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60話
しおりを挟む「おまたせ~」
店長さんがSサイズジュースを持ってきてくれた。
俺と最側はお礼を言い、いただきますをした。
しかし、店長さんは俺を見ている。
いや、視線の先はストロー。と、思ったら今度は俺の唇を。
何かある。絶対何かある。
「どうした? 飲まないのか?」
「いえ、いただきます」
飲まなければ先には進めない。何を言われても吹き出さない。深呼吸。よしっ!!
ストローを口にした事を確認すると、店長さんはニコッと笑ってみせた。そして二度うなずいた。
さぁ、来い! 今度は吹き出さないぞ!!
「じゃあ、シフト決まったら教えてくれ~!」
えっ?! 何もない……だと?
単なる思わせぶり?
て、店長、あんたって人は……。次から次によくもまぁ……。
◇◆◇◆◇◆◇◆
シフトは決まった。どうやらと言うか、やはりと言うか。俺と最側は〝バディ〟のようだ。それで〝ニコイチ〟と表現したのだろう。
詳しい事は教えてもらえてないが、クルー不足の元凶はこの女〝最側彩乃〟のせいだと察しはついた。
「せーんぱい! これからよろしくお願いしますねッ♪」
上目遣いのぶりっ子&人差し指顎IN!!
言わずもがな。誰にでも愛想を振りまく最側。こういう無責任な愛想が周りに及ぼす影響は夢銀河級だろう。
大体の想像はつく。
「少しは店長を見習え」
よろしくと言う最側を冷たくあしらった。
「「えっ?」」
店長さんと最側は声を揃えて驚いたような表情をした。
あれ、なんかまずい事言っちゃったかな?
「これは驚いた」
「人を見る目はあるんですねー、驚きましたぁ」
そりゃあ、最側がダメなのは一目瞭然だろ……。何を驚いてるんだ?
「ますます気に入ったよ。いちごちゃん」
なぜか肩を叩かれ、褒められてしまっているようだ。
しかし店長が俺に向けるその目は〝ペット〟を見るようなそれ。何を考えているのだろうか。
よく意味がわからないので、とりあえずうなずいた。
「もうこんな時間か。申し訳ない。気を付けて帰るように」
時刻は21時半。食事に来ただけなのに色々あったなぁ。明日からバイトだし。
「あー、最側。帰りに従業員出口について教えてあげてくれ」
「はいはぁい」
相変わらず気の抜けた返事。この子は大丈夫なのだろうか。
「じゃあ先輩♪ 行きましょぉー」
俺はテクテクテクテクと最側について行った。
ガチャンッ。扉が開く。ここが出口か? 疑いなく最側の後ろに続くように扉を跨いだ。
「せんぱーーい! 着替えるんで後ろ向いててくださぁい」
「あぁ、わかった」
…………。えっ?! 着替える?! ここどこ?!
よく見てなかったけど、ロッカーっぽいのが並んでいたような。もう振り向けない。今振り向いたら、きっと言われてしまう。
〝事案発生〟!!
割と狭い個室。ここってもしかして……。
──最側彩乃、俺は彼女を侮っていたのかもしれない。
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