優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

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44話

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 ちほと付き合って1週間が経った。梅雨が見え隠れする6月上旬。
 湿気が体にまとわりつき、どんよりする季節。
 しかし今年は違う。甘々シュガーに包まれ、ぽかぽかデイズを送っている。

 どっぷり浸かってしまった。もう、ちほなしの日常は考えられない。

 妖精さんは僅か2日で『きもっ!』っと心ない言葉を吐き捨て、フェイドアウトした。
 その為、家で怠惰な動画ライフを送っている。


 ──ガタンゴトン~ガタンゴトン~

 《次は「御砂糖~御砂糖~」お降りになる際はお忘れ物などないようご注意下さい~》

 そして、最も衝撃を受けたのがこれだ。毎朝、俺とちほは同じ電車、同じ車両に乗っていたのだ。

 御砂糖おさとう駅でちほは乗車してくる。後ろから数えて四両目。理由は様々あるが、この際どうでもいい。

 ちほほどの可愛い子が同じ車両に居るのなら、気付きそうなもんだが、俺はタイムリープ生活を含む数十年、一度たりとも気が付かなかった。

 SSS級美少女が居るんだ。視線も一極端に集まっているというのに。

 人の興味とは恐ろしいものだ。もっと早くに、最初の人生で出会っていれば。どうなっていたのだろうか。

 ……取りこぼした過去を考えても仕方がない。

 

 四両目の車両。二番目のドアで待つ。


 《開くドアにご注意下さい》


  ガシャンッ


 「りっくぅぅぅん!!」
 おはよーと抱きついてくる。りっくんの匂いだぁ! などと朝の挨拶を交わすのはもはや日課だ。

 俺もすぅぅぅぅっとちほの甘い香りを体に吸収する。いっそ抱きしめてしまいたいのだが、まだ少し怖い。

 初めて抱きしめたあの日の感触が忘れられない。
 ちほの体からは力が抜け、まるで俺に身を委ねるかのような。俺だけのものになったと錯覚するあの感じ。

 ──今はまだ、手を添えるくらいがちょうどいい。


「雨降ってきて困っちゃったよぉ。傘持ってないから、濡れちゃったぁ!」
 ピンクの可愛いらしいタオルで体を拭き始めた。

 そっかそっかと俺は頭を撫でる。
 しかし、気付く。濡れた痕跡がないことに。

「あー、りっくん傘持ってるぅ! いぃーなぁ!」

 ……なるほど。このためだけに傘を捨てて来たな! まったくもう。仕方のない子だ!

 ……いや、手提げ袋の中に折りたたみ傘が。あ……る。

 俺の視線を感じてか、ちほも手提げ袋の中をみた。ハッとした素ぶりを一瞬見せるも、ささっと下に追いやり隠した。

 うん。この子は出来る子だ。100点!!
 何も見てない。ちほは傘を持ってない。よしっ!

「じゃあ、一緒にさして行くか」
 満面の笑みでうなずく彼女。この笑顔の前では些細な事さ。

 恥ずかしくて言えない事もある。理由は探すのではなく、作る。これこそがカップルなのだ。


 こんな事ばかりをしているから『きもっ!』と言われたのだろう。自覚はある。が、やめられない!
 
 朝の電車で人目もある。が、やめられない!


 ──俺は甘々デイズの虜になってしまったのだ。
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