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しおりを挟む「刃物はダメ。怪我しちゃうでしょ」
そう言うとカリンは台所をガサゴソしだした。取り出したのは何故かアイスの棒だった。
「これで十分。わかってると思うけど、お兄ちゃんに怪我さしたらレオナでも怒るからね。その時は容赦しない」
フッとし右腕を見せ付けた。
「……トワイライト・DGD」
後ろへ一歩おののき、血相を変えた。
劇かな? 迫真の演技すごーい!
……って。はぁ。見てるこっちが恥ずかしくなるわ。カリンは九歳だからいいんだ。言ってしまえば健全だ。
でも、お前は歳を考えろ。いくつだよ。俺と大して変わらんだろ。
それともなにか? 役者志望なのか? 女優にでもなりたいのか?
そんな事にうちのカリンを巻き込むんじゃねえよ!
「おいっ! さっさと表に出ろ! なんちゃらシンフォニーさんよ!」
「レオナ・ル・シンフォニーよ。どうやら記憶力はノミ以下のようね。準備するから待ってなさい」
軽くため息を吐くとカリンからアイスの棒を受け取った。人差し指と親指でそれを掴むとシュッシュと空を突き始めた。
唖然とした。この女、アイスの棒片手に何をしているんだ……?
「まぁ、無いよりはマシね」
バサっと俺にアイスの棒の剣先を向けた。……この場合、剣先と言っていいのか謎だが。
どうやらガチでアイスの棒でやるつもりらしい。
「ほら、いくわよノーマル。怪我させないように最大限に手加減して、あ・げ・る」
アイスの棒片手にこの自信。
どうやらこいつは、俺が思っていたよりも遥かに厨二病レベルが高いようだ。
とはいえ、俺のやることは変わらない。
幻想を打ち砕く。
この世界にマナとやらがないからレイピアを顕現できない。マナがないから魔法を使えない。
そうやって何でもかんでも厨二病設定を広げて逃げてきたんだろうな。良い歳して恥を知れってんだ。
これがあれか。大人になった厨二病ってやつか。一人で楽しむならまだしも妹まで巻き込んで、なにしてるんだこの女。
カリンはさっきから俺が負ける前提で話してるし。どんだけのことを吹き込んだんだ。
九歳をだまくらかして恥を知れってんだ!
◇◇◇
ほんの一瞬。何が起こったのかわからなかった。
気付いときには、太陽の光が眩しかった。
「驚いたわ。まさかこれ程までに弱いなんて。あなた本当にカリンの血族なの? こんな棒じゃなかったら、確実に心臓止まってたわよ」
あぁ、負けたのか。
俺は……仰向けに寝っ転がってるのか。この華奢な身体のどこにそんな力が。
──……そうか。カリンが騙されるくらいだ。何かしら武術の心得があるのだろう。
「剣道の……達人?」
「剣道って。ノーマルらしいと言うかなんと言うか」
地べたに倒れ込む俺にカリンが駆け寄ってきた。「良かった。怪我はないね」と、俺の身を案じてかホッとした表情を見せた。
するとレオナと厨二病話を始めた。
「でも、あながち間違ってないんじゃない? 結局、この世界にはマナがないから魔法は使ってないわけだし」
「言われてみるとそうね。感覚や体内時間の差かしら。そういうのを達人って言うんだっけ」
「そそ。たぶんそんなとこ」
そんなとこって、どんなとこなんだよカリン……。
いや、ほんとこの女。
うちの妹を……騙くらかして、洗脳して……。
「ごめんなカリン。お兄ちゃん負けちゃったよ」
「しょうがないよ。別に気にしてないからいいよ。お兄ちゃんが無事ならわたしはそれでいいし」
「カリン……!」
「ほら、お家の中入ろう。外は暑いからさ」
それでも俺とカリンは兄妹だ。
勝っても負けても俺とカリンの関係は何も変わらない。
「なんか嫉妬しちゃうわね。勝ったわたしにはなにも言ってくれないの?」
「レオナは勝って当たり前でしょ。うちのお兄ちゃん相手にムキになって。恥を知ること」
「それもそうね。ノーマルを相手にした時点で団長として恥ずべき行いだったわぁ~」
カリンに手を引かれ立ち上がろうとする俺をドヤ顔で見下ろしてきた。
「…………」
めっちゃ、してやったりな顔してどの口がそれを言うか。
大人になれなかった大人。
厨二病症候群。その模範とも言える女。れおな・る・なんちゃらー。
今ならまだ……カリンは間に合う。
でも、今の俺になにができる。
この女の強さは異常だ。実力行使は無理だと考えるのが妥当だろう。
剣道を小さい頃からやってたんだろうなぁ。
厳格な父を持ち、実家は古風漂う剣道場とかそんな感じだろ。それくらいの強さがあった。
それがどうして、聖くろす騎士団とやらになってしまったのか。名前もおかしかったな。
れおな・る・なんちゃらー。
おまえ、日本人だろ。苗字はどうしたんだよ。
世の中、おかしなことばかりだ──。
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