優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

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62話

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 ガチャン。

 更衣室から出た訳だが、すぐ隣に似たような部屋がある。待ってくれ。おい、待ってくれ。

「なぁ、最側。この部屋は何?」

 俺はすぐ隣の部屋を指差して聞いた。

「あー、そっちわぁ、男子更衣室ですよぉ」

 おーーーーーーーーーーい! お巡りさんここです。俺です。俺なんです。

 パニック。薄々、感付いてはいたが、
 いざ現実を目の当たりにすると堪えるものがある。


「えっ、どうかしたんですかぁ?」
「いや、おまえ……」
「なんですかぁ?」

 最側はガチで何もわかっていない様子だ。演じてるようには見えない。天然? いや、こいつに限ってそれはない。ありえない。

「俺は女子更衣室に入った。そういう事だよな?」

 キョトンと無言になる最側、しかし次第に……

「あは、あはは! 先輩うけるぅ! そんな事気にしちゃうんですかぁ?」

 神妙な面持ちの俺をよそに最側は腹を抱えてガチ笑いした。
 いやいやいやいや、おまえは一般常識を持ち合わせていないの?!

「大丈夫ですよー。心配いりませーん!」
「いや、ダメだろ」

 最側は首を傾げてしまった。しかし、「あっ、そっか!」と納得したみたいだ。

 なに?!

「先輩はピュアなんですね!」

 辿り着いた答えがそれかい。最側……。まぁ、でも、これをネタに俺を脅す事だって出来るのに、それをしないんだから。考え過ぎなのだろう。

「まぁ、おまえがいいなら、もういいよ」
「全然OKですよぉ! だって先輩ですしぃー」
 ため息混じりに放たれるその言葉に俺は安心する。

 でも、捉える側によっては色々と誤解されちゃう言葉。この子、本当に大丈夫かよ。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 ピッピッピッピ

 裏口のドアに設置された番号式の鍵的な何かの説明を受けている。何故〝何か〟なのかは最側がそう言ったからだ。

「わかりましたかぁ?」
「大体わかった。もう一回お願いしていい?」

 ピッピッピッピ

「番号は◯◯◯◯ですー。オーケイ?」
「うん。オーケイ!」
「ちゃんとメモ取って下さいよーー」

 あっ、そっか。メモメモ。

「はい♪ たいへんよくできましたぁ♪」

 おい、最側。先輩ヅラするなよ。とも思ったが、ここではこいつが先輩だ。仕方ない。

 ガチャン。

 なるほど。ここに出るのか。
 幅は1メートルくらい。薄暗くて少し不気味な通路だ。換気扇かエアコンかわらかないファンの音が所狭しと鳴り響いている。


「入る時はここのチャイムを鳴らして下さーい!」
「わかった!」
「でもぉ、今ってほら、アレじゃないですかぁ。反応なかったら普通に入り口から入っちゃって下さい!」
「あー、アレね! 了解!」
「はい♪ たいへんよくできましたぁ♪」

 ちょっとイラつくな。でも、意地悪をしてるような雰囲気じゃないし、いいか。

 〝アレ〟の意味は恐らく人手不足って事だろう。


「ほら、先輩こっちですー」
 狭くて薄暗い通路をタタタタタタッと走って行く最側。まるで子供のような後ろ姿。
 
 通路の先は商店街のメイン通り。明るく人通りもある。

「せーんぱーい!」
 クルッと振り向き俺を呼ぶ。暗闇の先の明るい場所に天使が。いや、最側でした。

 なぜか急かされているようなので、少し早歩きをして通路を出た。


 ふぅ。日常に戻ってきた。現実に帰ってきた。
 働いても無いのに、謎のバイト上がりの気分を味わう。

「こういうの良いですねッ!」
「あぁ、そうだな」
「じゃあ、一杯やりに行きますかぁ! バイト仲間としてッ!」

 こいつは何を言い出してるんだ?!

「行きましょーよーー! こういうの憧れてたんですぅ!」

 俺の手を強引に引っ張ってくる。
 当然、俺はピクリとも動かない。

「奢りますからぁ! 一杯だけですぅ!」
「いやいや、もう22時じゅうじになるし、店には入れないだろ。俺ら制服だし」
「それなら大丈夫ですっ! 良い場所知ってるんでー!!」

 目をキラキラさせてお願いしてくる。俺を引っ張る手は気付けば両手になっていた。

 そもそも時間云々ではない。〝一杯〟する事など高校生には不可能だ。

 悪巧みをしてるようには見えない。仮にもバイト仲間。憧れとか言い出しちゃってるんだから、無下には出来ない。

 でも、何かがおかしい。最側は俺に何を求めてるのだろう?

 ──考えてもわからなかった。
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