優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

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53話

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 お金が欲しい。おそらく人生で一番お金を欲している。
 バイトする? うーん。

 俺は今、妖精さんとバーガー屋さんのカウンター席で夕飯を食べている。この食事代も毎日となると結構な金額だ。高校生のお財布事情はシビアなのだ。


 求人情報誌をパラパラめくる。
 ガテン系かぁ。引越し屋とかもいいなぁ。プロテイン飲んでるし!


『何笑っとるんじゃ。きっもいのう』

 げげっ。ポテトの箱の中でトリプルイチゴバーガーを食べてたはず。油断した。

『二見ちゃんの事でも考えてたんじゃろう? ほんと、きっしょいのう』
『今は違う!』
『じゃあ、なんじゃ? 言ってみぃ?』

 クッ。

『バイトしようかなぁと思ってさ』
『ほう。バイト……とな? ふーん』

 どうして蔑んだ目で見てくるんだ? 白石みたいな目で見てくるな!

『どーせ、二見ちゃんの為にじゃろ~?』

 察し。わかってるなら聞かないでくれよ。

『はぁ。面接受かるまでタイムリープしてやるから安心せぇ。ファイトじゃリク!!』

『よ、妖精さん!!』

 ほんと、いつもありがとう。

 よぉーしっ! 条件良さそうなところ探すぞ~!


「へ~。求人情報誌かぁ。いちごちゃんはバイトを探してるのかな?」

 突然、女の人が覗いてきた。
 いやいや。誰ですか? いちごちゃんって俺に向かって言ったのか? えっ、ほんとだれ?

 よく見るとバーガー屋の店員だった。大人の女性。こんな人居たっけ?

『なんじゃこの超絶美人? 知り合いか?』
『いやいや、全く知らない』

 二人でポカーンとしてしまった。


「おいおい、いちごちゃん。シカトは傷付くぞ~?」

 頭をバサバサしてきた。馴れ馴れしいなんてレベルじゃない。えっ、どこかで会ったことあるのか?

 ない。こんな人知らない。

「たぶん、誰かと間違えてます。俺はいちごちゃんじゃありません」
「いやいや、間違えてないよ~! あははは」

 いやいやいやいや! 誰?!

『リク。この店はこれからも通う事になる。頼むから、怒らないでくれ。妖精さんからのお願いじゃ』
『大丈夫だよ。わかってるから』

 

「あ~、悪かったね。私は高妃 楓たかひ かえでだ。この店長をしている者だ」

 店長?!!! それよりも自己紹介をしてきたってことは……知り合いじゃないだろ!

 これはあれか、一度会ったら友達みたいなノリなのか? 毎日会ったら家族とか言い出しちゃう感じですか? 背筋が寒い。悪寒を感じる。無理だ。

 危ない。この人は危ない。関わらない方がいい。

「さっそくだけど、いちごちゃんはバイトを探してるんだろう? 採用だ!」

 いやいや! いやいやいやいや!! 
 何言ってんだこいつ?!

『何言ってんだこいつ!!』

 妖精さんとシンパシーしてしまった。でもこれは、当然の反応だ。

「こらっ! 話し掛けられたらちゃんと返事しないとダメだぞ!」
 げんこつをもらった。なにこれ……。

「すみません……」
「わかればよろしい! とりあえず事務所に行こうか」

 …………。はぁ?!
 
『妖精さん……どうしたら良い?』
『いちごちゃんに成り切ってみたらどうじゃ? やばそうならタイムリープしてやる』

 ボソッと『面白そうだし』と聞こえたのは気のせいだろうか。まぁ、いいか。妖精さんが言うんだから。


『リク、待つのじゃ!! やっぱりダメだ!! これはまずい!!!!』
『ど、どうしたんだよ妖精さん?!』

 異様な空気。ここまで焦る妖精さんは珍しい。やはりこの女、何かあるのか……?



『まだ、まだダメなんじゃ……』
『ど、どうしたんだよ?』



『食事の途中じゃぁぁぁ!!』

 モグモグモグモグモグモグ。


 ──ただの食い意地でした。
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