不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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129.汚いっすよ? 

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「……ツキ」


「……なんっすか?」


 ぎゅっとボスのお腹に顔を押し付けくっついたまま、ぶっきらぼうに返事をした。俺は真剣に、真面目にボスに死なないでくれと、一人にしないでくれ怪我をしないでくれとお願いをしたのに、ボスの声はどこまでも嬉しそうで浮かれている。そんなボスに、少しムッとする気持ちとどこか照れ臭い気持ちが存在し、そんな返しになった。


「今すぐ帰って結婚するぞ」


「…………え?」


 ……結婚?


「? っうひゃあ!?」


 ボスの口から出た言葉にポカンとボスを見上げたと同時に抱っこするように持ち上げられた。そのままボスの左腕が椅子になるような抱き方で固定される。


 ボス、力持ちっすね……。


 何気なくボスを見下ろすと、ボスと目が合った。ボスは空いた右手で俺の頭を掴むと、俺を引き寄せ耳元で囁く。


「安心しろ。これからも、死んでからもずっと一緒にいてやるし、ドロドロに甘やかしてやるよ」


「――っっ///」


 囁かれた色気をたっぷりに含んだ低い声に全身がカッと熱くなる。


 そう言うところっすよボス!!


「っは、離すっす!」


「はあ? 離すわけねぇだろ? やっと両想いになれたんだ。昔の約束通りすぐにでも嫁にしてやるかな~」


「っ!?///」


 ……ちょっと昔の約束を覚えていたのかと喜んでしまったが、恥ずかしいのでやめてほしい。もうボスの声は顔を見なくても上機嫌なのが丸わかりなほど軽やかなものだ。


「……うわ~坊ちゃん顔にやけすぎだろ」


「ツキ見つけるまで悪鬼オーガ顔負けの凶悪顔晒してたくせにな」


「あ~あ、でもついに結ばれちゃったなぁ。焦ったくてモヤモヤさせられてたけどなんだこのちょっと寂しい気持ち……」


「「わかる~」」


「……」


「ぅぅ……よかったな。ツキ、ラック」


「あ! モージーズー、レト兄! 助けてくださいっす!」


 近くにホロリと涙を流すモージーズーと、普通に泣くレト兄を見つけ手を伸ばした。だが、レト兄には先約がいた。フレイ君だ。


 ……ってまだフレイ君縄つけられたままっす! 今度はレト兄に脇に抱えられてるっす!!


「ボス! フレイ君が!」


「ああ、そうだな。チッ、うるせぇ奴らが来やがったな」


 そんなことを言ってないっす!


 忌々し気なボスにモー達がへへっと笑いながら近づく。


「いや~もう真面目話し終わったかな~と思って」


「俺らだってツキと喋りたかったのに坊ちゃんが口出すなっていうから我慢してたんだぜ?」


「そうそう! 俺達もいっぱい言いたいことあったのに遠慮してやってたんだからな! ツキ、あんま深く考え込みすぎんなよ。俺らはちゃんと全部わかったうえでそれでもお前と一緒にいるんだからな! だからお前このあと説教な。俺達の覚悟と愛を舐めやがって」


「あうちっ!」


 ペシペシペシッとおでこにズー達からの軽い平手打ちが入る。それにまた目がうるっときた。


「~~」


「おい、これ以上ツキ泣かせんな。その話はさっき俺がしたからもういいだろ」


「いや、よくねぇだろ!? 何ちょっと優しい雰囲気出してツキを守ろうとしてんだ! 俺らからもちゃんと言わせてくれよ!」


「そうだそうだ! 坊ちゃんだけかっこつけていいとこ取りしようとすんな!」


「ツキとやっとこさ両想いになれたからって調子に乗るなよこの坊ちゃんめ!」


「うるせぇよ」


「ツキ……、無事でよかった」


「レト兄……。はいっす。レト兄も無事でよかったっす」


「ああ。落ち着いたか?」


「……はいっす」


 かけられる言葉に涙を拭いながら照れ笑いを返した。そして、そのまま自然にボスの腕から降りようとすれば気付いたボスに阻止される。


「ダメに決まってんだろ」


「っや! っす!」


 ちっ! ダメだったっすか!


 俺はもうみんなから向けられるこの生暖かい優しい目に限界なのだ。モー達やレト兄だけじゃない。ここにいる仲間達全員からそんな目を向けられているのだ。ちょっと恥ずかしいのだ。一旦隠れさせてほしいのだ。なのに……


「ボス! 離してっす!」


「無理」


 どれだけジタバタ暴れようともボスは決して離してくれず、俺のこの体勢も崩せない。一体どうなっているのか。


「くっ……! あ、そうっす! ボス! やっぱり離してっす!」


「無理だっつってんだろ。なんだツキ、逃がさねぇって約束したばっかだろ。まだ反抗期継続中か?」


「ムッ! 反抗期じゃないっす! 俺、今汚いんっすよ?」


 やや首を傾げつつボスを見る。一つ、今すぐ俺を離した方がいいことを思い出したのだ。


「汚くねぇよ。確かにボロボロで汚れてるけど、これはお前が頑張った証だろ? 仕事してらぁこうやって怪我して汚れる時もある。あとで手当してもらえ。俺が運んでやるからあとでな」


 あとで二回言ったっすね! そんだけ離したくないってことっすか! ボスの言う通り俺頑張ったっす! でも違うっすよ!!


「違うっす! 俺の足、バーカルのバーカルじかに蹴っちゃったっすからちょっとあれっすよ?」


「はあ? ………………は?」


「「「「「…………」」」」」


 その場がシーンっと静かになった。固まったボスにチャンスだとその腕から逃げ出す。


 本当ならば、この生暖かい視線から逃れるためどこかへと隠れたいところだが、今隠れてしまってもみんなに照れているからだとバレバレで、余計に生暖かい目で見られそうだ。なので、なんでもない風を装い、ボスと同じく固まるレト兄の脇に抱えられているフレイ君の元へ行き、誤魔化すように声をかけた。


「フレイ君大丈夫っすか?」


「……大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば大丈夫じゃないですが、今はこっちに来て僕の存在を思い出させないで欲しかったです」


「え?」


「…………フレイ。そういえばてめぇ、ツキがあの馬鹿に襲われてるとかなんとか言ってたなァ。ツキ、それで汚れたのか?」


 地の底から響くような声とはこのこと。怖いが、俺には達成感があった。


「そうっす! バーカルの奴、ズボン脱いでアレを見せつけてきたっすから蹴り上げてやったんっすよ!」


 ボスに向かってここでこう! っと右足脛を指差し蹴り上げる動作をする。


「…………へー。よくやった。けど、なるほどな。フレイのあん時の言葉はその時のことを言ってたわけだ」


「…………」


「?」


 フレイ君何か言ってたんっすか?


 じーっとフレイ君を見るも、フレイ君はレト兄に抱えられたまま脱力したように顔を伏せ続けている。いや、脱力したように見えて緊張に身体が強張っているようにも見える。何を言ったのだフレイ君。


「……まぁ今はいい。帰ればたっぷり時間はあるしな。――レト、絶対そいつを離すなよ」


「わかってる」


「ぐえっ」


 ボスの言葉にレト兄がぎゅっとフレイ君を抱える腕に力を入れたため、フレイ君から悲しい潰れた声が出た。そんなフレイ君をボスは冷たく見やったあと周囲へと視線をやる。


「おい、誰か今すぐズボンを脱げ。んでツキはそいつのを着ろ」


「え?」


「うぇ!? 坊ちゃんそれはないぜ! 今ここで脱げと!? きゃっ恥ずかしい! 坊ちゃんの変態! エッチ!」


「えーツキ可哀想だし脱ぐのはいいけど、でも俺絶対ツキのズボンを履くの嫌だぜ? ツキがここでこう! とかいうからナニ蹴り上げた部分めっちゃ意識しちまいそう。鳥肌立ってそこから病気になりそう……」


「俺だって貸すのはいいけどそれ履いて帰るのはなぁ。まず入らねぇし入ったとしてもジーの言う通り……。それは他の連中も同じだろうし、だとすればパンツ丸出しで……っおい! 誰か勇士はいねぇか! ここからパンツ丸出しでアジトまで帰る勇士は!」


 ズーが叫ぶ。それに困ったよう仲間達は顔を合わせた。


「俺もズボン貸すのはいいけど丸出しはちょっと……」


「俺も恥ずかしいなぁ」


「どうする?」


「誰いく?」


 コソコソとモー達の元に集まり出した仲間達は、誰が俺にズボンを貸すか相談を始める。それに、俺はまたまたうるっときた。


「みんな優しいっず~」


「……ツキさん馬鹿ばっか」


 優しい仲間達に感動してズズッと鼻を啜っていれば、俺の横でボスがイライラと片足を踏み鳴らした。


「おい、さっさと決めろよ!!」


「「「「「じゃあ坊ちゃん(ボス)が脱げよ!!」」」」」


「あ゛あ!?」


「……いや、パンツ丸出しに何なくても他にも方法もあると思うんだけど……」


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