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13.理由っすか?
ここに身を置くことになったフレイ君とよかったっすねー! とニコニコ笑い合っていると、イーラさんが切り替えるよう声を上げた。
「さて、とりあえず今後のことも決まったし、フレイ君はまだ目覚めたばかりなんだからそろそろ休ませてあげたいんだけどいい?」
「ああ」
「あ! そうっすね。じゃあ、ボスまたあとでっす!」
「は? 何言ってんだ? お前も出んだよ」
「え? 嫌っすよ?」
俺とボス、お互いに何言ってんだとの表情を向け合う。だんだんとボスの眉間に皺が寄っていき怖い顔へと変わっていくが、そんな顔を向けても無駄だ。今から俺にはフレイ君のお世話を焼くというお仕事が待っているのだから。
「……そいつの世話はイーラがいるし、当分の世話係については他の奴を当て――」
「嫌っすよ!」
「うわっ」
絶対世話役の言葉に違う意味持たせてたっす!!
ヒシっ! とフレイ君に抱きつきボスをひと睨みする。そして、フレイ君を見る。
「フレイ君、安心して下さいっすね! ここにいる間は俺がフレイ君のお世話をしっかりするっすからお兄ちゃんのようになんでも聞いて俺を頼って下さいっす!」
「え? あ、は、はい?」
元気よく言えばフレイ君の目が真ん丸くなる。フレイ君を過剰に警戒し、捻くれた目を向けるボスがつける世話係など、フレイ君が安心してゆっくりと過ごせるはずがない。ならここは俺が立候補する他ないだろう。
「……」
「ヒッ!?」
にこにこフレイ君に笑いかけていれば途端に後ろから漂う冷気にブルっと身体が震えた。
「ツ、ツキ君。フレイ君はまだ病み上がりだから抱きついて無理をさせちゃだめだよ?」
「そ、そうっすね。ごめんなさいっす……」
後ろを振り向くことができないまま、イーラさんの言葉にそっとフレイ君から離れた。そして、浮かれすぎな自分に気付き落ち込んだ。フレイ君は奴隷狩りに捕まり、運ばれ、いくら助けられたといっても初めての場所で不安もいっぱいのはずだ。ボスも敵意丸出しで怖いだろうし一人、テンションが高すぎた。
「あの、フレイ君ごめんっす……」
「……いえ、気にしないで下さい。僕、ツキさんのお陰で今こうして落ち着くことができてるんです」
何がとはいっていないのにフレイ君は慈母のごとく微笑んでくれた。
「フレイ君!」
優しいっす! やっぱりフレイ君のお世話は俺がするっす! 守るっす!
「…………」
「ねぇ、ボス。ツキ君頑固だし、ここは許してあげれば?」
「イーラさん!」
イーラさんの後押しの声に思わず後ろを振り返った。そして、さっきよりも怖い顔で俺を睨むボスを見つめ、再び手を組んで俺は必死にお願いをした。
「ボス~!」
「この三日間で身に染みてるでしょ?」
「…………」
「ダメだって言っても絶対隠れて接点を持とうとするだろうし、ね?」
「……………………わかった」
長い長い長考の末、ボスは苦虫を噛み潰すかのように許可を出してくれた。
「やったっす!! ボス、俺頑張るっすね!! フレイ君よろしくお願いしますっす!」
「ふふ、はい。よろしくお願いします」
「…………ほどほどにな」
「はいっす!」
元気よく返事を返せば脱力したボスの肩をイーラさんが凪いだ目で叩いた。
「……よく決断したね。立派だよ」
「……うるせぇ」
「?」
なんだと見ていればイーラさんがにこりと微笑む。
「なんでもないよ。さぁ、じゃあもういいね。さっきも言った通りフレイ君は病み上がりだからこれ以上騒がしくしちゃダメだよ。フレイ君も、たくさん話して疲れたでしょう? 今日はもう休みなさい」
「……はい。ありがとうございます」
「ツキ俺達も行くぞ。イーラそいつのこと頼んだぞ」
「はいはい」
「?」
「……ツキ動け」
「??? え? なんでっすか?」
ボスに腕を掴まれ、その手を見てボスを見た。そんな自然に部屋出るぞ感出して俺の腕を引っ張って行こうとしないでほしい。俺はフレイ君のお世話係になったのだ。なのに、何故ボスと一緒に部屋を出ていかなければならないのか。
……もしかしてボス、今さっき言った言葉をもう反故にするつもりっすか。
「…………」
ジトーっとボスを睨みつけた。
「……なんだその目は。てめぇ俺に喧嘩売ってんのか? あァン!?」
「痛いっす!!」
ついにキレたボスによって顔面を鷲掴みにされギリギリと力を入れられてしまう。だが!!
「だってさっきフレイ君のお世話係になってもいいって言ったっすよね!?」
「今からそのガキは寝るんだからすることねぇだろ! 明日からだ明日から! 今はゆっくり休ませてやれよ!!」
「ハッ! た、確かにそうっす……」
確かに寝るのなら今やることはない。それに寝ると言うのならそれを側で見られていてはゆっくりと休めないかもしれない。ここはボスの言う通り部屋から出ていくしかないのか……。
……本当はもっと一緒にいたかったっすけど仕方がないっすね。
納得した俺に気付いたのか、ボスは「ったく」と言いながら乱暴に俺の顔から手を離した。
「ほら行くぞ」
「待ってほしいっす」
「ああ゛?」
悪人みたいな声を出すボスを無視して、俺はフレイ君に駆け寄りヨシヨシとフレイ君の頭を撫でた。
「フレイ君おやすみっす。ゆっくり休むんっすよ~」
「え? あ、はい。おやすみなさい……」
フレイ君は俺の行動に驚いた表情をするも、すぐに照れた顔で笑顔を見せてくれた。それに俺もニッと笑った。
「はいっす! おやすみなさいっす!」
そして、ボスと共に部屋を出る。
「……お前、あれやめろよ」
「え? あれってなんっすか?」
扉が閉まったところでボスが微妙な表情で俺を見下ろした。
「……頭撫でるやつだよ」
「なんでっすか?」
「なんでって……なんかあれだろ?」
「?」
ボスの言いたいことが分からず首を傾げる。ボスは難しい顔をした。
「お前、ことある毎にフレイの頭撫でるの、あれなんでだ?」
「ヨシヨシっすか? だって不安な時とかにヨシヨシってされたらなんか安心するじゃないっすか」
「安心?」
「はいっす! 俺も昔、ボスにヨシヨシってされた時すっごく嬉しくて安心したっすから、それの真似っこっす!」
子どもの頃、不安で怖くて泣いていた時いつもボスは俺の頭を撫でて声をかけてくれた。ボスに頭を撫でられると一人じゃないのだと慰められ、心強く、そして胸がポカポカと暖かくなって大好きだった。それは今でも変わらない。だから俺はフレイ君にもするのだ。
「俺、ボスに頭撫でられるの大好きっすよ?」
へへ/// とボスに照れながら笑いかける。仲間から撫でられるのも好きだがボスに撫でられるのは特別に好きだ。
「………………反則だろそれは」
顔を手で押さえ天を仰ぐボス。
「……クソ可愛い」ボソ
「? ボス?」
なんて?
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