「残念。バレバレです」~気付いた時にはもう遅い──。隣の席のS級美少女の机下に潜り込んでいました。……どうしてこうなった?

おひるね

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最終話

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 それから──。
 俺は逃げるように家に帰ってきた。

 あのまま一緒に居たら、パンツを買うしかなかったから。
 ここでもし、パンツを買わなかったのなら、今までいったいなんのためにスタンプを押してもらっていたのか、葉月さんに説明がつかない。

 でも近い将来、買わなければいけない。
 そうじゃなければ、つじつまが合わなくなってしまう──。

 葉月さんのパンツ……。ブラ……。

 今まで過ごした時間が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。

「俺はそんなもののために、君と一緒に居たんじゃない……」

 涙は枯れたはずなのに、それでもまだ流れてくる。

 どうしてあの時、消しゴムは葉月さんの机の真下で止まってしまったのか。

 始まりから全てが壊れていた。

 そのことに、終わりをもって気付かされた──。



 ☆

 どれくらいの時間が経ったのだろう。
 陽は落ち、部屋は真っ暗になっていた。

 ボーッと天井の染みを眺めようにも、暗くてよく見えない。

 電気つけようかな……。

 いいか、べつに。


「おっ兄ちゃーん。ご飯できたってママーンが言ってるよーん」

 なんのことなしに、ノックもせずに妹が俺の部屋に入ってきた。

「どったのお兄ちゃん? モード・黄昏を開眼させちゃったのかな?」

「あぁ悪い。学校帰りに買い食いしてきちゃったから夕飯はパス」

 バタンと部屋のドアが閉まった。
 気を利かせて出ていってくれたのかな、なんて思ったのだが──。

「目、腫れてるじゃん。どしたの?」

 事もあろうか妹はベッドに腰掛けていた。

 恋愛マスターを自称するうちの妹は、なんでもお見通しのようだった。

 それから仕方なく今日の出来事を話すと、妹はニヤリと笑った。

「くよくよしなーい! さあ、お兄ちゃん消しゴムをまん丸に削るよ!」

 元気ハツラツな様子に、正直困った。
 今はひとりになって、天井の染みを眺めていたいのに。

「それはまた、今度な」

「善は急げだよ! この機を逃したら本当に終わっちゃうよ?」

 本当に・・・という言葉に、俺は食いつかずにはいられなかった。

「まだ、終わってないのか?」
「とーぜん! というか、やっと始まるんだよ。葉月さんはお兄ちゃんのことを待ってるとみた!」

 なんだって……?
 自信有りげな妹の様子をみるに、嘘はついていない。何よりうちの妹は恋愛マスターだ。

「信じていいのか? これ以上辛いことがあったらな、兄ちゃんは風に流れて何処かに消えちまうかもしれないぞ?」

「恋愛マスターのわたしを信じなさーい!」
「わかった!! でも消しゴムなんて削って何に使うんだ?」

「そんなの決まってるじゃん! 消しゴムころころ転がしちゃおう大作戦、2ndシーズンだよ! ここからまた、始めるんだよ!」

「それはさすがに、無茶なんじゃ?」

「ノンノン! いい? 次はパンツをせがんじゃダメ。スタンプ十個貯めたら、君に伝えたいことがある! とかそんな感じのやーつ!」

「なっ──」

 せがんだつもりはない。
 でもそういうことになっていたのも事実。

 こんな無茶苦茶な作戦が通るとはまさかにも思えない。そんな俺の様子を見かねてか、妹は俺の肩をポンっとしてきた。

「掛け違えたボタンを元に戻すんだよ。お兄ちゃんが欲しいのはパンツじゃない。そのことを、今度はハッキリ言ってやるんだ!! 絶対うまくいく!!」

 その言葉を聞いて、ハッとした。
 あぁそうか。そういうことだったのか……!

 いつだって俺と葉月さんの間にはおパンツ引換券があった。

 そう。これはポイントカードじゃない。

 ポイントカードとしか思っていなかったから誤解していた。スタンプを十個貯めたらおパンツと交換できる、そういうやましさ満点の歪なもの。

 それを根底からやり直す!

 だからこその2ndシーズン!

 さすが恋愛マスター!

「わかった!!」

 元気な声で返事をすると妹は「フッ」と鼻で笑った。
 その余裕な様子からは作戦の成功は手中にあると確信に足るものだった。


 俺たちは夕飯を食べるのも忘れ、消しゴムをまん丸にする作業に没頭した──。


 ◇ ◇ ◇

 そうして翌日。朝のHRホームルーム前。
 俺はまた……消しゴムを落とす──。

 今回は彼女の足下に狙いを定め、あの日をもう一度繰り返すために!

 そりゃっ!
 コロコロと転がる。昨晩、妹と擦ってまん丸にした消しゴムは思いの外、コロコロとコロコロコロコロと転がり続けた。

 そしてそれは、葉月さんの足下を通過する勢いだった。

 と、その瞬間!
 消しゴムは葉月さんの上履きに当たった。

 あれ……?
 さっきまでそこに脚はなかったはず……。確実に消しゴムは葉月さんの机を通過する勢いだった。
 なんだかそれはとってもデジャヴのように思えて、記憶の中で何かが繋がった。

 そうか、あの時も──!
 今更過ぎる答え合わせに、クスっと笑みが溢れる。


 そして──。


「残念。バレバレですよ?」

 そう、ひとことだけ言った彼女の顔は意地らしくも可愛げのあるものだった──。



 もう一度、また。

 ここから、始まる──。


 今度はおパンツ引換券ではなく、君に好きと伝えるためのポイントカードを──。
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