不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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115.立てっす俺…!

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 あ、と後ろから聞こえた男の子の声。沈みかけていた意識をハッと前に戻せば、目の前に敵がいた。対処するには十分な位距離で、大丈夫だと男の子に返そうとしたところで頭に固いものが直撃し、目の前が一瞬暗くなった。


 ……男の子が言った「あ!」とは敵のことではなかったよう。


「さっきからちょこまかうぜぇんだよ!!」


「ッッぐっ! ……っ!?」


 っやばいっす……!


 振り上げられる剣に、揺れる視界になんとか避けるも薄ら横腹を斬りつけられ、そのまま体勢を建て直す暇もなく胸元を掴まれ地面へと叩きつけるよう放り投げられてしまった。


「……つッッ!」


 っ立てっす……!


 守っていた人達から離されてしまった。すぐに立たないといけない。なのに身体を起こそうとしてもまだ頭に受けた衝撃のせいで目の前がクラクラする。体にも上手く力が入らず、片肘をついた状態でプルプルと震えることしかできなかった。たぶん頭に当たったのは石だ。小石じゃない石だった。


「~~っ」


 街の時もそうだったっすけど、花瓶といい石といい大切な時に重たい衝撃を的確に頭に与えてくるのはやめてほしいっす……っ。


「はは痛そ~」


 バーカルの声が聞こえる。でも、それに言葉を返すことはできない。そのあとに、俺を地面へと叩きつけた男の満足げな声が聞こえてきた。


「はぁぁやーと邪魔者がいなくなったぜ。さぁ誰で遊ぼうかね~」


「ひぃっ」


「遊ぶのはいいですけどちょっとツキさんに守らせ過ぎですよ! 誰でもいいですから――一人くらいはもうさっさと片付けて殺して下さい」 


「へーい」


「ッッ!?」


 やばいっす!!


 全身から汗が吹き出す。バーカルが殺す指示を出した。大丈夫。脇腹も叩きつけられた衝撃もそれほどダメージはない。頭への衝撃も花瓶の衝撃に比べたらましだ。走ったら間に合う。早く立って――


「ふっ……ぐぅっっ……ッ!!」


 あーー!! 立ち上って下さいっすよ! 力入って下さいっすよ!!


 ここにきて一気に今までの疲労が襲いかかってきた。頭では色々考えられるのに、体が思うように動いてくれない。ここまでくる間にもうボロボロであちこち痛くて苦しくてしんどいのだ。


「~~ッくっっ」


 それでも立たないといけないんっす!! 泣くなっす!!


 この状況に、目の前の状況に涙が出そうになってくる。しんどい、苦しい、痛い、だがそんなことどうでもいい。なんならもっとこの傷の痛みが、体の辛みが酷くなってもいいから、苦しくなってもいいから目の前の人達を助けるために身体よ動いて欲しい。


「ふんぎぃぃいっ!!!」


 っこんな時の火事場の馬鹿力とか言うじゃないっすか!! あと少し、もう少し頑張れっす! 今この状況を打破できるのは俺しかいないんっす! 今ここを乗り切れば最悪は乗り切れるっす! また膠着した状態には戻れるんっす! そうすれば絶対ボス達はきてくれるんっすから頑張るんっす自分!!!


「ふんぐぁぁあ!!!」


 気合いを入れて思いっきり腕と足に力を入れて立ち上がる。プルプル震えて転んでしまいそうだった。だけど、立てた。――そう、立てたのに……


「へへ悪いな頭の命令だからよぉ」


「――っ」


 ……なんでっ。


 どうしてこんなにも遠く感じるんだろうか。もう、捕まっていた人達の目の前に男がいる。男は怯えた人達の中から唯一の子どもに目をつけたようで、ニヤニヤ男の子の肩に手を置いた。それに男の子は大きく肩を跳ねさせるも、さっき俺が言ったことを守って顔も上げず、ぎゅっと身を小さく丸め、頭を抱えてそこにいる。――そんな男の子に男は剣を振り上げた。


「じゃあな!」


「――っつ!」


 助けるっす絶対に助けるっすからやめっっ!!


 ……自分の一歩が遅い。目の前の光景がゆっくりと、すごくゆっくりと目に映る。どうしてこんなにも全てが遅いんだろうか。動くスピード全て遅い癖に、焦る心や恐怖心はその比ではないほど頭を駆け巡って、心臓を大きく鳴らして満してそして……


 ――溢れた。


「あ゛あ゛ぁぁあやめるっすッッ!!!」


 ……ドーン   ――……ガラッ


『やばっ』


 ゴォォォォンッッ!!!


「…………え?」


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