「?」


 フレイ君が焦せるように待ったの声を上げた。それにボスは訝しげにフレイ君を見、俺も足を止めてフレイ君を振り返った。


「あの、何があったかは大体覚えています! あなた達に助けられたことも。で、でも……そう! あなた達は一体何者なんですか!?」


「「「……」」」


 ……そういえば自己紹介はしても素性は何も話してなかったっすね。


 これはこれはと思い口を開こうとしたところで俺よりも早く、ボスが冷たい笑みを浮かべて口を開いた。


「ああ、悪りぃ悪りぃ。初めて会った時も今も俺達にビビってねぇし、状況判断も早ぇ。狩りにあった割には警戒心もなく俺が『ボス』って呼ばれてても何も言わねぇし、ここがどこなのかとも全く聞いてこねぇから……――俺達のこと、最初っから知ってたのかと思ってたぜ」


「……っ」


「?」


 ピリッとした空気が漂う。だが、俺はボスの言いたいことの意味がわからず首を傾げた。


 美少ね……フレイ君、会った時俺達のこと怖がってたっすよね? フレイ君にとって俺達は助けてくれた恩人になってるんっす。その受け答えは助けた時にしたっすし、フレイ君、目覚めてすぐに「ここは……?」って言って俺、答えたっすよ? まぁ、ボスは聞いてなかったから仕方ないのかもしれないっすけど、名前も聞いて来たっすし、今も何者か聞いてきてるんっすからボスは何を疑ってるんっすかね?


 フレイ君はまだ目覚めたばかりなのだから今いる状況、聞きたい情報などこんがらがっていてもおかしくはない。なのになぜボスはこんなにも捻くれた言葉をこんな子どもに投げかけているのか。


 ……はぁぁ、やれやれ。ボス意地悪っすね。


「………………ツキ、殴られたくなきゃ今すぐその顔やめろ」


「はいっす!」


 やばいっす! また顔にでてたっすか!?


「………………はぁぁ。……まぁいい。俺らは狼絆ろうばんっつぅ傭兵団で一応ここの領主に雇われてるもんだ」


「雇われてる?」


「ああ。ここフォレスティア領の領主にな。疑うなら証拠だってある」


「……そうですか」


「んで、今からお前はその領にある街の孤児院に移ってもらう。よし、ツキ行ってこい」


「はいっす!」


 やっぱり行かなきゃダメっすか!泣


 そう思いながらも逆らえず、今度こそ部屋の外へと――


「っ! ま、待って下さい! あの! 僕をここに置いて頂けませんか?」


「!」


「無理」


「ボス!」


 そんなにべも無い!


 即答で断るボスにフレイ君もちょっと顔を引き攣らせている。俺もフレイ君に同情してしまう速さだった。


「え、えーと……」


「お前をここに置いておく理由がねぇ」


「そ、それは……っぼ、僕にはもう帰る場所もないですし、なら助けて頂いた恩返しをしたいと思って……」


「別にいらねぇ」


「ボス!」


 冷たすぎるっす!


「そんなっ……っそれでもどうかお願いします!」


「フレイ君……」


 諦めず、ボスへと訴えるフレイ君に俺は内心拍手と応援を送った。こんなにも必死にフレイ君は懇願しているというのにボスは鋭い目つきを弱めない。


「えらく必死だな? そこまでして俺達の元に留まらねぇといけない理由が何かあんのか?」


「……っ」


「ボス……」


 またもやのボスの捻くれ発言に俺の眉はハの字になってしまう。なぜそこまでこの子を疑う? 言葉の裏を読もうとする? ボスにも癒しが足りていないのではないのか。だからそんな捻くれた目で美少年君を見てしまうのではないのだろうか。


 はぁぁ……やれやれっす……。


「………………」


「いだっ!? なんで頭叩くんっすか!」


「さっき言っただろうが」


「あのっ!」


「?」


「……すみません。確かに下心は少しあります」


 そこから暗い表情で話すフレイ君によると、フレイ君は身寄りもなく、森の奥深くに一人で住んでいたとのこと。そして、たまたま森で食材になる野草や木の実を採集していたところを奴隷狩りに見つかり、攫われたとのことらしい。……どのくらいの期間捕まっていたのか、また森の外に出たことがなかったフレイ君にとって自分がどこにいて、どこから連れてこられたのかすらわからないが、遠くに運ばれたことはわかった。そして、フレイ君を荷馬車で運んでいたゴロツキ達に引き渡され、その引き渡される直前に自分には買い手がもう付いていると言う話を聞いたと言う。――「絶対に逃すな」との言葉と共にだ。


「……このまま……もし施設にお世話になることになったとしてもまた狙われるかもしれません。そうなればきっとその人達に迷惑をかけてしまいます。っあなた達ならいいと、そんな意味はありせん。だけどっ……助けてくれたあなた達といればもうあんな目には……っ。また……っあんな目に会うなんて絶対に嫌なんです……っ。だからどうかお願いします! 僕をここに置いて下さい!!」


「……なるほどな。また狙われるかもしれないから俺らに守って欲しいって言いたいわけか」


 フレイ君の嘆願の言葉にやっとボスは少し考える仕草をする。話の途中、フレイ君が森に住んでいて~と説明している辺りでボスがフレイ君の手を取り「にしては手も肌も綺麗だな」と、急に口説き出した時にはギョッとびっくりしたがよかった。「違う」と睨まれ否定されたが一体なにが違うというのか。口説くくらいなら悩まず頷いてあげればいいものを。


「わかった。なら知ってる情報は全部吐いてもらわねぇとな。お前を買おうとしてた奴は誰だ?」


「……知りません」


「お前を運んでた連中以外のその話をしてた奴等の特徴は? どこでその話をしてた」


「……目隠しをされていたので」


「お前を運んでたゴロツキ連中はどこにお前を運ぼうとしていた?」


「……すみません」


「役にたたねぇ~」


「ボス! 失礼っすよ!」


 それに最後のは知ってるっすよね!


「じゃあ他に隠してることも話せ。俺達にはな、あの馬車には希少種が乗ってるっつぅ情報が入ってきてたんだよ。だからこそ商人共の尻尾も掴めるかと思ってたのに、実際は使い捨ての連中に特にそれらしき種族の奴も乗ってなかった。これ聞いてなんか言うことは?」


「……特に」


「よし、ツキこいつ放り出してこい」


「え!?」


「っ待って下さい!」


「じゃあ話すか? てめぇ人間じゃねぇだろ?」


「え!? そうなんっすか!?」


「ツキお前は黙ってろ」


「……(泣)」


「……どうして僕が人間じゃないと思うんですか?」


 黙っていろと言われたのでシクシク涙をこぼしながら、口に手を当て塞いだ。フレイ君は緊張気味にボスを見上げるもボスは腕を組み、ただ一言……


「勘」


 とだけ。


「……僕は人間です」


「ちげぇな」


「……どうしてですか?」

 
「勘」


「…………」


 勘としか答えないボスにフレイ君は口を閉ざし、難しい顔をする。そんなフレイ君に俺はうんうんと頷いた。


 わかるっすよ~。勘って言われても信用できないっすよね。でもボスの勘ってよく当たるんっすよ? ボスが「こいつなんか悪そう」って言った人は大体悪人っすし、ボスに悪戯を仕掛けても勘で全部避けられるっす。初めての道でも「たぶんこっち」で大体の目的地に迷わず辿り着けるっすし、ボスの勘の精度は仲間達の間では評判なんっすよね~。


 そして、そんなボスがフレイ君は人間じゃないと言うのなら人間じゃないのだろう。この世界には人族の他にも獣人やエルフとか小人族とか鳥人族とか他にもたくさんの多種多様な種族がいるが、パッと見のフレイ君は美少年君だけど耳は尖っていないからエルフではない。獣人やその他の種族によく見られる身長や耳や尻尾、肌、それ以外にもなんら人族と変わりなく、人間のように見える。……気になるフレイ君の種族。聞きたい。聞きたいがボスには黙っとけと言われてしまった。

 
 ソワソワソワ

 聞きたいっすね~聞きたいっす~。


「「「…………」」」


 ソワソワソワソワ

 聞いちゃダメっすかね~。


「「「…………」」」


 ソワソワソワ


 ダメっすか? チラッ


「……なんかツキさんがいると緊張感なくなりますね」


「「……そうだな(ね)」」


 ソワソワ♪





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